そらのぼうけん
ある日、空は冒険したくなりました
広い広い場所から、狭い狭い場所に行ってみたくなったのです
高い高い場所から、低い低い場所に降りてみたくなったのです
大きな大きな体をギュッと縮めて、都会に行きました
都会は人がたくさんいて、びっくりしました
空と同じ色を見つけては、喜びました
たまに声をかけられて、緊張しました
少し疲れてしまった空は、ふわりふわりと浮いて、田舎に行きました
田舎は人がいなくて、びっくりしました
空と同じ色がどこにもなくて、心細くなりました
たまに動物にかじられて、逃げ出しました
気が付いたら、空は、海にいました
毎日毎日向き合っていた、海が目の前にいました
見下ろしていた色とは違う、海の色に驚きました
見下ろしていた時にはわからなかった、海の姿を知りました
砂と風と生き物と混じって楽しそうにしている海を見ていたら、空はなんだか寂しくなりました
雲と生き物と機械と風を包み込んでいた頃を思い出して、どんどん寂しくなっていきました
空は、冒険はもういいやと思って、広い広い場所に戻りました
空は、またいつか冒険に出ようと思って、高い高い場所に戻りました
空は、小さく小さくなっていた体を大きく大きく広げて、遠い遠い世界を見下ろしました