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レベル5デスの使いどころがありません  作者: 角乃とうふ


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第63話 昔のゲームの容量はスマホの写真1枚分も無いらしい

「結局、その『すまーとふぉん』って何なのよ⁉」

「まぁ、一言で言えば呪いのアイテムだな。オレの故郷ではヤツの支配から逃れられる者はいない。みんな、アイツの奴隷になっちまうんだよ。そういう脳内麻薬が出るように賢い人が設計してるんだな」

「なんて恐ろしいの! みんな、その小さな黒板を死んだ魚のような目で見つめて、もれなくストレートネックになっているなんて! 早く、助けてあげなくちゃ!!」

「うーん。そのディスペルは、それこそ神様でもなけりゃムズイんじゃないかな。少なくとも、魔王討伐より100倍は難易度が高いと思うよ。まぁ、将来もっと愉快なアイテムが出てきたら別だけど。なんにせよ、オレのお国は、ここより色んな事がちぃっとばっかり複雑なんだよ」


 深夜のタナトス城の居間は、暖炉の火がぱちぱちと静かに()ぜ、(だいだい)色の光が薄暗い室内に揺らめく影を落としていた。早寝遅起きが身上のオレはあくびが止まらない。対するエミリールは尖った耳を赤く染めて興奮しながら、オレの前世を根掘り葉り掘り質問攻めにしていた。なんでも、転生者マニアらしい。


「ふう。話が面白過ぎて、時間がいくらあっても足りないわね……」

「もう、いいか? オレ、眠くなってきたんだけど」

「諦めないで! 諦めたら、そこで試合終了よ!」


 名言を軽々しく使うんじゃないよ。しかし、以前からエルフのクセに、妙な語彙力があるとは思っていたが、これも転生者マニアのなせる(わざ)だろうか。エムエルとメグミーヌも最初は面白がって、エミリールのリアクションを観察していたが、長話に飽きると、連れ立って寝床へと帰っていった。したがって、図らずも2人きりである。


「大体、なんでそんなにオレの前世、つまりエミリールにとっての異世界に興味があるんだよ」

「女はロマンよ! 誰だって、グランドラインを目指すもんでしょ!」


 それは人それぞれでしょうよ。転生者ヲタエルフのたわ言を聞き流しながら、そういや、この世界に来て海を見ていないことに気がついた。見てくれだけは素敵な仲間達の水着姿を眺めながら、ビーチパラソルの下でピニャ・コラーダなんてのもオツだね。などとぼんやり夢想していると、エミリールが一人語りを始めた。


「ほら、エルフのパブリックイメージって閉鎖的でしょ。ま、実際そうなんだけど。エルフの村にいると変化が無くてね。しかも、時間だけは無駄にある種族だから、退屈が無間地獄……。そんなある日、おじいちゃんが、とある転生者の本を見せてくれたの。生き写しのような綺麗な絵が何枚も載っていた。どんなお城よりも高い四角な建造物の数々、夜に輝く巨大なオレンジ色の鉄塔、美しいプリンのような山、心が躍ったわ」


 ふーん。るるぶでも見たのかね。オレなんか身一つで転生したけど、なんか持ち込んでた奴もいたんだな。


「いつか、退屈な村を出て、こんな素敵な場所を訪れたい! ずっとそう夢見てた……」

「まぁ、旅行は行くまでは面倒くさいけど、行ったら行ったで楽しいもんだからな」

「そして、私は社長と出会ったの! それから、私の生活は一変した。冒険に次ぐ冒険! 毎日、色んな事が起きて、楽しくて……」


 そう言うと、エミリールはこれまでの思い出を振り返るように目を細めた。そうかぁ? たまには、イベントらしきものもあったけど、大体、くだらない会話してるだけだと思うんだけどな。まぁ、感傷に(ひた)っているようだから、そっとしておこう。


「そして! ついに、社長は魔王と対峙する決意を固めたのね。エムエルさんとメグミーヌさんは反対するかもしれないけど、私は賛成よ。男は度胸よ! もちろん、私も一緒に行くわ!」

「いや、遠慮しときます」

「なんでよ⁉」


 アゴが外れるばかりに大口を開けて固まるエミリール。『一緒だと、お前の悪運に引っ張られて死亡フラグが立つからだよ』とは、さすがにアイスハートのオレでも口には出せない。なので、


「大切なエミリール君を危険な目に会わせるわけにはいかない。これは、異世界転生したオレの仕事さ」

「社長……」


 エミリールは感極まって、オレに抱きついた。そのほっそりとした体から伝わる温もりを感じながら、オレは、彼女のさらさらとした金髪の頭を撫でてやる。やれやれ。いつもながら、心にも無いことを言うのは胸が痛いね。


「なーに、ヤバくなったらトンズラするさ。状況によっては、普通に魔王とシェイクハンドして円満解決ってパターンになるかもな」

「社長の脳内8ビットのコンピュータがフル稼働しているのが分かるわ! 素敵……」


 エミリールがうっとりとした顔でオレを見つめる。誉め言葉のつもりらしいが、普通にディスってるぞ、お前。


「また明日、エムエルとメグミーヌにも相談してみるよ。だから、今日はもう寝よう」

「それとこれとは話が別よ! 社長の故郷の話がまだまだ聞き足りないのよ!」

「面倒くせえな。そうだ、明日、メグミーヌに聞けよ。オレとはまた違う話が聞けるかもよ」

「えっ⁉」

「ん? 何かおかしなこと言ったか?」

「メグミーヌさんも転生者だったの⁉」


 あー、それも言ってなかったかね。

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