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第三章 終、いざ! 天文へ! 勇気と希望を胸に秘め、美少女集団は行く!

 翌朝、清々しく準備を整えた鍛冶ガールは各組員と水杯(みずさかずき)を交わす思いで別れを惜しみつつも、しっかりとした足取りで本成寺は黒門に向かった。


 萬屋・ムッチが悔しさを滲ませて言った。


「俺達ももっと出来ることねぇのかよ!」


 しかし、その問いに答える者はなかった。

 皆、彼女らの不思議な力に引き寄せられるように集ったからだと感じているからこそだ。だからこそ、返事のない問いも黙っておさめるムッチだった。


 鍛冶ガールは誰ぞの力を使えば一足飛びに目的地に辿り付けるのに、何故か一応に寡黙に歩き続けた。

 景色を目に焼き付けるように。

 思い出を胸に刻み込むように。

 とにかく無言裏に歩き続けた。


 割れやすい卵のように、心の不安は何か固いものにあたりでもすれば破れさりそうだった。

 だが、それを支えるのが全ての出会いと思い出と知っているからこそ、一歩一歩を踏み締めていたに違いない。



 その最中、選挙カーから流れる拡声器の音、ウグイス嬢のように澄んだ声を咲良は発した。

 全員の鼓膜を破るような勢いで。


「ねぇ、昨日たのしかったぁぁ?」


 後ろ手に組んで前のめりになって全員を覗き込むように咲良はそう問いた。

 当たり前のように一致した意見はたのしかったである。

 咲良はそれを聞くと一瞬ニコッとし、後ろ手のままに先頭を歩き始めた。



「だけどさぁ昨日(過去)のたのしかった思い出ってこの先が続いてからこその思い出だよねぇ?」


 呑気に空を眺めながらの述懐に、他のメンバーは顔を見合い、同じく空を見上げてみる。

 咀嚼すれば極々当たり前な気もするが。


 異変の象徴ともいえるくすんだ空は、全てを諦めたくなるほどに人を沈ませ、最後には絶望感さえ思わせた。



「あたしは絶対に明日を切り開いて、絶対にまた戻ってくる! みんなと。だって、そうじゃなきゃあたしらの、出会いってなんだったの?? ってなっちゃうもん! 大切な出会いが思い出となるなら、それを無くさないように、消さないように絶えず前進しなくっちゃ…………」



 メンバーそれぞれは咲良の突然の吐露に視線の先が急に曇った。

 咲良の言葉は彼女らの代弁であり、真っ先の希望の光であったからだ。

 先頭を直歩(ひたある)く咲良を追い掛けて茜がスリーパーホールドに持ち込みゆく。


「おバカのくせに……! たまにはいいこと言うじゃない!」


 笑顔の目蓋(まぶた)にはうっすら涙が光った。


「くるしぃおぉ!!」


 続くように大声を張り上げ、拳を振り上げる栞菜。


「そ、それはわたしが言おうとしていたんだからねっ」


 ぷっーと勢いよく吹いたボデーガードの軍司は、笑顔でそれにツッコむ。 


「カンナム先輩も遅れをとることがあんのか!」


「やかましー! このチャンバラ小僧!!」

「フフッ久々に聞いたわ。そのあだ名」


 まことが鼻をすすりながら何年も前に見聞きしたかのようなやり取りにデジャブし、ぶりっぶりの姫子は立ち止まると、両目から玉の涙を製造しながら、しかし複式を用いて誰よりも大きな声で喚いた。


「みんな一緒にぃ、絶対に落着するんだからぁ!!」


 やがて後頭部に両手をなおも呑気に置いていた咲良は心の中でよしっと呟くと歩を止めた。

 一人ひとりに人差し指を突き出しながら目上の上司のように言ったものだ。



「ならばよしっ!」



 感動と団結の瞬間、それを軽くあしらわれ、一言で済まされた面々はそそくさと小走りし始めた咲良を取っ捕まえるように追い掛けるのであった。


 まことはそんな場面に出会(でくわ)し、やはり咲良がリーダーでよかったと胸を撫で下ろすのだあった。



 そしていつの間にか彼女達は手を繋いで黒門を目指して行くのであった。

 


 場面は怒涛(どとう)の最終局面へと向かうこととなる。



 次回 人物紹介③天文編

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