第5話 枕を高くして眠りたいだけなんだ
フロラから通信用の手鏡をもらった。これでいつでも連絡できるそうだ。それから、この世界の地図を示され、説明を受けた。オレが転生した世界はサンバルトンといい、1つの大きな大陸が全てという何とも単純な地形である。その中には人間やら悪魔やら人外やらが住んでいて、一応、それぞれに縄張りを作って暮らしている。北東地域は魔界、北西地域は人間界、南西にはドワーフの国があり、南東にはエルフの森がある。この神の祠はサンバルトンのほぼ中心にあり、どの勢力も不可侵地帯という暗黙のルールがあるそうだ。
さて、これからどうするか。悪者成敗なら魔界だが、魔王と戦うのは無理ゲーだと、パワハラ被害ベテランの勘が告げている。かといって、人間のところに行っても、悪魔なのでタコ殴りだろう。ドワーフも生真面目で悪魔とは性が合わないみたいだし、エルフにいたっては悪魔を生理的に受けつけないそうだ。……って行くところがねえじゃねえか。そう言うと、フロラがエルフの森は、全部がエルフの暮らしているエリアってわけではなくて、誰も住んでいない無人の森の部分もあるという。そこにトムソーヤよろしく拠点を作ってみてはどうかとのことであった。とりあえず、安心できる隠れ家は欲しい。ほかにあてもないので、その案に乗ることにした。エルフも森は、ここから徒歩で3日はかかるそうだ。テントやら寝袋やら必要なキャンプグッズを、フロラがドラ〇もんみたいに亜空間からポンポン出してくれた。フロラ曰く、アイテムの召喚には女神ポイントが必要らしい。
「出世払いで良いので、期待してますよ!」
昭和の食堂の女将さんのような声援を受けながら、オレはでかいリュックを背負って南へ向けて出発した。