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 終18、お帰り神ちゃん! 黄金の地に降り立った美少女

 真っ暗な宇宙を高速で目的地へと向かっているような感覚であった。

 しかし瞬く星も惑星の姿もない。だだっ広くも感じるし歩行用の狭いトンネルとも思わせる長い超空間としか言いようがなかった。


 咲良は煌に手を引かれ時速何キロかもわからないスピードでぐんぐんと進む彼女にしがみつくしかなかった。

 やがて開けた場所に辿り着くと暗闇の中、視線の先に1ヶ所だけ明るく光る場所が確認できた。



「いい? 四季彩神無は今、自分の中に入り込んだ悪の権化と必死に戦っているの。貴方達の声が届いていなかったわけじゃないの。あれを見て」


 煌はそう言うと光の中に四季彩が居ることを示唆した。


「あっ! 神ちゃん!」


 四季彩は目を閉じて両手を広げ、何か呪文でも呟くような素振りを始め、そうこうしているうちに悪魔や妖怪が四季彩の回りを取り囲み、今にも飲み込まれそうな劣勢に立たされた。


「た、助けなきゃ! このままじゃ神ちゃんが危ないよぉ」


 咲良のすがり付きに煌はあくまでも冷静に事の成り行きを見守るよう踏み留まらせるとこう言った。


「私達は()()()()に来たの。()()に来たわけじゃないのよ。あの娘が自分で打ち勝つ勇気と力を得るための、いわばこれは試練なの」


 咲良はもう一度何か言いかけたが唇を真一文字に結ぶと四季彩を見守った。


「そう。それでいいのよ。きっと大丈夫だから」


 咲良は一言だけ声を張り上げて叫んでからまた見守る体勢に入る。


「神ちゃん! 皆で一緒に平和を取り戻そう!! そしたら……」



(その声だけで充分なのよ。あの娘には)


 煌は心の中で呟いたが、決して口には出さなかった。

 深層空間には四季彩の苦痛と邪悪な意思が妖魔へと姿を変え、希望と理想が彼女を守るようにし、絶えずレーザーを打ち合うかのような激しい攻防となっていたが、煌と咲良の居る場所までは被害が及ばず、あくまでも四季彩の周辺だけでそれは行われていた。



 遠い記憶の断片が常に四季彩の脳裏を(よぎ)り、美しい故郷の風景と懸命に生きる人々の笑顔が去来していく。

 その忘却の彼方で圧倒的に大きく、閃光のように輝く存在。

 それは他でもない鍛冶ガールのメンバーの笑顔と強い意意思に他ならない。



「私はあの方達と共に誰もが笑顔を絶やさない世の中を作りたい!」


 長いものに巻かれることはきっと楽であろう。

 迫り来る絶望に身を委ねるだけならなお一層のこと。

 しかしそれでは人が生きている証にはならない。

 広大な宇宙と気の遠くなるような膨大な時間の流れの中で一人の人間の一生など一瞬であろう。



「それでも私はあの()達と共に誰もが笑顔を絶やさない世の中を作りたい! 守りたい!」


 微笑んだ金龍・煌は闇夜を照らすように、


「それでも人の生きる証明を刻むために一命を賭して守りたいモノがあるならば、立ち上がり胸に秘めたる正義の矛を取りたまえよ!」


(私にはそんな力は…………)


「ある! 自分を信じなさい。自分を信じられない人間に何ができようかっ」



 その激しい言葉に胸を突き刺された四季彩はどこからともなく出現してくる無限大の光をその胸に凝集し始めた。


「はじまるわよ。6番目の巫女の力が解き放たれる時よ!」


 全てを闇に拐うかに見えた暗黒の幻影達は強く黄金に輝く霊気に欠き消されるように消滅していく。


「今、この胸に力よ宿れ! 正義の矛よ、我が手に!!」


 その瞬間、漆黒の腕輪はキラリと発色したかと思ったら金色の腕輪に変色し、埋め込まれていた宝玉から豪壮な矛が現れ、四季彩の手にガッチリと握られた。


 登る朝日のように、爛々と輝き仁王立ちの体勢から矛を構えた四季彩は暗黒世界を斬り裂くように必殺の一撃を放った。


「闇よ退け! 大地鳴動(だいちめいどう)金剛五月雨突(こんごうさみだれづき)!!」



 超超高速の突きの連打は、その度に大小様々な光の円を作り、闇を吹き飛ばし、四季彩の深層心理に豊かな大地を甦らせた。

 それは四季彩の優しくも慈愛に満ちた心そのものであった。


「やったぁ! 神ちゃん! 凄い必殺技!!」

「素晴らしい」

「咲良? それに貴方は?」


 四季彩は見慣れぬ貴女に近付くと少し間をおいてから悟ったように頷きをくれ、


「貴方ですね? 私を暗闇の底から助けて下さったのは!」


 目を閉じて首を横に振った煌は、


「いいえ、あなた自身の力と、ここにいる咲良の強い気持ちの賜物よ」


 それを聞いた四季彩は寄り添うように咲良との再会を喜び合った。

 今ここに6番目の巫女が誕生。

 その使命は唯一つ、無縁の野望を止め、平和な世に再び戻すこと。


(咲良と言ったか、この娘……唯者ではない。巌鉄様は気付いておられたのか?)


 ふと疑問を抱いた煌であったが、地上が気がかりであったこともあり、急ぎ戻るように二人を促すと行きとは違い空間を切断すると吸い込まれるように入り込んで行った。


「帰りはスキップするんだね! 行くよ、神ちゃん!!」

「スキップ? えぇ! 行きましょう! 迷惑をかけた分の働きはしなければ」



 三人は一足飛びに大地へ帰還を果たすのであった。




 次回 終19、龍神の力を宿しは月下の天使、鍛冶ガールなり!

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