表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

三百年後のあの人

かなりオリジナルの要素が大きい話です。少しでも楽しんでもらえたら嬉しいですが、無理だと感じたら、ブラウザーを閉じて、この話は忘却の彼方へと葬ってください。

 

「紛い物の赤毛が……いい気になるなよ」


 すれ違った騎士に吐き捨てるように言われ、ライザードは足を止めた。過ぎ去る足音を聞いて、再び歩きだす。


 やっかみには慣れていたはずなのに、虚をつかれた。軽く息を吐き、気持ちを整え、地下室へと向かう。


 青の王宮の地下深く、石造りの螺旋階段を下りた先に神を祀った祭壇がある。そこには〝オンディーヌの箱〟と呼ばれる黄金の箱があった。開けると厄災が飛び出してくるといわれ、箱の見張りをするのが自分の仕事だ。


 箱を守るだけの仕事だが、これは王宮の護衛騎士の中でも選ばれたものにしか任されない仕事だ。箱からは呪いの言葉が漏れる。恐怖を覚える声を聞くのは忍耐力がとわれ、護衛の階級を上げた。


 その仕事に二十三才の若さでついたライザードへの風当たりは強かった。ただでさえ、この国では目立つ赤毛をしている。赤毛は〝王族の色〟と言われているが、彼は平民の出だった。


 だから、紛い物と揶揄され、茶色の染め粉を投げつけられる嫌がらせをよくされていた。


 赤毛で生まれてこなければ……と思ったことは幾度となくある。


「お前は俺の子ではない!」と茶色の髪の父に殺されそうになったとき。

 父から母と逃げて、匿われた教会が枢密院に見つかり、業火に包まれたとき。


 赤毛であることを恨んだ。


 家族を失くし、無理やり王族騎士団にいれられ、厳しい鍛練を強いられ、周りからは好奇な目で見られ、心が休まることはなかった。唯一、安らいだのは、〝シルフェリア王妃〟の肖像画を見たときだ。


 彼女は歴代最悪の王と呼ばれる赤の王の血縁者だが、赤の王を倒した青の騎士の妻となり、彼を深く愛し、国を豊かにしたと伝えられている。


 彼女の伝説は、この国で最も有名で、よく演劇の題材に使われた。


 一番、有名なのは、冥界に先立つ王との別れのシーン。横たわる王にすがりつきながら、「わたくしの赤をあなたの元へ」と言って、彼女は赤い髪を真っ白に染めるのだ。


 哀しい二人の恋の末路に人は涙を流し、自分も感銘を受けた。


(彼女のような人に愛された王は幸せだろうな……)


 肖像画に描かれた燃えるような赤毛に焦がれて、指を伸ばしたことは一度や二度ではない。

 彼女は三百年前に生きていた人なのに、こんなに渇望するなんて、どうかしている。


 胸苦しい思いを抱えながらも、日々を過ごし、仕事についた。


 オンディーヌの箱に近づくとさめざめと泣く声が聞こえてきた。


『呪ってやる……呪ってやる……呪ってやる……』


 しばらくすると、その声は音にならない金切り声となり、箱がガタガタ揺れて、ゴトンと鈍い音を立てて祭壇から床に落ちた。こんなことは初めてで、ライザードは咄嗟に箱に触れる。


『……あら? あなたは……』


 不気味な声がもれ、体がびくっと揺れた。離れなければと思うのに体が動かない。


『ふふふ……ふふふ……あはははは!』


 狂った声が聞こえて、ライザードは額に汗をかいて瞠目した。


『……ねぇ、箱を開けて頂戴。あなたの一番欲しいもの。シルフェリア姫をあげるわよ?』


 やめろと心が叫ぶのに手が勝手に箱を開けた。それほどまでに自分はあの姫を欲していたのか。信じられない気持ちでいると、箱の中から清い水が吹き上がった。


「シルフェリア……姫」


 出てきたのは赤い瞳と赤毛をもつ姫。彼女は妖艶に笑った。



「わたし、酷い目にあったの」



「愛しい、あなた。一緒に魔女に復讐しましょう?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ダークファンタジー堪能しました(о´∀`о) 他の方の感想にあった通り、1話目を読み終わった後で読み直すと、また違う意味でぐっときますね。 執着がたまらないです♪ ハンスに体を貪られてると…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