クラスにて
物を組み合わせる事によって僕はこの何もない世界で僕以外に動く物を作ることができた。
しかし、僕はすぐにこのロボットに一つ違和感を覚えていた。
僕が何もしなくてもこのロボットは動いたのだ。
僕は元々話し相手が欲しくて作ったものの、本当は話相手なんかできるわけないと思っていた。
しかし、動いたのだ。
* * * *
俺はいつも通りに起きて朝食を食べ親父を一応起こして学校に向かった。
今まで学校なんてただ暇なだけだった。しかし、今日は何故か学校に行く足が軽かった。何故だろう。
俺は学校に着くと校門に一人の女性を見つけた。
真波だ。
「あ、やっと来ました。遅いですよ」
「別に朝会う約束なんてしてないし遅刻もしてないぞ?」
「そうでしたね、すみません。でも坂野さんに朝会っておかなければ昼休みに会えないと思いまして」
「そうだな、河原に言われなかったら俺何もしてなかったな……」
「それじゃあ意味ないですっ」
河原が少し呆れていた。
俺は昇降口に向かって歩き出した。真波もすぐについてきた。
「嘘だよ。言われなくてもちゃんとしてたさ……オッサンにも脅されてるしな……」
「最後の方何て言ったんですか?」
「いや、なんでもない」
真波に聞かれたらそこからオッサンに話が回りかねない。黙っていよう。
「さて、じゃあ続きの話は昼休みで」
「はい、それではまた」
俺は真波と別れた。
教室に行くと春樹が俺の机に向かって何かを呟いていた。正直怖い。
俺が近づくと春樹が俺に気づいて襲いかかって来た。
「坂野てめぇぇぇーーー!」
俺は正面から突っ込んで来る春樹を避けた。
するといきなり誰かに蹴られ教室のドア側から窓側まで飛ばされた。
「うわぁぁぉーーー!」
ドカン! という大きな効果音とともに春樹は倒れた。
「教室に入ったらいきなり襲ってくるとか春樹、あんた二年生の時と何も変わってないわね」
声の主は葵だった。
普通にしていれば結構可愛いと思うがいつも暴力的なので全てを相殺している。
「葵、久しぶりだな。なんかうちの教室に用か?」
「いや、久しぶりにあんた達を見に来たのと、このクラスに私の妹が居るから会いに来たのよ」
「え!? おっ、お前妹がいたのか?」
「ええ、そうだけど……言ってなかったっけ」
「知らねぇよ! そんな事」
俺は戸惑った。まさか葵に妹がいたなんて、しかも同年代ということは、双子か? こんな奴が二人もいるってことは……俺は想像してみた。
「ほら、早く昼飯のパン買ってこい」
「あ、私のもついでによろしく。惣菜パンでいいから」
「ついでに俺も同じのを」
「いや、でもここで金を使ったら僕の昼飯が……」
「ごちゃごちゃうるさい!」
「いいから買ってこい!」
春樹は葵とその妹と俺に脅され逃げるように買いに行った
しばらくして──
「はいっ、はぁはぁ、買ってきました!」
「遅い!」
「何分待たせるんだよ!」
「すみません! 無茶苦茶混んでいまして」
「言い訳するな!」
「すみません!」
春樹はずっと頭を下げていた。
脅される春樹、毎日パシられる春樹……頑張れ!
「何で僕だけなんすかね! というか何でお前も向こうに混ざってんだよ!」
「大丈夫、お前ならできる」
「やらねぇよ!」
俺は春樹の肩を叩いてやった。
というか俺の想像のはずなんだか……。
「ていうか、少しは蹴られた僕の心配もしてくれよ!」
「いや、お前くらいになればあれくらい平気だと思って」
「ま、まあねー、へへっ」
春樹は少しニヤけた顔で自分の頭を自分で撫でていた。
ちょろいな。
「だから、次からはもっと強く頼む。葵」
「オッケー」
「僕、もう帰って良いかな?」
少し落ち込んだ雰囲気だった。
「あれ? お姉ちゃん、何でここにいるの?」
いきなり後ろから声がした。
「あ、沙夜、このクラスは上手くやっていけそう?」
「ま、まぁ、なんとかね……で、誰かと話してたの?」
「うん、コイツらとね」
葵は俺たちに指をさした。
沙夜と言ったか、その人はすぐに姉である葵の後ろに隠れてしまった。
おかしい、何故隠れる?
「おい、春樹のせいですでに嫌われたんじゃないか? 俺たち」
「僕が何をしたって言うんだよ」
春樹は必死だ。
「春樹はもしかしたら嫌われてるかもしれないけど、私の妹は人見知りが激しいから…‥」
「僕は嫌われてる前提っすか、いや、しかし葵の妹だ、何か物凄い力を持っているに違いない。
おいっ、本当の力を見せてみろ! お前の力はこんなものではないはずだ! 自分の殻を破り捨てろ!」
そう言うと、春樹は葵の目の前で沙夜の肩に手を置いた。
「いやーー!」
沙夜が叫んだ。
「沙夜を泣かせるなんて、最悪っ!」
「いや、僕はただ手を肩に置いただけ……」
すぐに春樹に向かって次は拳が飛んできて教室の窓側へと飛んでいた。
「ぐあぁぁーーー!」
ドカン! という大きな音とともに春樹がまた倒れた。
葵が倒れた春樹に説明しているとすぐにチャイムが鳴った。
「あ、じゃあ私はこれで。また春樹や藤也になんかされたら私に言ってね」
「う、うん、また後でね」
「俺もかよ……」
葵が紗夜に別れを言うと自分のクラスに帰って行った。
言っておくが俺は何もしていない……よな?
俺たちも席に着くと、春樹はすでに座っていた。
コイツ、身体の頑丈さだけは誰にも負けないんじゃないか?
こうして、今日も学校が始まった。