表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【最終局面突入!】レベル5デスの使いどころがありません  作者: 角乃とうふ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/76

第70話 レベル5デスの使いどころ

「それでー! 鹿男ー! 我らとー! 和睦を希望するとなー!」

「はいー! 私ー! ウォールダム王国のユリウス王子からはー! 兄とも慕ってもらっている中でしてー! ……あの、魔王様! 話しにくいんで、もっと近く寄って良いですかー!」

「奇遇だなー! 我もそう思っていたところだー!」


 あれから、小一時間ほどで砦の修復は終わった。その後、話し合いのため、オレ達は赤じゅうたんが敷かれた応接間へと場所を移した。部屋の中央には巨大な長机が据えられており、オレ達はその短辺に向かい合うように着座したのだが、いかんせん、長机が長すぎる。20mはあるんじゃないか。距離が遠すぎて、大声出さないと伝わらないから、会話がしんどい。早々に諦めて、2人は長辺を挟む形に席替えした。一緒に席を移した白いティーカップの向こう側には、鬼瓦のような形相の魔王ガレス。考えてみれば、こうして相対するのは、転生直後以来だ。優に2メートルは超えるガチマッチョなボディを黒ずくめの衣装で包み込み、口元から鋭い牙を覗かせる姿は、まさにラスボス。その迫力に内心ビクビクしながら、オレは話を再開した。


「で、ユリウス王子から和平交渉役を頼まれたわけです。しかし……」

「しかし?」


 机に両肘をつき腕を組んだガレスは、鋭い眼光をこちらに向ける。オレは紅茶を一口飲むと、意を決して大袈裟に両手を広げ、声を張り上げた。


「本日、魔王様にお目にかかり確信しました! このサンバルトンを治めるにふさわしい御方は魔王様です!! この鹿男、微力ながらご助力します!」

「なんと! 貴様、人族を裏切るというのか⁉」

「フフフ。もともと獣人族は独立独歩。商売上、人族とも付き合いをしていただけです。ご存じかと思いますが、妻がモーリスの孫娘であることから、エルフ族への抑えは()きます。ドワーフも伝手(つて)があるので、金でどうにかなりましょう。春を待って、ウォールダム王国に攻め込むのです! その時は、うちのイエティを傭兵にお使いください」

「ウェイウェイ! 我は平和的解決を模索するつもりだったのだが――」

「何をぬるいことを! 侵略すること火の如くです! イケメンは奴隷に! カワイイ娘には花束を! チビっ子とお年寄りは大切に!!」

「……お前イケメンに何か恨みでもあるのか?」


 おっと、いけない。つい前世の心の闇がにじみ出てしまった。すると、ドキュエルがガレスの側にサッと近づき、その耳元に手を当てて何事か(ささや)く。


『どうも、話がこちらに都合良すぎる気がします』

『確かにな。カワイイ娘に花束を贈るのは、我としてもまんざらでもないが……』


 どうも、イマイチ信用されてないようだな。しかし、これは想定の範囲内。オレは赤いリボンで包まれた白い紙箱を取り出し、うやうやしくガレスへと差し出した。


「魔王様。二心ない証として贈り物を用意しました。どうぞ、お納め下さい」

「ほほう。なかなか気が利くでないか。どれどれ」


 ガレスがニヤリと笑いながらリボンを解くと、中から香ばしいナッツをふんだんにまぶした、濃厚な香りのチョコケーキが現れた。


「Oh! これは旨そうだ」

「魔王様。恐れながら毒見をしてからお召し上がりを――」

「ドキュエルよ。我を誰だと思っておる。この世のあらゆる毒物は我には効かぬ。賞味期限が10日過ぎたプリンを食べても、我の消化器官はビクともせんわ!」

「ははっ! これはとんだ失礼を」


 心配するドキュエルを制して、ガレスはワンホールケーキを鷲掴みにして、躊躇(ちゅうちょ)なくかぶりつく。ケーキの旨味を口内に感じながら、恍惚とした表情を浮かべる魔王。だが次の瞬間、ガレスは両目をカッと見開くと、急に動きを止めた。多幸感に満ち溢れた表情が一変、驚愕の形相に変わるや否や、ガレスは椅子を跳ね飛ばすように勢いよく立ち上がった。


「な、なんだ、これは?」

「魔王様!?」

「フッフッフ……」

「鹿男! さては貴様(はか)ったなー!!」

「ハッハッハー! もう遅い!」


 右手のワンドを振りかざして、激高するドキュエルと(ひたい)に手を当てて高笑いするオレ。ガレスは(うつむ)いてブルブルと肩を震わせた後、突如として両手を天に突き上げた。


「グ~レイトォォォー!!!!」


 咆哮と共に、魔王の巨躯(きょく)から赤銅色の凄まじいオーラが噴き出した。空気がビリビリと震え、テーブルのティーカップがカチャカチャとやかましく音を立てる。オレは懐からゴッドグラスを取り出してガレスを見やる。表示されたガレスのレベル99が、今まさにカンストの壁を越えてレベル100に切り替わろうとしていた。ガレスは信じられないといった表情でオレを見る。


「こ、これは! もしや、ケーキのナッツの中に、レベルアップの種が入っていたのか!?」

「サプライズプレゼントです、魔王様。これで鬼に金棒ですね!」

「こんな貴重なものを! 鹿男よ。疑って悪かった。お前こそ心の友だ!!」

「魔王様。短い間でしたが楽しかったです。思ったよりいい人っぽいんで、若干良心の呵責(かしゃく)はありますが、これも世界平和のため。次はみんな仲良くやれたら良いですね。さよーなら!!」


 オレはヒット&アウェイを決めるため転移晶を握りしめると、歓喜に震えるガレスに向けて、万感の思いを込め、無詠唱でレベル5デスを放った――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