第64話 甘いものは別腹ですが、カロリーはしっかり合算されます
前回、エミリールに自慢の頭脳をファミコン扱いされたタノトスさん。翌日、遅起きしてみれば――。
「何なの⁉ その夢のような空間は? よだれが止まらないわ!!」
「分かるわ~。スイーツ食べ放題は全女子の夢よね――っていうか、この世界でもその手の商売できるじゃない!! ほら、身内に料理人もいるし!」
「ひょっとして、私を巻き込もうとしてる?」
何だ、このデジャブ。エミリールのせいで夜更かししたオレが、昼前にあくびをしながらリビングに行くと、何やら女子どもがスイーツバイキングの話題で盛り上がっていた。どうやら、今朝メグミーヌを捕まえたエミリールが前世話をせがみ、エムエルもついでに加わっているようだ。
「あなたの作るスイーツでみんなを幸せにするのよ!」
「ステキー! 私もエムエルさんの焼くケーキ大好きです!」
「あなた達、私をそんなに買ってくれれたのね……」
承認欲求を満たされたエムエルもまんざらでもない様子で、微笑む。話が長くなりそうだな、こりゃ。
「なぁ、盛り上がっているところ悪いが、昨日の魔王の話の続きを……」
「うるさいわね! 今、大事な経営戦略会議の真っ最中よ!」
「そうよ、社長! スイーツでこの世界のみんなをハッピーにするの! 今は魔王なんかに構っている場合じゃないわ!」
メグミーヌとエミリールに一刀両断にされる哀れなオレ。エミリール、お前昨日、オレと一緒に魔王のとこに行くって息巻いて無かったっけ? まったく、珍しくやる気になった主人公の意欲を削ぐんじゃないよ。萎えたオレは、肩をすくめてソファーに沈み込む。そこに、サナエちゃんがお茶を持ってきてくれた。
「タナちゃん。熱いお茶でも飲むだべさ」
「ありがとうサナエちゃん」
「ま、話はアタスとデンキチさんが代わりに聞くべさ」
「ワレ、ナメタコトイットルト、アタマカチワルゾ」
デンキチさんもやってきて、オレの隣に腰かけた。話を聞いてくれると思うと、いつもの脅迫じみたセリフも心に沁みるね。結局、オレの相手をしてくれるのがゴーレム2人とは、そりゃAIと結婚する人もいる時代になるわけだ。1人納得したオレは、2人に対魔王作戦の概要を伝えた。2人とも腕を組んで、肯定とも否定ともつかない態度を取る。
「どうかな? サナエちゃん」
「話は分かるんだども、なんか落とし穴がありそうだべな」
「そうかなぁ? イケると思うんだけど」
「一応、フロラちゃんにも相談してみるといいべよ」
「あっ、確かに。何かお助けアイテム的なものくれるかもしれないしね」
「……」
デンキチさんは黙して語らなかった。元々、口数が多い方じゃないけど、なんとなく心配してくれてるような気がする。ともあれ、オレの心のアイドル女神フロラなら、スイーツに夢中のけしからん女子共とは違って、ちゃんと話を聞いてくれるはずだ。よし、今からフロラ神社に行ってみるか。
「そうだ! オープニングイベントでセーレちゃんとのコラボカフェはどうかしら? エムエル連絡取れる?」
「任せて。多分、あの娘食い気味でOKするんじゃないかしら」
「最&高! メグミーヌさん大天才!!」
オレのギザギザハートを知らずに、女子共の異世界スイパラ計画はさらなる盛り上がりを見せている。『な、仲間に入れて欲しくなんかないぞ! こっちは魔王討伐しちゃうかもだぞ! 異世界転生の王道なんだぞ!』などと、内心で悪態をついてみたが、なんだか逆に惨めになってしまったのは、何故でしょう。
ちょっと前まで、ハーレムっぽい展開だったのに、スイーツに敗れる主人公……。
次回更新は、2月5日(木)の予定です。




