終11、魅惑天使降臨! まことと天狗のウインドアンサンブル
まことは全身に3つの重なりあった光を浴びると、着ている薄茶の作務衣が黄金に輝いた。
彼女が目的を果たせば咲良を残すのみとなり、それぞれが一部の隙もない連携で見事に役目を終え、おそらくは次の緑の柱へ注目していることであろう。
(急がないと……)
まことは両脇で戦う陣営を見て焦りを感じていたのだ。
開戦当初は勢いに乗じて長尾軍の優勢のまま進むかと思われた人間対妖魔の戦いは、漆黒の闇から延々と増え続ける妖怪と異形の悪魔に少しずつ押され始め、ジリジリと後退の憂き目にあっていたからに他ならない。
そんな焦るまことを背に、鬼の形相で柱を睨み付ける天狗はいつもは背中に差している大きな芭蕉扇を手に持ち、仁王立ちしていた。
「いよいよ、まことちゃんの出番ね! 待ちくたびれましたわぁ」
令和緑組の白石委員長は疲れを見せるどころか俄然やる気を出し、仲間を叱咤激励、鼓舞した。
「ゴッツさん! 皆の気を一点に集中して送りましょう!」
白石の提案に萬屋の副代表にして頭脳明晰なゴッツ氏は手慣れてきた動作に応用を効かせればそれは可能であり、より効率的でさらに力が増幅するとの計算を頭の中の算盤を弾いて瞬時に導き出した。
「やりましょう!」
ゴッツ氏の言葉に準備万端とばかりに控えめな性格のマルと、真逆なファンキーモンキー・ヒデは構えた。
「ゴッツ、準備はオッケー! いつでもどうぞ!」
「ゴッツー! やろうぜ! 俺達の天使を援護するぜ!」
マルとヒデの催促にゴッツはホログラムに浮かび上がったかのような絶世の美女、まことを見詰めると突然叫んだ。
「我々はこれから魅惑天使・まことのために力を結集し、解き放つ!! 皆の力を俺に集めてくだされ!」
「な、なんかスイッチが入った!?」
「みわくてんし? 車かよ! ゴッツ!」
ヒデはケタケタ小猿のように笑い転げたが、白石委員長に首根っこをつかまれ捕獲された。
「まことちゃんにピッタリですわ! あの作務衣も色を変えてまるで天から降り立った聖女のようじゃない!」
と、まとまった所で、多くの想いを込めた贈り物を1つの箱に詰め込んだかのように魅惑天使・まことへと空輸していくのであった。
「行くぞ! 令和とやらから絶大な力が送られてきておる!」
芭蕉扇を一度はためかせた天狗は、風の力を自由自在に操り、モンスーンのように柱に集中させた。
そして次の瞬間、長い一本歯の下駄で大地を蹴って空に舞い上がると一回転してピタッと止まった。
「むむむむむむむむぅぅぅ……爆風芭蕉扇!!!!」
天狗の肢体は一瞬にして筋骨粒々となり両手で持った芭蕉扇を体を前後に大きく揺らして全身で仰いだ。
いや仰いだというか打ち付けるような仕草であったか、芭蕉扇から生まれた深緑の風は鎌鼬のように鋭く幾度となくドドドッとマシンガンのように柱を狙撃した。
破壊するかのような衝撃は確実に柱を地面へと押し込んでいた。
「今じゃ! 渾身の一撃をおみまいしてやれ!」
「はいっ!」
凛々しく返事をしたまことは、ゆっくりと上昇し月下に舞い降りた文字通り天使のような佇まいで、慈愛に満ちた気を内から溢れさせた。
「いくわよっ! 烈空真波・神風っ!!」
全力を込めたまことの一撃は天狗の鎌鼬により、地表にめり込みはじめていた柱は、さらに奥深くへと轟音を立てて沈んでいく。
まことは自身の技と一対であるかの如く流れるような美しい舞いで、腰から黒鐵を抜き放つと背中にエメラルドの翼を生み出し発光した。
見事なまでに完成された魅惑の天使は満月を後光に変え、その姿とアンバランスな神器を両手で絞るように握り巨大化させた。
「行けぇーー!!」
音速を飛び越え、マッハのスピードで柱の最上部にロックオンした天使は、巨大な鉄鎚を振り下ろした。
ピカリと光った接点は今度は音もなく消え行き、地中のものとなった。
同時に浅緑のレーザーは最後のゴールへとまっしぐらに向かっていったのであった。
「見事じゃ……。まこと」
見た目通り年老いた天狗はもはや身動きが出来ないほど身体を酷使していた。
まことは世界の救世主のような荘厳な出で立ちで師でもある天狗に駆け寄り、上半身だけを抱き上げると光をなぞるようにして咲良がいる赤き柱方面を見詰めた。
「あとは頼んだわよ……咲良」
聖なる五芒星はその形をほぼ露にすると機械が稼働し始めるかのように静かにその効力を発揮し始めていた。
「ムフフッ。それで我を縛るつもりか。そろそろこちらも姫を使うとするか。はっはっはっはっはっ」
鍛冶ガールらの奮闘を頭上に、黒龍・無縁の不気味な笑いが地中深くでこだまする。
彼方から来る希望の光を待ち続けていた咲良だったが、気になることが1つあった。それは押され始めた長尾の軍勢は少しずつ後退するしかなく、突破されるのは時間の問題であったことだ。
中でも開戦当初から動きが緩慢な四季彩隊の動きが気になる。
しかし残り1つとなった柱を段取り通りに地中へと沈めることが出来れば劣勢は覆ると自分に何度も言い聞かせているはずの咲良であったが、何故か四季彩のことが頭から離れなかった。
時折四季彩の背に暗黒の影が見えたり、優しい笑顔の彼女が突如として阿修羅の面でも被ったかのような顔に見えたりしたからだ。
そんな咲良は巌鉄斉が鍛冶ガールに言った言葉をもう一度思い出すのであった。
次回 終12、最後の柱! 咲良と影虎の痴話喧嘩




