第三章 22、虫すだく頃、最高の思い出を!
市内放送を使い、たった今三条がおかれている現状を市民に伝え、強く協力を求めた鍛冶ガールらは力を使い果たし、2日間ほど身動きがとれなかった。
その間に運命の日は10月2日の満月の夜であると秘伝乃書をして知らされた令和協力隊は、その後も放送にて、その日に結集を求めるガイダンスを粘り強く続けた。
もっとも日付けの誤差を調整してのことである。
すーさんの発案で萬屋メンバーは、市内に向かう主要路にて集まって来るであろう市民を5ヶ所に点在する鎮地盤に振り分けるよう手分けした。
その案は功を奏し、決戦日まで続いた市民の集合をそつなく迎え入れることとなる。
つまりは令和の人々は各鎮地盤に満遍なく力を注ぐために平均的に人の割り振りをしたとゆうことである。
軍司の師匠にあたる剣士会・古城館の剣豪、長谷川も駆け付け、門弟衆数十名もその一翼をなす。
巌鉄斉と権爺はそれら集ったメンバーを各所の部隊のリーダーとし、意思の疎通と怠ることのない準備に奔走した。
最終的に萬屋メンバーも含めた布陣を下記に記すこととする。
赤の柱(咲良)……村上館長、すーさん、ナカさん、リュウ
黄の柱(茜)……お富、長谷川先生、ヒーさん、サト
青の柱(姫子)……権爺、ナオ、アダモ、ガワ
銀の柱(栞菜)……柊一、カツ、ムッチ、タァク
緑の柱……白石委員長、ゴッツ、マル、ヒデ
※軍司は天文へ同行のよし
回復した鍛冶ガールが天文へと戻るその前夜、先勝祈願の宴を打ったのは権爺、村上館長、長谷川先生となんと巌鉄斉であった。
ことの起こりは老人のただ酒を酌み交わしたいとゆう欲求からくるものであったが、緊張し張り詰めた心に僅かなゆとりを持たせるための一計だったのかもしれない。
指令室で盛大に行われたその宴は基本、割り振られた面子で車座になっての会となった。
「赤組、頼んだよ!!」
咲良の混じりけなしの鶯谷のような声と作務衣から延びる美脚と形のよいお尻を見ると、赤組と名付けられた面々は仄かに頬を紅く染めた。
「任せておけい! また鍛冶道場を開くためにもな!」
「いいですね! 咲良! それいい! ねぇ? ナカさん」
「たまらんですなぁ! すーさん! あ、いや。しかし、三条の歴史を守りましょう!」
「咲良ちゃん、今度俺の店にも遊びに着てねー!」
「リュウさん! 必ず!!」
「あらあら赤組だってぇ。茜ちゃん、うちらはどないすんの??」
「ちょ、お富さん酔いすぎ!」
「だぁってぇ! この名酒・越後乃五十嵐川が美味なんだものぉ」
「ハッハッハッ。ワシが持ち込んだ酒がそんなに旨いか!?」
「長谷川先生、確かにこれ旨い! ねぇヒーさん!」
「ウムウム。これはいい! サトも日本酒好きだべなぁ! それはそれとして。茜くん! 君もなんかないんかい? 黄組なんちゃら~って」
茜は驚いた表情で正座する股に両手を挟むような悩ましい格好でモジモジした。
「茜! バシッといったれや!」
軍司に発破をかけられ、意を決したかのごとく言った。
「黄組も負けずとが、頑張ろう!!」
『おう!!!!』
「いやはや愉快爽快! 赤も黄も盛り上がっとるわい!」
「さぁ姫子ちゃんも!」
「そうそう!」
笑顔でデレデレのガワとアダモが催促するようにぶりっ子を所望した。
姫子は笑顔と恥じらいを混ぜたような動作で上目遣いに2人を見ると、癒やしのボイスで問い掛けた。
「あ青組も頑張って下さいますかぁ?」
『もっちろん!!』
2人はメロメロと合いの手を打った。
そんな中、クールに酒を飲んでいたナオは、ぶりっ子全開の姫子に飲み物をすすめた。
「何ですか? この飲み物は??」
「えっ?! アンタグレープ知らないの?? そっか。姫子ちゃん、昔の人だっけ? 飲んでみてよ! 美味しいよ」
おずおずと一口飲んだ姫子は初めての炭酸に瞳をドングリのように丸くして、笑顔でナオを見て喜んだ。
その姿をまじまじ見詰めるナオは本音を漏らした。
