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第一章 9、書!書!

 まことは青貝(あおがい)文箱(ふばこ)を引き寄せると、そっと開けてみた。すると中には年期のはいった古い本が2冊入っていた。


「?! …………これは?」

「一方は我が家に代々伝わる()()()()じゃ。(ページ)をめくってみなさい」


 まことは言われるがままに、その秘伝乃書といわれる古書を開いてみた。


  (??!)


 めくってもめくって何も書かれてはいなかった。


「何も書かれてない…………」


 まことは(いぶか)しがった。

 巌鉄斉は、秘伝乃書はどういうわけか、その時々の当主にしか読めぬように細工されとるようなのだと種を明かし、山吉が身を乗り出して巌鉄斉ならば何が書かれているのか読めるのですかと訊ねた。



「左様、ワシにはくっきりと文字が見えるし、ハッキリと読むこともできる」

「なんて書かれているのですか? 巌鉄斉様」


 恥らいなど何するものぞと四つん這いに巌鉄斉ににじり寄る姫子が性急(せいきゅう)に内容を問い、巌鉄斉はひとつ咳払いをすると読み出した。



 内容はこうだ。


 天文十七年、災い(きた)る。


 十八代目の時代より神に選ばれし五人の巫女を(つか)わすべし。


 遠くない未来にて、輪廻の首飾りを携えた使者が迎えに現れるであろう。


 ()()並びに()()を使い、五つのいやりんぐといわれる根付を作るべし。


 根付の真の姿が見える者こそ、神に選ばれし五人の巫女てある。




 と、まるで予言の書のような内容であった。


 まことはイヤリング作製に使った手鎚(てづち)()()がそんな特別な物であったことに驚きを隠せなかった。



 巌鉄斉は先祖代々受け継がれて来た神器と神鐵(しんてつ)がそれであり、自らが作製してもよかったのだが、筋の良い孫娘に試しに作らせてみたのだと述懐した。


 そして己の直感通り、まことも巫女の1人なのだと確信したのだという。



「そんな裏があったのね! でも綺麗よね、白銀の火花なんて」

「白銀? 私には緑色の火花に見えるんだけど」


 2人は見える色の違いにまたしても驚いていたが、柊一はそこに何か秘密があるのではないかと祖父と話し合い、秘伝乃書にはそのような記述はないとだけ述べて、その謎もいずれは解けるのではないかと涼しげに言葉をつづった。




「整理すると巌鉄斉殿はその秘伝乃書に書かれてある通りに、いやりんぐなる物をまこと殿に作らせ、今のところ我々が探し求める巫女が2人見つかった。とそういうことですかな?」


「いいえ、実はもう2人(すで)に見つけているんです」

「一応ね」


 まことが答えると、栞菜が付け足す。

 その言葉に巫女探しが難航していた姫子と山吉は光明(こうみょう)を見い出したかのように喜び合い、姫子は言った。


「残るはあと一人ですね!」



 まことは喉まででかかった言葉を飲み込むと、もう一冊の古書は何なのかと巌鉄斉と柊一に質問し、それに関しては柊一が答えた。

 秘伝乃書の予言めいた記述を祖父から聞いた柊一は、ふと思い出した事があって倉をくまなく探して見つけたのが、この本だという。



 表紙には三条伝記と題されていて、執筆者は()としか書かれていない謎の古書。

 柊一は祖父の指示で、祖父の古くからの友人にして地元一番の知識を有する権爺(ごんじい)萬屋(よろずや)と協力をして、その本の解読と、三条の隅々を鋭意(えいい)調査中なのだという。


 萬屋は地域の活性化に貢献したり、今回のように依頼された事案について調査したりする団体の事だと何故か誇らしげに最後に付け加えたのは柊一である。



 しかし、さすがに何百年も前の書物であるが故に、素人同然のメンツでは解読作業は難航を極めたが、現時点で解っているのは、細かな地震の記載と、災いの類は大蛇の仕業ではないことが判明。

 選ばれし巫女の他に()()と呼ばれる神々の協力があったということだけは解析していた。



「そういうことじゃ。柊一はこれより山吉殿と姫子殿に協力を願い、権爺(ごんじい)と供に、この三条伝記の解読を急いでもらいたい」



 必ずと言っていいほど、クラスに一人はいそうな活発な女子生徒のように、元気よく手を上げて参加を希望する栞菜。

 そして快く解読を引き受ける山吉に姫子。


「お祖父様、私も!」

「そなたには重要な役割があるわい!」



 そして身を乗り出して名乗りを上げたまことに、巌鉄斉はそう言って今度は桐の箱を出してきて、まことに箱を開くよう(うなが)すのであった。




 次回 10、3色の輝きは絆となりけり


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