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【最終局面突入!】レベル5デスの使いどころがありません  作者: 角乃とうふ


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第71話 ロシアンルーレット

【初見の読者様へ】

※本エピソードはネタバレ回となっております。ご注意下さい。


前回、ついに魔王に向けて放ったレベル5デス。そして、タナトスさんが気が付くと――

「……何処だ、ここ?」


 ついさっきまで魔王と対峙していたはずだが……。気が付けば、オレは目に映る全てが白一色の空間に立っていた。床も天井も境目が曖昧で、壁すら存在しない無機質な純白の世界。平衡感覚が狂ったのか、軽いめまいを覚える。


「タナトスさん。お疲れ様でした」

「フロラ様?」


 聞き慣れた鈴の鳴るような声に振り返る。そこには、ふわりとしたブロンドを揺らした女神フロラが、微笑みを浮かべて立っていた。


「タナトスさん。あなたのこの世界での役目は終わりました」

「ありがとうございます、フロラ様! 全部、フロラ様のおかげです!」

「いや、私も関係無いとは言いませんけど、全部が全部、私の力という訳では――」

「何言ってるんですか! フロラ様がいたから、オレ……」


 鼻の奥がツンとする。感極まって視界が(にじ)んだ。ゴッドエラーという理不尽から始まったこの異世界生活も、彼女の献身的なサポートがあればこそ、ここまでサバイブ出来たのだ。


「お兄さーん。お疲れー」

「あー! いつぞやの絵描きのお姉さん! 確か幸運の女神の――」

「ステラよ。もう少し色々クエストこなしてから魔王戦だと思ってたから、まさかこんな形でお会いすることになるとはね」


 ひらひらと手を振って現れたのは、エーデル・ヴァレイで謎の占いをしてくれた幸運の女神。前と同じスナ〇キン風の衣装を身に纏い、艶やかな栗色の髪をラフにまとめて、悪戯っぽく瞳を輝かせている。


「ハハハ。チャンスは前髪を掴めって言いますからね。やってやりましたよ!」


 オレはぐっと親指を立て、ドヤ顔で胸を張った。


「ところでフロラ様。ここ、どこですか? 再転生の控えの間みたいな場所ですか?」

「そんなところです」

「転移晶で自分の城に戻るつもりだったんですけど、ミッションコンプリートしたから、ここに召喚されたんですか?」

「ま、お兄さん。とりあえず、魔王戦の記録映像見てみる?」


 ステラが気楽な調子で会話に割って入った。


「えっ! そんなVあるんすか! 見ます見ます!」


 オレがノリ良く手を挙げると、ステラは何もない空間に絵筆を走らせた。筆先から溢れた光の粒子が、目の前に巨大なスクリーンを作り出す。

 そこに映し出されたのは、ヴォルデムンドの砦内を天井から広角カメラで捉えたような映像。手前には揉み手で媚びを売るオレ。長机を挟んだ奥には漆黒の肌をした巨漢・魔王ガレス。立ち上がったガレスがカンストの壁を超え、凄まじいオーラを放ってハッスルしている。ここからだな、見どころは。


『――次はみんな仲良くやれたら良いですね。さよーなら!!』


 最後のキメ台詞を吐いたオレの勇姿が映る。その直後、ガレスの胸元で何かがキラッと光った。

 ――刹那、オレの姿は砂塵(さじん)となって崩れ落ち、空気に溶けるように消えていく。続いて、主を失った鹿マスクと転移晶が力なく地面に落ちた。と、その二つも一瞬で消滅する。

 えーっと、つまり……どういうことだ?


「あのー、これ、何が起こったんですか?」

「端的に言うと、タナトスさんが『レベル5デス』で即死しました」

「ウッソだー!」


 おどけて返してみたものの、フロラは笑ってくれなかった。代わりに、その顔には深い同情の色が浮かんでいる。マ、マジなの……。 でも、何で?

 絶句するオレに、いつの間にかザーマス眼鏡を掛けたステラが、指し棒片手に解説を始めた。


「さっき、魔王の胸元が一瞬ピカッと光ったの、見たでしょ?」

「はい……」

「あれで、レベル5デスが跳ね返されたのね」

「えー!! 魔王には効かないの!?」

「いや、そんなことはないんだけどね。私も驚いたんだけど、魔王――私の神器のペンダントを持ってたのよ」

「何すか、それ?」

「イージスの(しずく)。あらゆる魔法を弾き返すリフレクションの効果があるの」

「なっ!? 聞いてないよー!!」


 頭を抱えてその場にしゃがみ込むオレ。なんで、そんなチート神器を魔王が持っているんだ。すると、ステラは遠くを見るような目で語り出した。


「昔、とっても敬虔(けいけん)な私の信者の娘がいてね。小さな私の神殿を毎日丁寧にお掃除して、熱心に祈りを捧げてくれていた。若いのに感心だと思って、お守り代わりにペンダントをあげたことがあったのね。結局、その娘、魔族と道ならぬ恋に落ちて駆け落ちしちゃったんだけど、まさか、あのペンダントが魔王の手に渡ってたなんてねぇ。すごい巡り合わせだと思わない? エモいわ~」


