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 終12、最後の柱! 咲良と影虎の痴話喧嘩

「よいか、これよりこの作戦の(きも)を説明する。姫子、栞菜、茜、まこと、そして咲良の順番で五柱神と協力し、それぞれの柱を地中深くに沈めてもらいたい」



 巌鉄斉の説明を咲良は思い出していた。



「そなたらと神々の力を凝縮した柱群が地下でその蓄えた属性の力を駆使し、黒龍・無縁の能力を弱めるのじゃ」


 その場を彩る美少女の面々が理解したか目を見ながらも巌鉄斉は続ける。

 そして半紙に図面を施して囲炉裏に刺してあった鉄箸(てつばし)を一本抜くと順番になぞる。

 完成形は五芒星であった。



「無縁の力を弱めることに成功したらば、お前達は全員五芒星の軌跡を描いた中心部に急行! そこで改めて五人全員の力を一つにし、ワシが溜め込んだ神通力とで地下に居座る無縁の封印に入る!」


「封印??」

「そうじゃ! 弱ったといっても八竜神が一人! 完璧に消し去ることなど元々出来はしない。今回はこの世の霊脈を吸収し尽くした奴の力を弱め、封印することで元の世界に戻す! よいな?」


 鍛冶ガールと五柱神は己に課せられた重大な役割を再度理解した。


「しかし、奴も指をくわえて見ているはずはない! そこでじゃ。奴が何らかの方法で我らの行動を阻止せんと動き出したところを長尾軍の出番じゃ! そなたらの武勇に期待しておる!」

『御意!!』



 山吉、柿崎、小島、それに嵐蔵は片膝ついて勇猛果敢(ゆうもうかかん)な気合いで声を張り上げた。

 長い長い作戦会議のあと、四季彩の姿を見つけた咲良は彼女を呼び止め、お互い頑張ろうと手を握った。


(!??)


 咲良は四季彩の冷凍保存されていたかのような手の冷たさに気付くと、驚いて顔を見た。

 恐ろしく血色を失くした四季彩の表情は冴えず、虚ろに返事をするばかりであった。


 一抹の不安が頭を(よぎ)る咲良は、


「大丈夫かなぁ? 神ちゃん…………」


 と、まだ手に残る冷たい感触を思い出した。



 追憶から戻った咲良は、自慢の鎧具足に身を包んで竜口を地面に突き刺し、この時代では珍しいマントをはためかせて腕組みをする希代の英雄、長尾影虎に相談してみようと思った。

 それは丁度まことがその任を終えたところでだった。


「なにっ!? 四季彩が気になるから一度様子を見に行ってみたいだと!? 」


 影虎は端正な顔を三枚目に崩して咲良に聞き返すと、即座に却下した。


「ならんっ! 今ワシらが第一にせねばならぬ事はこの赤き柱を地中に沈めることにある! そなたも知っているであろうが」


 しかし依然として不安を払拭できず、迷子の仔猫のような顔をした咲良はうつ向き加減ながら口を尖らせて言った。


「影虎のバカ……」

「なっ……。なんだとっ?」


 満天のイルミネーションの中、まさかの口論を始めてしまった付き合いたての初心(うぶ)な恋人同士が顔を反らしたその場に、まことが放った浅緑の光が届いた。


 なかなか行動に移さない2人に痺れを切らしたか、巌鉄斉がテレパシーで催促を始めた。


(こらっ! おぬしらは何をしておるか!? 早う段取り通りせぬかっ)


 影虎は苛ついた顔で、あと一線を描けば五芒星が完成となる、その中心地を睨み付けると言った。



(咲良の阿呆が四季彩が気になって様子を見に行きたいとほざくのじゃっ)

(な、なんじゃとっ!? ええい影虎! 咲良の手を握れ! ワシが直接バカ娘を説得するっ)


 作戦も半ばまで順調にきていたのに、最後の、しかも鍛冶ガールの代表者たる咲良でつまずくとは思ってもいなかった巌鉄斉は誰よりも焦っていた。

 黒龍・無縁の実力を知っているのはこの白眉の老人だけである。



 こんな時でも少し躊躇(ためら)いをみせつつ、ぶっきらぼうな男がショートカットの美少女の手を握る一連の動作にさえ苛々した。


(これっ咲良! 早うせんかっ! 長尾軍が限界にきておる。このままでは何時何処から突破されるかわからぬっ)


 しかしその悲痛な訴えにも一度決めたらテコでも動かぬといった徹底抗戦の構えの咲良は反論した。


「だってこのままじゃ神ちゃんが心配で集中できないんだもんっ! 放っておくと後で取り返しのつかないことになる気がするんだよぉ」


 しかしこの時の影虎と巌鉄斉には咲良が感じる言い知れぬ不安を知りうる術もなく、


(このワガママ娘がっ! よし、では最も近い茜と天子に四季彩の様子を見に行ってもらう! じゃからそなたらは赤き柱に集中しろっ)


(茜…………そうか! 茜なら分かってくれるはずだよね!)


 咲良は親友、茜の存在を脳裏に浮かべると人が変わったかのように巌鉄斉の申し入れを受け入れた。

 まるで美味なマグロでも与えられたノラ猫のように。


(よしよし、いい子じゃ! まったく世話が焼けるバカ娘じゃわい……)

「ちょっと!? 聞こえてるんですけどぉ!?」

(なにっ!? 早く致せ! さっさとその手を離さぬかっ)


「チッ、うるさいジジィだ……」


 ちょっと名残惜しそうにパッと手を離した影虎は、仲直りした意中の人の肩を抱くと、


「いい方法がある! 聞きたいか?」

「なになにっ?!」

「ワシらがさっさとこの柱を片付けてしまえば四季彩の元へいち早く向かえると思わぬか?」



 落ち着きを取り戻した咲良は即答で言ったものだ。


「影虎、それ名案! さっさとやっちゃいましょ!」

(だから早く済まそうと言ったではないかっ!)


 と、意気込む咲良を見て、聞き耳を立てていないと気付かぬ程度の溜め息と、最速の突っ込みを心中で済ました影虎は紅蓮の炎を焚き始めるのであった。




(天子、天子ちゃん? あれ? 応答せんぞ。おーい! 天ちゃんやーい! …………起きろぉ! こんがっきゃー!!)

「ほぇ!? んっ? んっ? ふぁ~ああぁ」


 茜の膝の上でお昼寝中だった天子は巌鉄斉の切羽詰まったテレパシーを目覚まし時計のように思ったのか、そろそろ起きる時間なのだと一人納得し、腕をえいやあと伸びをした。


 急に起きた天子を茜と軍司は何事かといった面持ちで見詰めていた。

 伸びをした後、じーーっと微動だにしなかった天子は急に立ち上がり、天馬へと変化すると2人を促した。


「お姉ちゃん、チャンバラ、乗って! 急いで四季姉ちゃんの所へ行くよ!」


 予想だにしていなかった天子の一言に顔を合わせた2人は、


「なんだかわからないけど、行きましょ!」

「お、おう! なんなんだいったい……」

「理由は道中するから! ねっ!」



 咲良の変わりに四季彩救命の任を受けた3人は四季彩隊が闘う地へと空を駈けるのであった。



 次回 終13、最後の柱! 咲良と影虎、TRUE LOVE

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