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3.神託の概要(2)

「吾がつま豊受とゆけとの子に善き世を見せよ」



この文は支離滅裂に見えるが、常識に縛られず、真意を汲み取るよう努めたい。


「つま」は漢字のほうがフリガナである。古語の「つま」は夫婦や恋人が互いに相手を呼ぶ称であり、性別を問わず使われた。女性を意味する「妻」が使われていることから、豊受は女性である。天照は女性であると神勅の最後で明言しているので、女性が女性と結婚している、すなわち同性婚である。


豊受については、21代雄略天皇の夢で、天照が「御饌都神(みけつかみ、食事の神)である等由気大神を自身のそばに置きたい」と告げたとされる(止由気宮儀式帳、804年成立)。御饌都神としての立場は、豊受と伊勢神宮に正式に呼び寄せるための口実の可能性がある。「豊受」は一般的には「とようけ」と読むが、古くは「とゆけ」と読む。(7節で詳述。)


ここでの「子」は天照と豊受と一親等の、最狭義の子であろう。女性同士で子が生まれることは現代科学では考えられないが、天照も豊受も肉体がない。天照に肉体があれば、そもそも代筆を頼まず自分で神託を書けばいいだけの話である。(神託は人間による代筆の形をとられている。)日本神話の神の産まれ方には肉体を持つものとしては考えられないものが多数ある。この「子」もそのように産まれたと思われる。


日本で最も格が高い神社の一つである伊勢神宮の、主要な二つの宮の祭神二柱の子である。歴史に名が残ることは確実である。が、



「下卑な願いにけがされぬよう子の名は伏せる」


「子」の名前が出てくることはない。今の日本人の大半は、○○神の御利益は○○など、神を願いを叶える装置としてしか見ていない。国の平和のような大きな願いをする人も、神を装置として捉えていることには変わりない。高貴な「子」が、願いを叶える道具にされてはたまったものじゃない。下卑な願いがあるわけではない、願いは全て下卑である。



前段に戻る。神託の中で、日本人に対する要求は4つある。(1)愛子天皇の実現。(2)「子に善き世を見せよ」。(3)(女官について)知らないことは言うな。 (4)自分が女神であることを忘れるな。


この中で、倫理に関するものは(2)だけである。日本人が「善き世」とはどのようなものかを各自で考え(「善き」は定義されていない)、神にとって、すなわち人間の寿命を大きく超える時間にわたり、「善き世」を実現できるよう行動してほしい、とのメッセージである。


「佳き」「良き」でなく、「善き」である。一時の楽しみをよしとするのではなく、長い間の繁栄を求めている。


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