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【最終局面突入!】レベル5デスの使いどころがありません  作者: 角乃とうふ


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第67話 お母さん、ありがとう

 魔王城の一角。四天王を休職してアイドル活動に励むセーレの推し活グッズで埋め尽くされた自室で、魔王ガレスは母の形見のペンダントを見つめていた。母は優しい人だった。150年前、三英雄に率いられた、人間、ドワーフ、エルフの連合軍が魔界に侵攻。迎え撃った父は当時の勇者に討たれ、その兄で魔王だった叔父も、悪鬼のようなハイエルフが放った炸裂魔法の前に無惨に敗れ去った。風前の灯となった魔族の敗残兵が立てこもる魔王城。次は自分の番だとその片隅で震えるガレスを、母はそっと抱きしめて、穏やかに語りかけた。


「大丈夫。ガレスは私が守ってあげる」

「でも、父上も叔父上も、みんなやられちゃったじゃないか! 魔族は、皆殺しにされるんだ!」


 ガレスはベッドに突っ伏して、さめざめと泣いた。あの日も今日のように、雪がしんしんと降り積もる寒い夜だった。一瞬、困ったようにうつむいた母は、気を取り直したように顔を上げると、努めて明るくガレスに語り掛けた。


「そうだわ、ガレス! いいものを上げる。昔、私が素敵なお姉さんからいただいた、幸運のペンダントよ。きっと貴方を守ってくれる。これを身に付けていれば、あなたは大丈夫!」

「――本当?」

「あら、私がウソついたことあった?」


 母はおどけたように笑った。ペンダントの加護があったのか、あるいは単なる偶然か――その後、記録的な猛吹雪が続いたため、人間達の連合軍は撤退。魔族はすんでのところで、窮地を脱した。

 終戦後、魔王として即位したガレスの後見として摂政となった母は、魔界の復興に心血を注いだ。今、まがりなりにも魔族が生きながらえているのは母のおかげだ。実際、魔界では母は歴代魔王を凌ぐ崇拝の対象となっている。彼女が魔族ではなく、他ならぬ『人』であったにもかかわらずだ。しかし、その母も過労がたたったのか、魔界の復興を見届けると、眠るようにこの世を去った。自分がパワハラ気質なのは分かっている。決して良き王とは言えないだろう。それでも――


「母さんが命を削って守り切ったこの魔界を、我の代で絶えさせるわけにはいかない。母さん、見守っていてください……」


 ペンダントを握りしめて、ガレスは交渉の日へ決意を固めるのだった。



「あーしばれるー! やっぱ着込んでても、エムエルがいないと寒いな……」


 分厚い外套(がいとう)に身を包み、旅支度を整えたオレは、デンキチさんとサナエちゃんを伴って、寒風吹きすさぶピヨカン小学校の園庭に立っていた。


「ホントニヒトリデイクノカ?」

「あー、女子達はスイーツバイキングの出店計画に夢中みたいなんで。ま、群れるよりも1人の方が敵意が無いアピールできそうですし。そうじゃなくても、オレの手紙で魔王油断しまくりみたいですけどね。いざとなったら、フロラ様からもらった緊急脱出用の転移晶もあるし、歓迎パーティ楽しんで、隙あらば、サクッと魔王倒して、この世界救いますよ、オレは!」


 心配するデンキチさんに、オレは虚勢を張る。本音を言えば、メグミーヌは用心棒で連れて行きたいところだが、あいつが一番、異世界スイパラ計画に燃えているから仕方ない。確か、バリキャリが前世からの夢だって言ってたからな。ニートが夢のオレには理解に苦しむ感覚だが、人様の夢を邪魔するほど野暮ではない。

 魔王からは、目論見通り和平交渉に応じるとの返事があった。場所は魔王領最南端の街ヴォルデムンド。問題は、このクソ寒い中、どうやってそこまで行くかだったが、事前にデンキチさんに相談すると、目を紫色に明滅させて、右手でOKサインを出した。なんでも、先日のフロラ夏フェスで作った超ド級花火のロケット技術を転用して、現地までひとっ飛びさせてくれるらしい。

 そんなわけで、迎えた出発の朝。目の前には子供が戯れで描いたような、単純なデザインで作られた銀色のロケットが発射台に乗せられている。しかし――


「あの花火、結局、失敗でしたよね。今度は、大丈夫なんですか?」

「アレデハダメダトイウコトガワカッタカラ、アルイミセイコウダ」


 心配するオレに、腕組みして自信満々に頷き返すデンキチさん。そういうエジソン的屁理屈はいいんだけど、魔王に会う前に爆死なんてバッドエンド、オレが納得しても読者が許さないと思うぞ。まぁ、ヤバくなったら、転移晶使ったらいいか。


「コレカブッテイケ」


 そう言って手渡されたのは工事用ヘルメット。デンキチさんを初めて紹介された時、フロラに頼んでデンキチさんに頭カチ割られないよう、転送してもらった思い出の一品だ。


「懐かしいですね、デンキチさん……」

「ブジニカエッテコイ」


 デンキチさんがポツリと口にした。オレはコクリと頷くと、ロケットの中に乗り込む。オレがシートに座ってシートベルトを締めるのを確認すると、松明(たいまつ)を片手にしたサナエちゃんが、何のためらいもなく、ロケットからにょろりと伸びた導火線に火を点けた。シュルルルルー! その瞬間、勢いよく白い導火線に火が走る。


「ちょっ! カウントダウンとか無いの!? まだ、心の準備が――」


 キザな捨て台詞の一つも吐こうかと思っていたのに、そんなヒマなど与えてくれず、すぐにロケット本体に火が移ると、激しい振動が始まった。


「タナちゃん、後のことは――」


 サナエちゃんが何かを口にしたが、聞こえたのはそこまでだった。その直後、ロケットは爆音に包まれるや、はるか青空に向けて猛スピードで飛び出していった。

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