終9、本気と書いてマジと読むってぇのはこういうことを言うのよ! 栞菜と千恵のトラストフラッシュ
微風が心地よくも柔らかな癒しの空間を作り出していた。
姫子と白夜の愛のシンフォニーは次の目的地、栞菜と千恵姉妹が控える銀柱へと届いた証であった。
栞菜は長くサラサラの髪をなびかせながら千恵と手を握り合い横目で笑い合った。
緊張しているはずだったが、今や全幅の信頼を寄せる千恵と一緒だと緊張さえ力に変えられる気がし、おもむろに手を離した千恵は言った。
「そろそろ始めましょうか」
艶のある色っぽい声でそう言うと白銀の狐へと変化し、柱の回りを始めはゆっくりと、そして徐々にスピードをあげて周回していき、最後には超高速で走り出した。
もちろん令和協力隊もアリーナ席で観戦中だ。
「おっ! いよいよ我らが暴れ姫のご登場かよ!」
両手を上げてさながら柔道有段者の構えのままでムッチはほくそ笑んだ。
「気合い充分て感じですね」
「うん。普段は物静かだった美少女がいよいよその能力を発揮させる時って感じだね」
柊一とカツは組を指揮しつつも、ついついネオ栞菜など様々なあだ名で呼ばれた少女に目がいった。
(ん? あの栞菜ちゃんの隣の女の人……似てる……)
タァクは変化前の千恵を見ると一瞬そう思ったが口には出さず、その代わりにこう言った。
「始まるんじゃない? 俺達も青組に負けないように気を送ろう!」
そのタァクの一言でさらに活気だつ銀組なのであった。
白銀の狐はもはや肉眼では確認することが出来ないくらいの、局地的な竜巻のように目まぐるしく回転していたが、突如として飛び跳ねると、
「コンッコーーーーーン!!」
と、甲高く鳴き、柱に目掛けて回転と同時に高めていた光の力を放出した。
「ははぁーー! 銀幕舞踏! 狐火乃術!!」
中空をさながら舞っているかのような千恵が放った光は、粒子砲顔負けの純銀の狐火となり、柱全体を銀色の炎に染め、メラメラと燃え盛った。
そのうち下部から崩れるかのように大地にめり込んでいくのが誰の目にも理解出来た。
「今よ! 栞菜!」
待ってましたとばかりに少し距離をおいて肩幅ほどに脚を開き集中していた栞菜は、腰に差した黒鐵を両手で握っていた。
それは神速の抜刀術でも展開させようとする体勢に見えたが、助走から狐のような弧を描きつつ跳躍し、両手に集めた光の力を一点に凝縮し放った。
「本気と書いてマジってぇのはねぇ! こういうことを言うのよっ! いけっ! 白銀閃光弾!!」
煌めく1つの流星が如きその球は、柱の中腹に見事命中すると、メラメラと燃え盛っていた柱はみるみるうちに大地へと浸透していった。
「そこで神器!」
何かの科目の教諭のような、手習いのお師匠様であるかのような的確な声に、一度着地した栞菜は歯をくいしばって再度ジャンプすると、目の前にまで降下してきていた銀柱の天辺を、千恵の思いを込めた黒鐵で目一杯打ち下した。
この時もまた姫子と同様、黒鐵は巨大化していたが、身体の一部のように使いこなしていた。
ゴゴゴォォォと凄まじい音をたてて柱は消え去った。
青き柱に続き、銀柱もまたその役目を果たすべく大地へと打ち込まれたのだ。
そして青き光りを反射するかのように、だが銀色の光りに変わった道標は間違いなく次の目的地、茜が待つ黄の柱へと向かっていた。
「はぁはぁはぁ……や、やったわね、お千恵さん……」
栞菜は重力とはこんなに重かったのかと思いつつも、大好きな姉を直視しながらそう言った。
千恵はいつの間にか狐の姿から戻っていて、お茶を振る舞うが如き凛とした正座で栞菜を見ると、自分達の第一の役目を終えたことを、いつもの哀愁漂う笑顔を振り撒きながら宣言しゆくのであった。
「やるなぁ栞菜! ん? あの女の人って……」
タァクと同じく、千恵の人間形態に終始したムッチは、まるで知り合いにでも会ったかのような顔をしていた。
それはカツも同様であり、萬屋の3人は顔を見合うと首を傾げて、またぞろ不思議そうに気狐・千恵を眺めた。
そんな3人を見て、柊一もまた訳もわからず千恵と栞菜に注視していくのであった。
小さい妹を引率するような仕草で栞菜からの合図を待っていた茜は、その時がきたのだと直感し、見事な脚線美をくまなく揉みほぐし、競技の前のような緊張感を漂わせる。
「姫ちゃんも栞菜も成功したわね。次は私の番ね!」
緊張をとき、溌剌とした表情をした茜は、自分の腰辺りの高さにある大きな頭を撫で回し、保育士のようにあやしていくのであった。
次回 終10、誰よりも何よりも高く飛べ! 茜と天子の電撃ライヴ




