終13、最後の柱、轟沈! 咲良と影虎 TRUE LOVE
心配事を茜に託した咲良は迷いを振り払い、赤き柱を見上げていた。
爆発寸前の影虎は灼熱の気を放出し、壮大な炎龍へと姿を変えた。
神々の中でも特別な存在である神龍族、そしてその龍族の中で最も強大な力を有する八龍神の一人である影虎は、流石に他の五柱神とは桁違いの霊力を持っている。
噴火したマグマのように雲がかかった夜空へと昇ると、空と大地とを真っ赤に染め上げた。
痺れを切らしていたのはなにも巌鉄斉だけではない。
今や四季彩は自分の直属の部下でもあるのだ。影虎もまた部下の窮地を救いたいと思っていたに違いない。
全ての感情をぶつけるかのように、影虎の大音声と必殺の一撃は柱へ向けて発せられた。
「行くぞっ! 爆火大斬刀!!」
炎神・影虎がその巨大な口から出した火炎放射の数万倍の灼熱の炎は超ド級の日本刀へと形を変え、柱を両断した。
地中へと沈めるための作戦であるにも関わらず両断したのだ。
見ている人々は騒然となっていた。
「すーさん! あの赤い龍さん勘違いしてるんじゃね!? 柱を切ってどうすんだよ!?」
慌てたリュウは身長と体重と腹回りが同じ数値の猫型ロボットのような見た目ですーさんに問い掛けた。
しかし気を送る行為を怠らず、その動きに注視していたすーさんは答えない。
「いやいや、名だたる神様じゃ。きっと我らには及ばぬ考えがあるのじゃろうて」
そう言って代わりに村上館長が答える。
「我々もお尻がキュートな咲良ちゃんへ届くように精一杯気を送りましょう!」
セクハラ中年男と優等生が同居したような台詞を吐いたのはナカさんだ。
リュウもそれからは黙って集中したし、他の組にも負けない団結力で万の気を送り続けた。
黙りを決め込んでいたすーさんはいったい何を考えていたのか。
「あの龍、カッコいいな……これは使える!」
まったくもって場違いな妄想をしていたことはその場に居合わせた人々には理解不能であった。
「行っくよぉ! 影虎っ」
タイミングを見図って咲良が声を張り上げて爆煙と共にふらりと空に躍り出ると渾身の一撃をみまう。
「えぇいっ! 煉獄炎舞!」
数個に切り刻まれた柱の根元へと炸裂させた咲良の技を見て笑みを浮かべた影虎は、間髪入れず己もまた第二撃を繰り出した。
「沈めよっ! 龍炎爪牙!」
燃え盛る釜から出したような鋼鉄の爪を神速の手裏剣のように放ち、最後に牙の形をした特製の火球をぶつけた。
大地が裂けるかのように割れていき、バラバラにされた柱は蟻地獄へ吸い込まれるように地中へと沈んでいく。
「咲良!」
愛する恋人を呼ぶような、温かくも信頼感の詰まった呼び方で彼女を振り見た影虎へ、これまた最愛の人と共鳴するように咲良も答える。
「最後にこれを受けとってよねぇ!」
夜空に深紅の巨大ハンマーが現れ、裂けた大地を修復するような連打を施した。
スゴゴゴゴゴォと唸りを上げ、大地の裂け目はきれいさっぱりとなくなり、代わりにピンク色をした光が二本。天空と姫子がいる青き柱の元へと迸った。
ここに光の五芒星は完成された。
その星は神聖にして荘厳な光を宿し、妖魔全ての邪気を払いのけ、地下に居座る黒龍・無縁の力を抑え込み始めた。
「よし、成功じゃ! よくやったぞ、咲良! なかなかの技であったな」
ごくごく自然と咲良の震える肩を支えた影虎は体力の消耗激しい彼女を優しく包容した。
「こ、これで無縁の力を抑えられるんだよね!? どうしよう、一回あたし達も神ちゃんのところへ行ってみない?」
(こやつは……満身創痍でありながら、それでも仲間を思いやるか…………)
そう思った影虎であったが、当面この場に用事はなくなった。
だとすれば巌鉄斉の次の準備が整うまでは猶予が出来たことになる。
「よし、掴まれ! 俺の背中に乗せてやろう」
そう言って再び龍に変化しようとした影虎の首もとをグイッと引っ張ったのは咲良だ。
「な、何をする!?」
接吻でも期待したのか影虎はジタバタとしたが、首もとに付いたゴミでも取るような仕草の咲良はこう言った。
「なにこれ? 龍の鱗?!」
咲良が異物と思って影虎の首もとから採取したそれは、まさに龍の鱗のようだった。実際よく見てみると形は火のようにうねり、その模様の中にはメラメラと炎が猛っている。
「珍しい! レアアイテムだ! 貰っとこ、あたし」
勝手にくすねられては持ち主の影虎に返却希望の余地はなく、そのままプレゼントでも渡した気分に浸った。
龍の鱗を胸に張り付けた咲良は小学生が防衛隊のバッジでもしたかのような満面の笑みを見せた。
「どう? 似合う? カッコいいっしょ!」
つくづく敵わぬと思った影虎はささやかな丘陵を作る胸に鱗を設置した咲良を見てフフっと笑った。
「よし! 神ちゃんのところへ急ごう!」
準備を整えた咲良は眉を吊り上げて影虎に催促した。
と、まさにその時であった。
無縁の力を抑え込むと同時に、妖魔の類いから内側を守る結界としても機能し始めた五芒星の円の中で、突如として真っ黒な柱が出現した。
「な、何あれ!?」
その問いに答える変わりに先程まで微笑みよろしく咲良を背負っていた影虎もまた驚きを隠せない表情で魔界から立ち上るかの如きその漆黒の柱を見詰めていた。
「四季彩隊のいる場所で何事か異変が起きている! 急ぐぞ、咲良」
コクりと頷きをくれた咲良は再度変化した影虎のカチコチの背に乗ると急行していくのであった。
次回 終14、四季彩陥落! 謀略の無縁




