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1 私は王宮に住んでいます

 ルーニア・ウェル伯爵令嬢、というのが私の身分だが、赤子の時から王宮に住んでいる。


 両親とも幼い頃は毎日、今は週に1~2回会えているし、この暮らしに不満はない。というかまぁ、赤子の頃からのことなのでおかしいとかは感じた事がないだけなんだけど。


 ジュード・マルクセス王太子の婚約者だったりもする。それも同じく、赤子の頃から。逆かな、王太子の婚約者だから王宮で暮らしているというのが正しいのかも。


 それにも特に不満はない。


 ジュード殿下は茶色の髪に新緑の瞳をした、優しい王太子。見目も悪くないし、18歳の今では剣も乗馬も弓術もやるので身体も逞しい。私と並ぶと見上げるくらいには背も高く、赤子の頃からの付き合いだが、ちゃんとお互い好きだと思っている。


 私は紫紺の髪に菫色の瞳で、肌が白くて見た目はいいとも言われる。婚約者が決まっているから他人にどう思われるかには、婚約者募集中の女の子たちほど興味がなく、それでも殿下の隣にいて恥ずかしくないように努力はしてきた。


 ただ、ジュード殿下は優しすぎるきらいがあるし、私は少し無愛想という欠点がある。


 これでも18年一緒にいたのだから、お互いの悪いところくらいは知っているし受け入れている。笑顔の練習を頑張らなきゃなぁと思いながら、実は木陰で昼寝がしたいという気持ちもある。


 ジュード殿下のお母様……王妃様は亡くなられている。ジュード殿下のお産の時にだ。陛下はジュード殿下をその分可愛がったし、愛情深い方で、その後誰かを妻にする事はなかった。


 先に亡くなる気はないが、ジュード殿下も愛情深い方だ。私もそんな風に大事にされたいな、なんて思う。


 長い渡り廊下を歩いて多国語とマナーの授業から、次は政治と経済の授業を受けるために移動しながら、とりとめもなくこんな事を考えていた。


 ——嫌な予感がしていたのかもしれない。


 普段当たり前すぎて考えることのないようなことを、こうつらつらと考えている。でも、私はそれを止める事ができなかったし、ただなんとなくそういう日なんだろうと思っていた。特に誕生日という訳でもないし。


 資料の関係と、現場で働く人が教師を務めてくれているので、私があちこち移動して授業を受けている。


 王太子妃教育は多岐にわたるが、王宮という場所に住んでいれば、特に問題なくこなしていける。別に詰め込み授業というわけでもなく、最近は特におさらいや、日々変動する政治や経済の動きから先を予想する、より実践的な授業に近い。


 勉強ばかりではないし、殿下とお茶をする時間も、私のドレスを作ってくれたりもするし、食事も美味しい。むしろ、実家に帰ったら舌が肥えていてまずいことにならないか、と不安になる。


 ……なんで実家に帰るだなんて思ったんだろう。


 授業の教室前につくと、そこにはジュード殿下がいた。


「ごきげんよう、殿下」


「あぁ、ルーニア。……すまないが、授業は中止だ。話があるんだ、そこのサロンに来てくれないか?」


「? はい、かまいませんよ」


 殿下は優しすぎるきらいがある。


 と、分かっていたのになぁ、と思いながら私は殿下に続いてサロンに入った。

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