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レベル5デスの使いどころがありません  作者: 角乃とうふ


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第62話 イントロが短い歌が多いこんな世の中で

 手紙は見るからに値の張りそうな乳白色の封筒に納められていた。閉じ口には、深紅の封蝋が落とされている。その中心には仲良く並ぶ2つの鐘。やっぱクリスマスプレゼントじゃないのか? そんなオレの淡い期待を、デリカシーの無いメグミーヌが容赦なく粉砕する。


「それ、ウォールダム王家の紋章よ」

「え? メリクリ的なマークじゃなくて?」

「ほら、リリア王女のミドルネームにもベルが入ってたでしょ」

「そうだっけ? オレ、人の名前覚えるの苦手なんだよね」


 頭を掻きながら、封筒を開けると、何やら汚い字で書き殴られた便箋が出て来た。現地語はあんまり読めないけど、字が汚いことだけは直観で分かるぞ。


「オレ、字読めないから代わりに読んで」

「いい加減、覚えなさいよ! あんた、一応ディア&ディアーの代表でしょ!」


 いや、同じ転生者なのに、現地語読めるお前が凄いだけだと思うよ。ともかく、メグミーヌがぶつくさ言いながらも、読み上げてくれた手紙はこんな内容だった。


 アニキへ


 オッス! 僕だよ、ユリウスだよ。聞いてくれよ、アニキ! 実はあれから、ヴィゼと牢屋越しに何度か面談してね。魔王軍の内情をバッチリ聞き出したよ。ヴィゼは魔王に騙されて操られてただけなんだ。ある意味可哀想な被害者だよ。彼女の身の上話を聞いて泣かないなんて人間じゃないね。オレはますます魔王憎しになったよ! で、情報によると、ヴィゼが欠けて四天王は残すところあと2人。しかも、王家の諜報部員の調べによれば、内1人は魔界5大都市ツアーに向けた音楽活動で多忙のため、休職中だそうだ。新たな四天王の人選も魔王の面食いが災いし、難航を極めているとのこと。今こそ好機! 魔王討つべし! アニキもそう思うだろ? ところがどっこい、父上にその旨進言したら、『おまい、またあのサキュバスに騙されてるんだよ。大概にしろよ、このごく潰し!』って(ののし)られたよ。普通、そういうことカワイイ息子に言うかね? 実は僕、橋の下で拾われてきたみなし子で、あの人とは血が繋がってないんじゃないかと疑ったよ。しかし、僕も当代の勇者! こんなことでは、へこたれない。ウォールダム王家がダメなら連合軍だ! それで、ドワーフ国王とエルフ族長に手紙を書いたのさ。でも、返事を見て驚いたね。大体、2人とも同じような内容だった。こんな感じ。『まず、字が汚くて読む気が失せた。仕方なく、部下に代読させて内容は分かったけど、寒いからヤダ。以上』ひどくない⁉ 色んな意味でひどくない? そんなわけでさ、頼れるのはアニキだけなんだよ。まぁ、軍が動かせない以上、一気に魔王を討伐するのは難しいだろうけどさ。相手の弱みに付け込んで、有利な条件で和平交渉は出来るんじゃないかと思うんだ。アニキ得意の口先トークで、魔王をけむに巻いちゃってよ! 勇者代理ってことで、全権委任するからさ。え、僕? 危険が危ないから、今回は全力で後方支援するよ! わ、我が身可愛さに言ってるんじゃないよ! 一応、王位継承者だからさ、立場上難しいところなのさ。あ、でも上手くいったら、手柄は山分け……


 そこまで読んだメグミーヌは、手紙を燃え盛る暖炉の中に放り込んだ。あっというまに、手紙は跡形もなく燃え尽きる。


「バカバカしい! ダーリンを巻き込むんじゃないわよ!」

「うーん……」


 腕を組んで、ため息をつくオレ。まるで鏡に映った己を見ているかのようだ。ユリウス、バカさ加減といい、セコさといい、本当にオレとよく似てんのな。まぁ、ドワーフ国王とモーリスが寒さを理由に断ったのは理解できる。今の時期に軍を動かしたら、かのナポレオンもヒトラーも勝てなかった冬将軍様にきっちり締め上げられることだろう。魔王と停戦協定でも結べれば、そりゃ良いとは思うけどね。


「どうしたの、ダーリン? あんなバカ王子、ほっとけば良いのよ」

「まぁ、そうなんだけどさ。愚弟ほどカワイイというか……。ねぇ、エムエル。魔王って話せば分かるの?」

「カワイイ娘ならお茶菓子付きでもてなしてくれると思うけど、男は問答無用で瞬殺じゃない?」

「なるほど。意外と気が合いそうだ」

「どうして、そうなるのよ⁉」


 メグミーヌが唖然とする。エムエルは苦笑しながら言葉を続けた。


「ちなみに魔王様、レベル99だから。知力以外はほぼパラメータMAXよ」

「あー、さすが、ラスボス……。あっ!」


 (いにしえ)のマンガなら、オレの頭に製造停止になった白熱電球が点灯したことだろう。イケる。勝ち筋が見えたぜ! 誰よりも己の保身と平穏を重んずるタナトス様とはいえ、確変すると分かっているパチスロ台には座らざるを得ないぞ。いつになく真面目な顔を作ったオレは、背筋を伸ばしてすっと立ち上がると、仲間達に語り掛けた。


「聞いてくれ、みんな。オレは、これまで敬愛する高〇純次ばりの適当男だった。異世界転生してこの方、読者が期待するような活躍も無いまま、ダラダラここまで来てしまった。しかし、これは壮大なクライマックスを盛り上げるための序章に過ぎなかったんだ。この世界の平和はオレが取り戻す!」


 決まった……。胸に拳を当てて、決意表明したオレは自己満に浸って目を閉じる。一瞬の静寂がその場を包んだ。フッ。こうもイケメンにキャラ変しては、彼女たちが言葉を失うのも無理ないか。ニヒルに目を閉じるオレに、メグミーヌとエムエルが心配する声を上げる。


「ダーリン? 昼に変なもんでも食べたの?」

「タナトス? どっかで頭打った?」


 おい、心配のベクトルがちょっと違うんじゃないか? 目を開ければ、2人揃って憐憫(れんびん)の眼差しをオレに向けている。そ、そんな可哀想な子を見るような目で人を見るんじゃないよ! かたやエミリールは真剣な眼差しで、オレをまっすぐに見つめていた。何気にこの世界に来てから一番付き合いが長いのは、このエルフ嬢だ。振り返れば、苦楽を共にしてきた思い出が走馬灯のように駆け巡る。やはり、メインヒロインは君だったのか。お前にだけは、オレの男気が伝わったんだな。わなわなと手を震わしているエミリールは、やがて意を決したように口を開いた。


「しゃ、社長って転生者だったの⁉」

「えっ、今更そこ⁉」


 驚きの表情を見せるエミリールと、ポカンと口を開けるオレ。あ、そういや、こいつにだけ言ってなかったかもしれないぁ。

 なんとなく、言ったつもりで伝わってないこともあるよね。

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