幕間 〜エミリールの独り言〜
私の名はエミリール。偉大なる三英雄が1人、モーリスの孫娘にして、容姿端麗、頭脳明晰なハイエルフ。とあることから運命の悪魔、タナトスと出会って、今ここにいる。さっき、彼と一緒に女神様の下を訪ねたの。帰り際、女神様は私に祝福の魔法をかけてくれた。
「くっ! 女神の私の力を持ってしても、ラックが全然マイナス圏から回復しない! 己の力不足を感じます……」
なぜか落ち込む女神様に、彼がやさしく語り掛ける。
「フロラ様のせいじゃありません! このエルフが規格外なだけですから。おかげで、オレと2人でいればプラテンしたんだし、これでもずいぶんマシになりました。ありがとうございます!」
彼はいつだって、誰にでもやさしい。本当は私にだけやさしければいいのにと思う。実際には、私にだけ当たりが強い気もするのだけれど。
祠を出ると、彼はエムエルとメグミーヌの3人で何やら相談をしていた。そのあと、なぜだかくじ引き抜きで豪華馬車に私を乗せてくれた。
「エミリール……。あなた、良くここまで生き抜いてきたわね。大丈夫! これからは私があなたを守るから!」
「私も、さっきはキツイ言い方して悪かったわ……。ほら、冷凍みかんあげるから元気だして!」
突然手のひらを返したように、エムエルとメグミーヌが、私にやさしくしてくれる。真正サディストの2人が態度を急変させるなんて、女神様の加護のおかげかしら。でも、なんだかんだで、本当は優しい人達なんだろうと思う。ツンデレするのはやめて、もっと早く素直になれば良かったのに。
「エミリール君。とりあえず、しばらくはオレのそばをなるべく離れるなよ。死にたくないならな!」
どうしてか、私と一緒に馬車くじ引きを免除された彼が、真剣なまなざしで語りかける。自分の頬が赤く染まるのを感じる。ほとんど、プロポーズよね、これ。まぁ、一応鹿男夫人ではある私だけど、本当の妻になる日も、そこまで来てる気がする。そうよ、おとぎ話のお姫様も最初は苦労したけれど、それはハッピーエンドへのスパイスに過ぎない。私のプリンセス・ストーリーは今始まったばかり。さぁ、高貴なる私に相応しい高級リゾート、エーデル・ヴァレイが両手を広げて待っている!