新学期での出来事
僕は沢山の落ちている物を集めて、話し相手を作る事にした。
僕は早速、物を沢山拾いに歩き回った。
しかし、帰る途中で、自分がどこにいるのか、分からなくなってしまった。
もといた場所を見失ったのだ。
僕は沢山歩いた、歩き回った、しかし、帰る事はできなかった。
そのうちに、日が落ちてきて、あたりが暗くなってきて周りが見えなくなってきた。
僕は疲れたので倒れるように寝た。
眠りにつく瞬間何かが僕を包み込んだ気がした。
* * * *
俺たちは学校に着いた。周りもあのコンクリート製の建物(学校)に行くために歩いていた。
周りは大体同姓の人と登校しているので誇らしいのだが、初めて女の子と登校しているのでとても恥ずかしいものとなった。
「じゃあ俺はこっちだからまた後で」
「はい」
また後でなんて言ってしまった。どうやら真波と一緒に帰る約束を流れでしてしまったらしい。
なんてことだ。
「おーい」
後ろから声をかけられたのだが、真波かと思ったがもう校舎の中に行ったので違う。とすると……誰だ?
「よお、久しぶだな坂野」
見た目は普通に不良と言われれば、そう言えてしまう見た目だ。
「……」
「どうした? そんなまるで怪物でも見たかのような目は」
「そんな目はしていない……で、お前誰だっけ」
揶揄うように言ったわけではなく、本当に疑問に思って言ったことなんだとこいつは藤也の顔を見て察したらしい。
「なっ、僕だよ僕。忘れるか? 三谷だよ。三谷春樹」
「ああ、悪い、俺記憶を無くしててさ、お前の記憶も無くしたわ」
実は始めからこいつの存在は一秒たりとも忘れたことはなかった。全てはこいつを揶揄うためだ。
「なに!? おまえ、この春休み中に記憶なくしたのか? じゃあ僕の言うことを何でも聞く約束も忘れたのか……」
「そんな約束はしてねぇ!」
俺は春樹の腹に向かって飛び蹴りした。
「ぐはっ!」
しっかりと命中した筈だがこいつはすぐに起き上がってきた。
「忘れてないじゃないか!」
「当たり前だろ! 何で信じた」
「信じちまったんだから仕方ないだろ!」
こいつのバカさ加減に呆れてため息が出た。いや、こんなのは慣れたものだ。
「もう行こうぜ、時間だ」
春樹を置いてさっさと歩き出した。
「あっ、おい待てよ」
すぐに追い付き俺の隣に来ると、春樹が顔を緩ませながら聞いてきた。
「で、さっき隣にいた可愛い子は誰だよ」
「あ? そんな奴知らねえな」
「とぼけてないで僕にも紹介しろよっ」
こいつに話したら余計めんどくさくなるな。どうにかこの場を切り抜ける方法はないのか?
考えたが騙すことぐらいしか思い浮かばなかった。
珍しく真剣な眼差しをし、人差し指を突き上げて春樹の方に向き直った。
「実はあいつ道に迷っててな、俺がここまで案内してやったんだよ」
「いや、あいつのリボンニ年の色だしそもそもまだ一年は来てないぞ?」
なにっ!? こいつこういう時に限って頭が冴えやがるのか!