 何、良いもん見た的にテンション上げてんだ、この女神? こっちは、取り返しのつかない大惨事なんだよ。オレのジト目に気付いたステラが誤魔化すように言葉を継いだ。


「で、でも、レベル5デスの効く確率なんて5分の1じゃん? まあ、大概は大丈夫でしょ、と思ってたら――お兄さん、ちょうどレベル20だもん! ウケるー!!」


 ステラは手を叩いて豪快に笑い出した。全身の力が抜けたオレは、崩れ落ちるように四つん這いになる。目の前の白い床が、涙でかすんでいく。

 あぁ、好きなだけお笑い下さいよ。オイラはとんだピエロでさぁ。お楽しみいただけたなら、よござんしたね。こちとら、悔しさと情けなさで泣けてくらぁ。ちっくしょう、こんな下手へた打つなら、オレもみんなと一緒にスイーツバイキングの手伝いでもしとけば良かった。

 そんな無様な敗残者を心配するように、フロラが膝を付いてオレの顔を覗き込んだ。長いまつ毛が、申し訳なさそうに微かに震えている。


「……タナトスさん。レベル5デスを付与したのは私ですし、何と言ったらいいか――」

「いや、最終的に勝負に出たのはオレの判断ですし、自己責任です……」


 オレは力なく首を振った。

 フロラは、ぱっちりとした黄金色の瞳を潤ませると、オレを無言でそっと抱きしめてくれた。彼女の柔らかな温もりに包まれると、こらえきれない涙が頬を伝って流れ落ちた。このまま感情に流されるまま、彼女の胸で気が済むまで泣き叫びたい。だけど、そんな感傷に浸る資格など、自分には無いことも分かっていた。切り替えろ、オレ。そして、現実を直視するんだ。心配なのは、強大な力を与えてしまったガレスの今後の動向。オレはそっとフロラの腕を解くと、涙目をこすって彼女に問い掛けた。


「……この後の展開、どうなりますかね?」

「タナトスさんは志半ばで逝ってしまいましたが、魔王は現在の国境線で、各国との和平交渉に応じるつもりみたいです」

「え? せっかく『グ~レイトォー!』な力を手に入れたのに、世界征服しないんですか?」

「部下にはそう進言されていましたが、魔王(いわ)く、『ウォールダム王国を攻めろと言ったのは、引っ掛け問題だ。最後のセリフ、「みんな仲良く」を守れるかどうかを、鹿男様は見ておられるのだ』と。どうも、カンストの壁を超えさせてくれた鹿男を、魔族の守護神だと信じているみたいです。近く、魔王城内に鹿男の神殿を作るみたいですよ」

「……オレ、魔族の御祭神(ごさいじん)になっちゃうんですか? 『生まれ変わったら、仲良くしようね』的な意味で言っただけなんですが……。まぁ、平和主義に目覚めてくれたなら何よりです」


 オレは、心底ほっと胸を撫で下ろした。流石に、魔王が無双するヒャッハーな世界を置き土産にする転生者なんて、あんまりだからね。

 するとフロラが、重い空気を振り払うように明るい声を上げた。


「そんなわけで! 結果オーライということで、タナトスさん、人間に再転生決定です!」

「えっ!? いいんですか?」

「ふふん。だいぶ、オマケしてあげました」


 得意気にピースサインを出す光の女神。ありがとう、フロラ。きっと色々手を回してくれたんだろうな。なんか、すっきりしない終わり方ではあるけれど、来世では、まっとうな勇者にでも転生して頑張ります。


「あ、そういやオレが再転生したら、オリタナさんはどうなるんですか?」

「そうだ! その問題が残ってました。その件については、タナトスさん同士で話し合ってください」

「へ?」


 オレが間抜けな声を出すと、白い空間の奥から、どこかで聞き覚えのある声がした。


「お疲れ、オレ」

「お、お前は……!」


ついに姿を現したオリタナさん。はたして、その正体は?

次回更新は、3月24日(火)の予定です。


※前書きを無視して読んでくれた、初見の読者のために説明しよう。オリタナとはオリジナル・タナトス

の略称。主人公が転生して中身が入れ替わる前の、元のタナトスさんのことなのだ。


◎タイトルに煽り文句を入れたように、いよいよ完結間近です。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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