終章3、パートナーと愛を語り合うか、はたまた断金の交わりか (前)
それぞれが別れてパートナー同士との会話となった。
すべてが無事終息した暁には鍛冶ガールは当然元の時代へと帰ることになる。
だとするとこの深い断金の交わりもそれまでということになる。
そんなことを考えながら縁側で栞菜と千恵は黄色くくすんだ空を見上ていた。
「あ、あのね。お千恵さん。わたし一人っ子でずっと姉さんが欲しかったの」
それを聞いて静かに笑んだ千恵は、視線を栞菜に移すと目を細めて栞菜の肩を優しく抱いた。
「私は栞菜を本当の妹のように思っているわ」
お互いそんな風に思ってはいても、口に出して確認したいことだってある。普段は大人ぶってはいるが、栞菜も多感な女子高生なのだ。
「嬉しいな! お千恵さんと出会えただけで、儲けもんよっ!」
明るく振る舞った栞菜であったが、別れの時を思うと複雑な気になり、言葉とは裏腹にその表情は曇った。
「栞菜、その神器をかしてごらんなさい」
栞菜は言われるがまま、黒鐵を手渡した。
千恵は小さい声で何事か呟きながら、自身の霊気を押し抱いた栞菜の黒鐵に自身の霊気を込めた。
「何してるの?」
「ふぅ~。今わたしの想いをあなたの黒鐵に吹き込んだから。お別れの時が来ても、わたしを思い出したくなったらいつでもその中にいるからね」
栞菜は返された黒鐵を大事そうに受けとると視線の先が曇った。
「…………ありがとう! これでいつでも一緒ね!!」
「えぇ!」
笑い合った姉妹はいつまでも空を見続けるのであった。
が、その前に栞菜はクルリと振り替えると眉を吊り上げた。
「ちょっと! 四季彩さん! 邪魔なんですけど!!」
なんと真後ろでは二人の会話が始まる前から四季彩が控えていて、まるで御用聞きのように何か申し付けらるれのを待っていたのだ。
「えっ!? 何故ですか? 私は皆さんのお世話を…………」
「うん。今いいから! あっち行け! 四季彩」
四季彩はしょんぼりと次の獲物を探す回遊魚のように旅に出た。
「姫子ね、今回の件が一段落したらね。やりたいことがあるんだぁ」
反対側の縁側では姫子と白夜の相思相愛組が目に見えるかのような熱々な火を灯し一時を過ごしていたのだが、四季彩にはそんなものは見えるはずもなく、また2人の後ろに忍者のように控えた。
当然話も耳に入る。
「なんだい? やりたいことって」
白夜はその涼しげな視線をちょこんと座る姫子に向けると、背後に控えだした四季彩の気配に気付き、振り返るとニッコリした。
「あのね、令和に行ってもっといろんな事を学びたいなって思ったの!」
「ほう。それは良いことだと僕は思うよ」
姫子は賛成の意を示した白夜を見上げるようにぶりっ子し、上目遣いの姫子に対して、涼しげではあるが白夜に熱い感情が迸った。
「と、これからは二人きりにして頂けませんか?」
少し冷徹な眼差しで四季彩を見た白夜はそう言った。
四季彩がいることを知らなかった姫子は先ほどからのデレデレをまさか人に見られているなんて思いも寄らなかったと、顔で下を向いて熟した林檎のような頬を隠した。
「白夜殿まで! わたしはお世話をですね……それにわたしもその令和とかって時代に興味ありますし、」
そこまで言いかけたところで林檎を収穫した姫子は四季彩を見て言った。
「四季彩さんも令和に興味があるんですね! そうですか。ハハ…………。その話は後でゆーっくりしましょう!」
姫子はニッコリとぶりっ子の天文代表としてそうは言ったが、目だけは笑ってはいなかった。
しかし空気を読むことを何処かに忘れてきたかのような四季彩は身を乗り出したが、姫子の真面目な顔での二人にして下さい。との言葉になにやら殺気だったものを感じ、四季彩は額に縦線でも作ったかのように、そそくさと下がっていった。
ようやっと二人きりになった恋人はいつまでも飽きず何事か話し込んでいくのであった。
しょんぼりとポツポツ歩く四季彩は次の獲物を求めて広い巌鉄屋敷を彷徨うのだ。
「皆さん仲がよろしいようで…………」
そんな四季彩に天使のハミングのような声がかかった。
「あっ! 四季彩さーん! こっちこっち!」
四季彩は枯れた花が生気を取り戻すが如く、その声のヌシに詰め寄ると咳き込んだ。
そこでは茜と天子と軍司が談笑していた。
「四季彩さん、なにやってんすか?」
「四季彩さんは色々と忙しいのよ! きっと」
「四季ねぇちゃんも混ざろう!」
(な、なんと素晴らしい方々でしょう!)