「姫子ちゃん。俺のことお兄ちゃんって呼んで!」
「えっ? お、お兄ちゃん!」
急に立ち上がったナオは高らかに宣言した。
「青組頑張ろう!!」
『おう!!!!』
「あっあと、伝説の力水もあるよ!」
そんな盛り上りを横目に、頬を紅く染めた栞菜は借りてきた猫然とし、何故か緊張していた。
何故かとゆうと、この令和協力隊の中で屈指のイケメンである柊一とカツに挟まれていたからだ。
「栞菜ちゃんは博識で美人だよね!」
「はは……そんな……」
「うん。確かに清楚な美しさがあるよね、それに博識なの? 柊一くん」
「えぇ! うちの妹と仲がいんですが、本当に色々知ってるんですよ!」
「ふぅ~ん。知的で物静かで美人なんて栞菜ちゃんモテるでしょ?」
「あ、いやぁ……。そんなことは…………。はは」
イケメンに囲まれ、まるでいつもの調子が出ない栞菜だったが、ムッチの質問により急転することとなる。
「栞菜ちゃん戦国時代に行ったんろ? どうだった? あっちは」
栞菜は何かのスイッチがカチッと入ったかのように、急に目がすわり、べらべらと喋りだした。
「どうだったも何もないわ! あっちの世界の武将はそれはもう筋骨粒々! 己れが実力と主君への忠誠に命を燃やす精悍な漢達のドラマがあったわよ!」
「あれ? 俺、なんか地雷踏んだ?」
「おだまり! 中でも義将・影虎様は別格だったわ!」
立ち上がって時に語気を強め、時に憧れの表情で天井を見詰め、拳を握ったり両手を合わせて顔を緩めたりと。それは久しぶりに見る光景であった。
「これが噂のネオ栞菜ってやつ?」
タァクが小声で柊一に訪ねる。
「そうですね! トランスしてますね!」
「あれ? 俺、やっぱりなんか地雷ふんだ? 踏んだよね? 思いっきり!」
イケメン2人は栞菜をなだめようとイケボで接したが、それはネオ栞菜には通じるわけもなく。
「おだまり! なよなよしてないであなた達もあの武将達のようにシャキッとなさい! ティーム銀、追い付き追い越せぇ!」
『お、おう!!!!』
(やっぱ地雷踏んでる…………)
「繭子さんとお父さん、幸せになれるといいですね」
「えぇ。これからはあたくしもあれこれと世話を焼くつもりよ!」
「私も何かあったらいつでも力になりますから!」
「まことさんの協力に感謝しますわ!」
「あぁ妊婦さんの一件ですね? お二人共お優しいですな!」
ゴッツはぼそぼそと会話に入り込んだ。マルもヒデも今をときめく女子高生に夢中だ。
「萬屋の方々には今後もマルシェへの協力をお願いしますわ!」
「もちろんです! はい!」
「そうだ! 無事解決したら、三条マルシェと萬屋と鍛冶ガールのコラボで何か出来たらいいですよね!?」
まことの提案に白石委員長もゴッツも賛同し、早くも決戦後の話しに花が咲いた。
そして上気したかのようにまことは身振り手振りで鍛冶について熱弁を奮い始めた。その都度たわわなバストが大きく揺れ、美しいまことにマルもヒデもやっぱり夢中で見とれた。
「やっぱ萬屋はたまんねぇわぁ! ねぇマルさん!」
「確かに。やみつきですよ」
「まことさん! わたくし達も狼煙をあげましょう!」
「えぇ! 緑組! 他に負けずと頑張ろう!!」
『おう!!!!』
その全てを見渡し、名酒・越後乃五十嵐川をちびちびと飲んでいた巌鉄斉は相合を崩し、実に愉快そうに笑い続けるのであった。
庭にはメダカの桶群と草むらには秋にすだく虫達が無数の音色を奏でながら、自分達の生きている証を必至に示そうとしている。
(そうじゃ! 我々もあの虫達のように精一杯奏であげようではないか)
それは三条の未来を担う若者達への期待であり、老い先短い者にしかわからぬ矜持であったかもしれない。
その夜、宴は続いた。
いつの間にか夏は過ぎ、初秋の頃。
思い出はそれぞれに刻まれていくのであった。
次回 終、いざ! 天文! 勇気と希望を胸に秘め、美少女集団は行く!