「いつもは馬鹿のくせに」
「聞こえてるぞっておい待てよ」
声に出ていたらしい。
俺はこのままではまずいと思い、この場を小走りで切り抜けて話を終わらせた。
クラス分けの大きな紙を一つ一つ見ていくと途中に春樹も俺もとても見覚えのある名前があった。
高石葵だ。
「うっ」
「うっ」
揃って変な声が出た。
俺たちを去年沢山蹴り、殴り、強制的に勉強させてきた女だ。
多分、そのせいもあって普通の人に殴られたぐらいではあまり痛くないほどに暴行耐性が付いている。
「まぁ別のクラスだし去年よりはマシだろ…」
「そうだな…」
薄れた声を出しながら去年の事を思い出していた。
何故だかは知らないがいきなり葵がきて勉強を教えてくれたが藤也たちが全く勉強を理解できず怒って、藤也たちが殴られた時から始まった。
今考えると一体何故勉強を教えてくれたのだろうか。
その先にいくと俺の名前は見つかった。
どうやら今年はD組らしい。その近くに春樹の名前があった。
まあ、選択科目が同じなのでほとんど予想できていたことだか。
「おっ、今年も同じじゃん、よろしくな」
春樹がニヤッと笑って肩を組んできた。
まあ一応暇つぶしになるからいいか。
あと、高石の苗字が何故か藤也と同じクラスの紙にあった気がするが気のせいだろう。分身なんてする筈ないしな。
そんなことを考えているとチャイムが鳴ったので俺たちは急いで席に着いた。
窓の外を見てぼーっとしているだけで話は進み、始業式の校長の話も終わり、昼食を食べ終わると何もしないで学校が終わった。
放課後になった瞬間お互い立ち上がり帰る準備を進めた。
「よーし、帰ろうぜ」
「ああ」
「で、朝の子誰だよ」
少し興奮気味に話しかけられた。
めんどくさいな。それに春休み中に知り合って今朝一緒に朝ごはんを食べて一緒に登校してきた。なんて言ったらどうなるか。
ここは何としてでも騙して切り抜けよう。
「……実はあいつ、一年の時途中から休んでな、道を忘れてたんだよ」
「マジかよ、それは悪かったな変に誤解して」
「ああ。それと、あいつとは朝あったばかりだからな」
「何ぁんだ。そういうことだったら先に言ってくれよな。ま、あんな子とじゃ釣り合わないよな。結構とろそうだし」
ちょろいな。良かった信じやすすぎて。
俺は春樹と学校を出て校門まで来たところで少し照れた声で話しかけられた。
「あっ、やっと来ました坂野さん。一緒に夕ご飯を食べに家に帰りましょう」
俺が反応するより先に、春樹が反応した。
「………え? 今なんか、いや聞き間違いかなぁ、一緒に帰る? カエル? あははっ。そんなわけないよねっ」
何言ってんだコイツ、どうやったらそう解釈するんだ? どうやら春樹の頭はバグってしまったらしい。
いやもとからか。心なしか目も焦点があっていない気がする。
「い、いえ、私はカエルではありません!──カエルの人間がいるんですか?」
「いや、そんな奴はいないから安心しろ」
「そうですか、安心しました。はっ、忘れるところでした。さあ坂野さん。私の家に一緒に帰りましょう」
そう言うと俺の制服を軽く引っ張ってきた。
おいおい、その言い方は完全に誤解を与える言い方だな。
「坂野……お前騙しやがって……! お前らいつの間にそんな関係に……くそっ、しかも可愛い! お前だけは仲間だと思ってたのにーーーっ!」
そう言葉を吐き捨てながらどこかに走り去っていった。
あいつ同性愛者だったのか?
「おい誤解だ! あながち間違ってはないが!」
俺が叫んだ時にはもう遅かった。
河原はキョトンとしていたので、ことの発端を説明してやった。
「すっ、すみません、私が誤解をあたえるような言い方をしてしまって」
ばっと頭を下げられたので藤也も困惑してしまった。
「いやいいよ、けど俺夜も食べるなんて約束したか?」
「あっ、それはお父さんが勝手に……」
まあ、朝俺の家を出る時あんな風に飛び出てきてしまったので帰り辛いのでちょうどいいと思った。
「本当にいいのか?」
「はい。それに私ではなくお父さんが決めたことですので」
「それもそうか」
俺たちはもう一度一緒に河原家に向かった。
そういえば春樹を放って置くと明日面倒なことになりそうだなとなんとなく考えながら歩いた。