初めて触れたかのような人の温もりに感動する面持ちで元気いっぱい返事をして輪に入った。
「四季彩さんは何してたんですか?」
「えっ? わたしですか? わたしは皆さんのお世話を仰せ使ったので見回っていたのです」
「偉いなぁ。まぁ助さん、格さんも気が利いていい人達だけどさぁ」
「それで、あの……何か御用はありませんか!?」
急に言われた茜と軍司は首をひねって考えた。
「特にないわよ?」
「そんなことより四季ねぇちゃんも一緒に遊ぼうよ!」
「そうだぜ!」
何故か天子と共に軍司が張り切っている。
「ナハハ……いま天ちゃんに付き合っておままごとしてるの」
茜は苦笑いだったが、まんざらでもない風だ。
どうやら自分でも気付かぬうちに母性が目覚めたのか。
「はいおっとう! ご飯だよー」
「よーし、食うぞー!」
天子と軍司はエアーで朝食だか晩餐だかを食べるふりをした。
おそらく軍司が張り切っているのはかりそめでも茜と夫婦を演じられるからだろう。
「ほぅら~茜も早く食べなさいよぉ!」
「えっ? ちょっと待てよ! 俺がおっとうでおっかぁは誰なんだよ?!」
聴取された天子は当然の如く答える。
「アタイに決まってんじゃん! ボンクラ剣士」
「な、なんでだよぉ! そこは茜だろ!?」
「ナハハ……こんな感じなんです……」
茜は真面目そうな四季彩に遠回しに無理して加わらなくていい旨を伝えたが、瞳を輝かせた四季彩は大手をふって参入した。
「はーい、天子おっかさんやーい! 新鮮な野菜を持って来ただぁよぉ~!」
「あん?」
「えっ……四季彩さん何の役??」
「えっ? わたしは野菜売りの商売人ですが、なにか?」
(そんな役、ままごとにねーよ!)
と、軍司は心で突っ込んだが声には出さなかった。
「め、珍しい配役だね」
「そうですか? わたしは菜園が大好きで、それが縁で領主の娘でありながら百姓衆と毎日のように畠や田圃を耕していましたので」
「へぇ~変わった姫さんなんだなぁ」
「だけど素晴らしいことじゃない!」
「ありがとうございます! ですので土をいじれば荒れた土地かどうか判断も出来ますし、あっそれで影虎様にもお願いしたんです」
「なにをー??」
エアー調理に夢中な天子が興味なさげに話に入った。
「この一件が無事解決の暁には戦働きを引き、作物を育てる仕事がしたいと。この土地は上手く育てれば新鮮で瑞々しい野菜や花なんかが沢山収穫できると思うんですよ!」
「へぇー四季彩さんは土のスペシャリストなわけね」
「見掛けによらねぇなぁ」
「こらー!! おっとうも茜も早く食べなさーい!!」
脇をダンゴムシのような妖怪が大名行列しているのを捕まえた天子はそう叫び両手をバタつかせた。
なんとも話は尽きないのであった。
次回 終4、パートナーと愛を語り合うか、はたまた断金の交わりか(後)




