プロローグの終わり そして、主人公でない者の恋の始まり。
「お……おい、ダリュン」
へんじがない、ただの死体のようだ。
「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい、教会で人が死んだ、それもシスター(仮)が殺した」
やばい、ダリュンの頭は原型とどめていない。
そして、ダリュンにまたがっている自称神は身体中に返り血を浴び、真っ赤に染まっていた。
やばい殺される、俺も殺さられる。に、逃げなきゃ。
息を殺し、自称神の背後を通って協会の出口に向かう。
「逃げないでよ」
ガシッ
足首に冷たい感触が広がった。
「ギャヒーーーーーー」
まずい、真っ赤に染まった手で足を掴まれた。
「おとなしくそこで見ていなさい」
自称神は、足首に赤い手跡を残し手を離た。
恐怖のあまり声が出ず腰が抜けた。
「あなた、神聖魔術は使える? 使えるのならどの程度使える?」
……え?
「神聖魔術は、回復と浄化が使えて一人前。
神官、教皇クラスは自身では、瀕死の状態の人を治せる。けど、死人は治せない」
……こいつは何を言っているんだ?
「教皇ですら死者蘇生が出来ないのにどうやって教会は死者を蘇生していると思う?
神父であるあなたなら分かるでしょ」
ーーーー作者の力!!
「そうね、神の力ね」
「…………」
自称神はダリュンの上から横に移動し、手をかざした。
すると周りに飛び散った血が薄らと消えていき、先ほどまで原型をとどめていなかった頭が時間が巻き戻るように元に戻っている。
蘇生を目の前で見たのはこれで二度目だ。教皇でさえ原型をとどめている死人しか蘇生出来ないうえ、詠唱が必要だというのに。こいつは原型をとどめていない死人を蘇生するばかりか無詠唱で、それも教皇より素早く傷が塞がっている!?
こんなこと人が出来るわけがない。できたとすれば、それはつまり『神技』いや、『神業』。
神業、つまり神の力でしかできない奇跡。
つまり、今目の前にいるのは自称神ではなく正真正銘の神⁉
「うぅ……」
どうやらダリュンが目をさましたようだ。
「俺はさっきまで小舟で皮を渡っていたら気持ち悪くなって吐いていたような……」
「おぉ……ダリュンよ死んでしまうとは情けない」
いや、お前が殺したんだろうが。
「俺死んでいたのか……」
「そうです。あなたは何者かの手によって無残に殺されました。」
「そんな…………俺を殺したのは一体誰なのですか?」
「あなたを殺したのは誰かは分かっておりません……しかし、私があなたを見つけて教会に運び込み、神にあなたを蘇生しただくようにお祈りをしたのです。
そして祈りが届き、あなたは蘇生されました」
「おぉ……ありがとうございますシスター様」
ダリュンは目の前のシスターの手を握りしめ頭を下げた。
もしかして教会で殺されたこと覚えてない?
……いや、記憶を消しているのか⁉
本当の神ならできてもおかしくない。
「いいえ、私は何もしておりません。あなたを助けたのは我らが主神アルテミス様です。お礼をするならアルテミス様にしてください」
「分かりました、ですが何をしたらいいのでしょうか」
「簡単です。見ての通りこの協会はお金がなく危機に瀕しています、なのでお金を寄付していただくとアルテミス様はお喜びになると思います」
「お金……ですか」
「だめ……ですか?」
彼女はうるうるとした目でうったえた。
マジかこいつ…………でも案外かわいい……かも?
「「へい、喜んでーーーーーー」」
ダリュンは、鼻の息を荒くして嬉しそうに返事をした。
そして「ダンジョンに数日いや、数ヶ月潜ってくる」と言い残し鼻歌を歌いながら教会を後にした。
……こいつやっぱり神じゃないな。
これは後で聞いた噂なのだが『数ヶ月ダンジョンに入り浸る』と調子に乗ってた若い冒険者が数週間後に瀕死の状態で見つかったらしい。
原因は、あまりの空腹でモンスターを食し、食中毒になったらしい。
命に別状はないとのことだ。
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