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KOTOED -コトエド-  作者: 川輝
部活編
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話し合い

※一応この作品は不定期投稿です

授業が終わると、いつの間にか何もしていないのに昼休みになっていた。

俺が何となく席を立つと隣の席でさっきまで爆睡していた春樹が話しかけてきた。


「さて、パン買いに行こうぜ」


普段ならここで一緒に行くが、今日ばかりはと言うか、これからしばらくは春樹を上手く振り切らなければならないのでとてもめんどくさい。

だがやってやる。まあ安心しろ。策は考えてあるんだよ。その為の授業時間だ。


「その前に、トイレ行くから先に行っててくれ」

すぐに俺は歩き出した。

「お、ちょうどいいね、僕も行きたかったところだよ」


春樹もついて来た。

流石にこの程度でいけるとは思っていないから大丈夫だ。


「いや、大の方なんだよ」

「ちょうどいいね、僕もなんだよ、やっぱり僕たちは繋がっているんだね」

「変なこと言うなよ…」

「えへへ」


春樹がわざとらしく鼻を擦りながら笑った。

まあ、まだ策はある。


「……」


トイレに着き、春樹が個室に入ると俺はそのドアと壁の間に箒を挟んで簡単には開かないようにした。

一応このまま春樹が出て来られなくなると困るので、ドアに紙を貼って、愛の巣へようこそと書いてその場を後にした。

まあ特に意味はない。

すぐに購買パンを買って真波を探しに行くと、外で一人ご飯を食べていた。

すぐにこちらに気づき反応する。


「あ、坂野さんやっときました」

「すまん、どこにいるのか分からなくて」

「そうでしたね。集まるところを決めておくべきでした」

「そうだな、これからはここでいいか」

「はいっ」


俺はベンチに座ると、自分のパンを食べ始め、早速話を始めた。


「そういえば河原は二年生なのに何で部活に入りたいんだ? この学校の部活の強制は一年だけだぞ?」


真波は下を向いてしまったがすぐに決心したのか顔を俺の方に向けた。


「実は私、今年の春休みに転校してこの学校に来たんですよ」

「ん、そうだったのか……」


しかし、それだけでは理由にはならない。もう少し聞いてみようと思ったが真波の顔がこれ以上は聞かないでほしいとでも言っているかのように暗く見えた。


「……」


これ以上深くは追求できなかった。


「さ、さて、じゃあ河原。運動部か文化部、どっちがいいんだ?」

「私、運動は全くできませんので文化部がいいです」

「その見た目で滅茶苦茶運動できたら俺は何も信じれなくなりそうだから安心したよ」

「坂野さんひどいです」

「冗談だよ」


俺たちはいつの間にか笑っていた。

さっきまでの暗い雰囲気とは打って変わって明るい雰囲気になっていた。


「じゃあ、少しでも興味のある部活はあるのか?」

「そうですね……。沢山の人たちで一つの物を作る部活は無いでしょうか?」

「……だったら演劇部なんていいんじゃないか? 沢山の人で一つの物を作る部活だぞ」

「演劇部……はい、私演劇部に入りたいです」


どうやら早く終わりそうだ。

しかしこいつの決断力はなかなかのものだな。


「では、そうと決まれば早くいきましょう」


真波が立ち上がり俺の手を引っ張ったが、そこで俺はある一つのことを思い出した。


「いや、まだ体験入部できる日じゃないぞ」

「あっ、そうでした、すみません一人で勝手に盛り上がっちゃて…」

「いやいいよ。しかし、まず部活動紹介が来週からでそこからやっと体験入部ができるからな…まだまだ先だぞ」

「そうですか…」


表情だけだも落ち込んでいるとすぐにわかるほど少し表情が暗くなって、しょんぼりとしていた。

このまま暗い表情で別れたくないのでひとまず気休め程度に一言声をかける。


「まあ、入りたい部活が見つかっただけでも良かったじゃないか」

「そ、そうですね。入りたい部活が見つかってよかったです。坂野さんのおかげです。ありがとうございます」


真波は笑顔になりかけた表情で頭を下げながら答えた。

そんな突然の事に少し戸惑いながらも、手を左右にブンブンと振って否定する。


「いや、俺は何もしてないよ」

「いえ、坂野さんがいなかったら私何もできてなかったです」

「河原は大袈裟だな、もっと自分に自信を持て」


俺は河原の頭を気づいたら撫でていた。


「どうして撫でているんですか?」

「いや、何でだろうな」

「坂野さん、おかしいです」


河原が少し微笑みながら言った。


「おかしいのか…」


俺たちは自分の教室に帰って行った。

意外な事に教室に帰っても春樹はいなかった。トイレを開けに行こうとも思ったがめんどくさいのでやめた。

そのままチャイムもなり先生が教室に入って来た。


「なんだ、今日は三谷は休みか? いや、朝は確かいたよな。早退か? 誰か知ってるか」


誰もが一度隣同士を見て、横に首を振った。

知るはずがないのだから仕方がない。

きっとここにいる俺以外は、春樹がトイレに閉じ込められているとは思っていないだろう。

逆に知っていたらそいつは知っていながら助けなかったと言う事になるから、そいつは相当捻くれてる奴だな。

………あれ、それ俺か?


