第7話 江戸っ子ゴーレム参上!
「あーあー聞こえますか、どーぞー」
「アーアー聞こえますよ、ドーゾー」
フロラからもらった通信用の手鏡(以下勝手にスマミと命名)で通信を試みる。スマミにはフロラがニコニコした笑顔で鮮明に映っている。
「無事に目的地に到着できたんですね。正直、ダメモト作戦だったんですけど、やりましたね!」
「ダメモトって言わないでください。理由は今更聞きたくもないですが。とりあえず、ここに家でも建てようかと思うんですが、何かないですかね。何とかカプセルみたく一瞬で家ができます的なアイテム」
「あるわけないでしょ。マンガじゃないんですから」
いや、似たようなもんだろ。しかし、中学の技術・家庭科が2だったオレにDIYでマイホーム建設はさすがにハードル高すぎだろ。こりゃ、当分テント生活か?
「ふふ~ん、今どうしようって思ってますね。そんなタナトスさんに頼れる相棒を紹介しましょう!」
「相棒?」
「紹介します、大工のデンキチさんです!」
「ワイデンキチ。ワレナメタコトイットルトアタマカチワルゾ」
「いや、何も言ってないですけど。このヤバそうなロボットが手伝ってくれるんですか?」
「ロボット? デンキチさんは私たちもお世話になっている建築ゴーレムの棟梁です。この間、天界の神殿改修の仕事が終わってヒマしてたので、リクルートしました」
「よく分からないけど、プロなんですね。デンキチさん、1つよろしくお願いします」
「ワレナメタコトイットルトアタマカチワルゾ」
「……フロラ様、会話が成立しませんが?」
「あ、デンキチさんは江戸っ子気質で少し口は悪いですが、根は良い人ですし、腕は確かです。安心してください!」
今のところ、安心できる要素は皆無なんですが。つーか、人じゃないし。まぁ、異世界なんて何でもありだ。とりあえず、デンキチさんに頭をかち割られないよう、工事用のヘルメットをフロラに注文しておいた。
それから程なく、フロラの転移魔法で工事用ヘルメットをかぶったデンキチさんがオレ用の工事用ヘルメットを左手に抱えてやってきた。
デンキチさんはデカかった。3mはあるんじゃないだろうか。見た目はまんま、ドラ〇エのパペットマンである。右手に青光りする両刃ノコギリを持ち、背中に背負った大きな籠には剣山のように様々な大工道具が突き刺さっている。デンキチさんは真っ赤に光る眼を点滅させながら喋った。
「ワレ、ドコニイエタテル」
「えっと、ご面倒でなければ、そこの一番でかい木の上にツリーハウスなんか作れませんかね。ツリーハウスに住むのが小さい頃の憧れで……」
そう言った途端、デンキチさんの目が輝きを増し、背中からは白煙がプシューと噴き出した。ヤバイヤバイ!
「舐めたこと言ってすみませんでした! 頭かち割るのはやめてください!!」
身の危険を感じたオレは謝りながら、工事用ヘルメットを被って身をかがめた。デンキチさんの四角い口がコホーっと開く。
「アサメシマエヨ」
言うが早いかシャキーンシャキーンと機械音を出しながら、デンキチさんは倍速再生のような素早い動きで早速作業に取り掛かりだした。ふー、ビビらせやがってデンキチさん。ゴーレムのくせにツンデレだぜ。