第2話 夢は始まったばかり
「で、何か少しは考えはあるんだろーな? そんだけデカい口叩いといて」
幼なじみは椅子の上で胡坐を掻いて私を睨みつける。
「無い」
即答する私。
風が二人の間を爽やかに吹き抜けた。
「は?」
「だから、無い」
にっこりと笑って誤魔化す私。
すかさずデコピンが飛んでくるがお生憎さま。
その指を秒でハリセンで叩き落す。
手を押さえて呻く幼なじみがもう何だか定番である。
「ーっ、お・ま・え・は人を頼り過ぎだこの馬鹿や」
「や?」
今度は鞄から鉄扇を用意してチラつかせる私。
「や、…………。野菜はど、どうしょうか?」
急に口調が下手になる幼なじみ。
しかし野菜から虹色を採るというアイディアは悪くない。
世の中ヘルシー志向だし。
良いんじゃあないか。
野菜か、野菜なー。
私はメモ帳を取り出して書き込む。
「赤色は、トマト? 橙(オレンジ)はカボチャ? 黄色は……。ん~パプリカとか?」
ぶつぶつ言うのを、幼なじみは黙って見ていてくれる。
黙って?
ヒュン!
「おわっ! おまえは急に先が鋭い鉛筆を投げるな!」
「あーたが(あんたが)黙ってるのが悪い」
一刀両断で悪いのは幼なじみと断言。
「分かったよ。で、次は緑か? キュウリ……。ピーマン……。うっわまずそう」
「スイカ、は果物か」
「お、ちょっと違うぞ。スイカは果実的野菜に分類されるからな。って、果肉は赤じゃあないかよ」
「そうなんだよね~。緑で美味しそうなのって。ワサビ?」
「何かジャンルがズレてきたな」
私はメモ帳を睨む。
「まあ、緑は置いておこう。藍は、ナスかな。あ、でも紫もナスだし」
「区別が難しいな」
幼なじみも頭をフル回転させてるようだ。
「言い出しておいてなんだが」
手を挙げて、「先生!」のポーズで幼なじみが言う。
言いたいことはもう解っていたが、敢えて問うことにする。
「何よ」
「ヘルシー路線は諦めたほうがいいと思う」
良い案だとは思ったんだけれど。
やっぱりアイスクリームには……。
「「フルーツ」」
二人の声がぴったりと重なった。
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