「俺、探しに行きますよ」


俺は席を立つと先生の返事も待たずに教室から出て行った。

先生は止めていたような気がするが聞いていなかったので知らない。

だがこれでサボれるな。

俺は真っ先には春樹のいるトイレには行かず、校舎を見て回った。


一通り時間も潰せたところで春樹を迎えに行こうとしたところで、授業の終わりを告げるチャイムが鳴ったので、俺は教室に帰ってそのまま自分の机に突っ伏した。


「──さん、坂野さん……お、起きてくださいっ」


しばらくすると、誰かに声を掛けられて起きた。

眠い寝を擦りながら顔を斜めに向ける。


「誰だ?」


相手の顔を見るとすぐに沙夜だと分かった。

あくびが出そうなのを噛み殺して返事をする。


「俺になんか用か?」

「い、いえ、あの、も、もう、授業ですので…」

「坂野、高石さんを泣かせるんじゃない?」

「泣かせたら姉が突撃してくるからな」


周りから声が聞こえてきた。

どうやら外野を止める先生は今はまだ来ていないようで、無法地帯だった。


「いえ、泣きません…」


再び沙夜を見ると少し涙目になっている。

すると俺はいきなり何かに飛ばされ、気づいた時には黒板の方に倒れていた。

ついでに身体中が痛い。

特に背中が痛い!


「まさか、藤也が妹を泣かせるなんてね」


すぐに理解した。葵だった。


「いえ、私まだ泣いてません」

「え? な、泣いてないの? じゃあなんかされた?」

「いえ、特に何も」

「藤也、ごめんねー。それじゃ」

「あ、おいテメェ!」


俺が叫んだ時には遅かった。

沙夜はすでに自席に戻っていった。

授業が終わると、何も無かったかのように淡々とした様子で春樹が帰ってきた。


「僕、今日変な体験をしたよ。トイレから出ようとしても出られないんだ、しかも、ドアを叩いても誰も来ないし、この学校多分なんかの呪いがあるに違いない」

「あーそうだな」


俺は棒読みで答えた。

いや、笑いを堪えるためでもあったかもしれない。


「もっと相手にしてくれよ。本当だぞ? あとドアが開いた時、何故かバキッ! て言う大きな音がしてさ、開けてみると下に折れた箒が落ちてたんだよね… …一体なんだったんだろう……」


コイツ馬鹿だ。

学校は何もしなくてもすぐに終わった。

すると予想通り春樹が帰りに誘ってきた。


「坂野、帰ろうぜ」

「悪い、今日は用事があるから先に帰ってくれ」


そう、今日学んだのだが無駄に心理戦にする必要はないのだ。初めからこう言ってしまえば良かったのだ。


「どっか行くのか?」

「家でやることがある」

「じゃあいいじゃん。途中までだし」


あぁダメだった。

確かにそうだな。しかもコイツなら走ってもついて来そうだ。俺、嘘下手なのか?

でも、真波と一緒のところを見られる訳には行かない。


「くそっ!」


俺はすぐに走り出した。教室を出て、階段を上がり、二年生の校舎に来た。

周りには俺を不審に思う人が大勢いる。当たり前か。しかし、よく考えてみれば俺は真波のクラスを知らない。


「くそっ、聞いときゃよかったな」


俺はポツリと呟いた、すると、横から声をかけられた。


「何を聞いておけばよかったんですか?」

「河原のクラスだ!」


俺は焦っていたので反射的に答えていた。

だがすぐに声の主に覚えがある事に気づく。


「私のクラスは二年B組です」


真波はキョトンとした表情で言っていた。

俺は驚いたが、話しかけて来たのか真波だと認識すると、すぐに手を引っ張った。


「河原、走れ!」

「え、ええっ!? わわっ」


真波はバランスを崩しそうになったが、立て直し一緒に走った。


「どうしたんですか?」


真波が走りながら質問して来た。

どうやら運動がまったくダメと言っていたが、どうやら本当にそうらしく、少し走っただけで既に息が上がっていた。

まあ俺だってものすごい体力があるわけではないので少し息は上がっているが、今の真波程ではない。


「すまん、後で答えるから今は走ってくれ」

「は、はい」


俺たちは学校の外に出てきた。お互い息を切らしていた。


「はぁはぁ、すまん、いきなり」

「いえ、はぁはぁ、少しだけ楽しかったです」

「そうか?」

「はい、それでどうしていきなり走ったんですか?」


ってここで俺が春樹に見られたくなかった、なんて言ったらまるで俺が変な奴みたいじゃないか。

どうしたものか……しかし、俺はもしかしたら嘘が下手だからあまり嘘を言っても真波には通じないんじゃないか?


「……実は三谷が俺と河原のことを誤解してるみたいで、俺と、その、河原が付き合ってると思われてるんだよ」


これは間違っていないはずだ。


「そ、それは本当ですか? 知らないうちにそんなことになっていたんですか?」

「ああ」

「坂野さんには、私よりもとてもいい人がいると思いますので…」

「あ、ああ、そうだな、さて、行くか……」

「お、お前ら……」


背後から誰かの声、まさか。


「坂野っ、それにあの時の可愛い子! やっぱりお前らそう言う関係なんだろ!」

「い、いえ、坂野さんにはもっといい人がほかにいますっ!


おい、何だその誤解を与えそうな言い方は、もっとほかにあっただろ!


「一人だけには止まらず、他にもいるだとっ!?」

「三谷、それはだけは誤解だ!」


俺が叫んだ時にはもうすでに春樹はそこにはいなかった。


「どうしてこうなった………さ、さて、今度こそ行くか」

「坂野さん、良いんですか?」

「明日には誤解を解いておくよ」


こうして俺は一度家に帰り泊まるためのものを持って河原家に向かった。

最近河原の家に行くこと多くないか?

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