終19、龍神の力を宿しは月下の天使、鍛冶ガールなり!
咲良と煌が四季彩の心の中へ旅立った後、残された面々はそれぞれが成すべきことを始めていた。
回復した五柱神は、神龍の加護を受けこれまでよりも数段力が増していたし、影虎を筆頭に黒龍・無縁の前に立ちはだかった。
同じく全快した鍛冶ガールらは己れの属性担当者ともいえる龍神らと対面していた。
そして何故か黙りを決め込んだ無縁は何故か仕掛けてはこなかった。
後に思えばあれは己れの敗北を待ちわびていたのではないかとのまことの述懐のように。
もしかすると巌鉄斉と無縁は煌が四季彩の深層心理の中で気付いたあることに最初から気付き行動していたともとれるのだが。
「じゃあ、あたしと同じように型を踏むように!」
まなじりを吊り上げた一帆に言われたまことは、急な要求に疑問が先に降って沸き、一帆が珍妙な動きをするのを目を細めて見るしかなかった。
「こらぁ! あなたもやるのよ!」
「で、でも何の意味があるんです!?」
「あーあー出た出た。あなたねぇ頭で考えすぎ! 時には何も考えずに直感でやりなさいよ、直感でっ」
同年代かそれより年下にしか見えない一帆にそう言われて少しムッとしたまことであったが、いやはや彼女は龍神なのだと改め、真似るように不器用な動きを始めた。
「…………こう……」
海鏡もまた、チンドン屋然とした躍りを無言の内に始め、目線だけで促された姫子も戸惑ったが、五柱神を回復した力を信じて続く。
ぶりっ子で名の通った姫子の奇妙な舞いは、ぶりっ子選手権のエキシビジョンで発表されることだろう。
「さて、あなたもよ。栞菜」
「うっ……私は運動音痴だから……」
「あらぁ。じゃあ私が手取り足取り教えてあげましょうね」
閃はそう言うと栞菜の背後に回り豊満な胸を背中に押し当て、吐息を栞菜の耳に注ぎ込んだ。
「あっちょっ……耳に息! せ、背中に胸ぇ~あぁん!」
百合ですかあなたたちは。
「じゃいっちょやってみっか!」
どこかの惑星から来た戦闘民族のようにワクワクしながらそう言ったのは伴峰だ。
他とは違い、まるで最強の拳法の型を披露するかの如く闘気を漲らせた演舞は人々を魅了した。
が、乙女な茜には荷が重かった。
「そ、それを私もやるの? ……」
「ワガママ言うんじゃねぇ! さぁやれ! お前ならできる!」
何かのスポコンアニメでも観ているかのような描写は当然軍司にとって歯がゆいものであった。
「あんの野郎……。おい爺さん! 何の意味があんだよこれ!」
もはや軍司にまで爺さん呼ばわりされてしまった巌鉄斉はそんなことを気にすることもなく、その問いに答えた。
「あれはの、鍛冶ガールに自分達の力を送る儀式じゃ」
「あん? けど茜達は秘めたる力を開放したんだろ?」
「そうじゃ。しかしそれはあくまでも開放したに過ぎん。開放したら次の段取りがあるものじゃ」
「また段取りかよ? けど他の龍神は呼ばないつもりだったんだろ?」
軍司、ありがとう。
君は名インタビュアーとなるであろう。
実に都合のよい小僧だ。
「始めはな。しかしここまで混戦となるとはワシにも想像が付かなかった。そしてワシがどうにかする前に咲良が真羅八龍神を集めてしまったからな」
「やっぱりか! なんかあの時、咲良の平ら胸の辺りで光る玉を見た気がしたんだよなぁ」
「そうじゃ! 鍛冶ガールはただ単純に属性の力を持った少女らではない!」
「美少女な! 一応言っとくけど。ただ雷とか炎の力を使えるだけじゃねぇってことか?」
「なかなか賢いではないか。まさにその通り。ワシはそれを知っていたからこそ、あの美少女達を集めたのだ」
「爺さんも賢いじゃねーか。んで? その心は?!」
「聞いて驚けよ。彼女らは星の力を司る守護天使の末裔じゃ」
驚いただろと自慢げに軍司を振り見た巌鉄斉だったが、軍司には理解出来なかった。
「はぁ~? 守護天使? 美少女ときたら今度は戦士とかって続くとか言わないよなぁ?」
「フフ、戦士か。戦士でもあるかもしれぬなぁ。しかしそれよりは統べると言った方が合っているじゃろ」
「令和に戻ったら妹の漫画本、もう一回読んでみよ……」
「それ順番に守護天使の片鱗を見せ始めたぞ! まずはまことか」
言われてその方角を見た軍司は仰天した。
栞菜特製の作務衣は、鮮やかなエメラルドグリーンに色を変え、天女が着る羽衣のように徐々に形を変えていった。
小さな風が紡ぎだすようにその衣を作った。
「うっそぉ! 超絶キレイ過ぎだろあれ! 胸元見ろよ爺さん! あれは反則られや」
「やかましい! 黙らんか!」
しかし巌鉄斉もしっかり鼻を押さえて軍司の指摘箇所を凝視していた。
次にフォルムチェンジしたのは姫子であった。
「こ、今度は姫子ちゃんかよ! やべぇメッチャ可愛い……最強の妹キャラだわあれは。何気に胸があるんだせ! 知ってたか、爺さん?」
「なんだと!? これ、そこをどかぬかっ。ほぅほぅなるほどのぉ……ワシともあろうものがそんな隠れた逸材に気付かなかったとは迂闊であったっ!」
姫子は水がゆっくりと流れるような、せせらぎの羽衣姿をまといニコッと笑っている。
もはやエロじじぃとマセたガキんちょのアリーナの取り合いであった。軍司が巌鉄斉の肩を引っ張って眺望すると、すかさず巌鉄斉が軍司の頭を地面に押し付け前に出るといった具合に。
「つ、次は地味に美人な栞菜かぁ……期待しかないぞ!」
「あのツンデレがどんな風に変わるのか気になりまくりだせ!」
即席のエロコンビが見上げた先に純銀のドレスに身を包んだ栞菜がとろけるような微笑を携え浮かんでいた。
「なんてこった……トレードマークのメガネを外すとかありかよ!?」
「まるで別人になりおる! いい! いいぞぉ栞菜!」
喝采を送った2人はいよいよとばかりに急に静まり返り、生唾をゴクンと飲み込むと最後の晩餐に挑むが如く茜を探した。
いや、メインディッシュと言ったところか。
「じ、爺さん! あそこだ!」
「ど、どこじゃ!? ワシのイチオシは!? はっ? あぁ!?」
茜はうっとりするほどの美貌を携え、露出の多めな羽衣をまとい、美脚あらわ、色気満載のうなじを見せながら振り向くとウィンクした。
「あの太ももがたまんねんだよなぁ……い、生きててよかったぁ……」
「なんということじゃ……言葉にならないとは、こ、このことか………」
パタム。
沸騰したヤカンのように茹で上がった2人は、折り重なるように彩り豊かな花火が明るく染め上げる大地に崩れ去っていくのであった。
折しも咲良、煌が四季彩と共に舞い戻ったのとほぼ同時であった。
次回 相関図①五芒星と配置陣形




