第三章 21、みんなの力をひとつに!
「へぇ~みんなどうしたのよ! その格好いい技は!」
屋上へとたどり着いた咲良は開口一番そう言うと、疲れきってへたっている3人をキラキラした瞳で見た。
「あたしも考えた技があるんだよねぇ」
不適な笑みを浮かべる咲良、それに一同を見渡すとため息混じりにまことが口を開いた。
「みんな遊びじゃないのよ! もう」
まことはほっぺを膨らましたが、栞菜は反論した。
「なによぉ、あんただってなんとかなんとかぁ~! とかって叫んで必殺技を考えていたくせに!」
秘密事項をばらされたまことは赤面し栞菜の悪態を遮った。
「う、うるさいわね! じゃあ次! 私がやるわ」
そう言うと、柔らかな風がまことを取り巻き、まことの髪、作務衣を優しく揺らすと浅緑の瞳はキリッと斜め45度上空を見上げた。
「いくわよ! 烈空真波・神風!」
心地よい風は突風となり、やがて竜巻となって緑に輝く柱に向かい、柱に溶け込むように一体化した。
「あるんじゃない! 名前。いいネーミング!」
「素敵な名前です!」
茜と姫子に称えられ、まことは力尽きながらも微笑した。
「あたしが最後ね。いっくよぉ!!」
大声を張り上げた咲良は踏ん張ると猛烈な炎を宿し、爛々と燃えるような目をして、最後の赤い柱を睨んだ。
「いっけぇぇっ! 煉獄炎舞!!」
灼熱の炎はとぐろを巻いて、あたかも巨大な火の龍を思わせるようにうねりながら赤い柱に激突した。
これで5人の力を各鎮地盤にチャージしたことになる。
咲良は皆と同様に力尽きそうだったが、歯を食いしばって放送室に舞い戻ると、荒い呼吸の中、全市民へと訴えた。
「こ、これが私達、鍛冶ガールが天文へ行って得た力!! この力は三条を守るために、日本を、そして世界を守るために……それぞれが、はぁはぁ……それぞれが必至で身に付けたの! だからみんなも協力して! あの柱を見ればわかるでしょ!? もうそんなに時間がないの!」
咲良は酸欠で今にも倒れそうだったが、最後に言った。
「ま、また平和になったら笑顔になれるよ! 必ず!!」
そう言うとニコッと笑い、ついに倒れてしまった。
権爺はそんな咲良を安静に寝かせるとマイクを持って言葉を結んだ。
「以上じゃ! 信じるか否かは一人一人その胸に聞いてくれぃ! じゃが、まだ年端のいかぬ少女らがこれだけ必至に、懸命に頑張っておるのも、一重にこの街、三条を愛しているからじゃ! 共に平和をこの手に取り戻そうぞ!!」
そう言うと願いを込めて放送停止のボタンを押した。
「なぁ今の聞いた? 天文? なによそれ」
「わかんねぇなぁ。鍛冶ガールだっけ? 頭おかしんじゃね!」
「けどどうする?」
「どうするって?」
「このまま見てるのかよ」
「うーん………」
「正義の味方だね! ママ!」
「そ、そうね。だったら協力しなきゃね」
「そうだね。家族全員で!」
「お父さん、聞こえた? あの鍛冶ガールの中に、昨日助けてくれた子がいるんだよ。なんだか勇気をくれる不思議な子だったのよ」
三条のあちらこちらでザワザワと騒ぐ声が聞こえてきそうだった。信じる者、あるいは不振を抱く者と様々だったが、とにかく賽は投げられたのだ。
立ち上がった者にしか見えない先があるとゆうことか。
「市からの放送は以上のようです! 新田さぁん!」
「はーい! わかりましたぁ! それにしても大変なことになりましたよぉ? 先ほどの鍛冶ガールとゆう少女集団は先日、空を飛んでいたあの子達ですよねぇ? まずは井戸田教授! どう思われますか??」
「まったく不思議な現象が続くものです。私も帰って詳しく調べてみましたら、確かに天文時代にこの三条で大きな地震があったような記述が出てきましてねぇ…………専門家の私ですらやっと見つけた文献を十代の高校生が知る術はないはずなんですよ」
「だから奇跡の美少女なんですよ!」
「と言うと? 山口さん」
「あの光る柱にそれぞれ、美少女達が何か不思議な力を打ち込んだでしょう! あれこそが地震を沈める手段なんじゃないでしょうか?」
「うーん……にわかには信じがたいことの連続ですねぇ。疋田先生はどうでしょう?」
「あの蜃気楼の三条城だが……」
「ほう。あの蜃気楼ですね? ありましたねぇ今日も! なんだか昨日よりくっきりしたように私には見受けられましたが?」
「その通り! あれが実体化した姿をワシは見たいのぉ」
「それだけですか?」
「んん? ウム。それだけじゃ!」
「…………えぇ今日は始めに緊急事態宣言が出され、避難指示が出ている新潟県三条市からの中継でした! 信じられないことの連続ですが、今こんな状況下だからこそ、一人一人がよく考え、行動をしなければならないのかなぁと私、新田は考えます! それでは一旦CMです」
「なるほどね。すーさんが肩入れする気持ちがわかった気がするよ」
市街地が一望できる大崎山公園に勢揃いしていた萬屋メンバーは、参謀・カツの言葉に一様に頷くと拳を握って光る柱群を見詰め続けた。
「よし、俺達も一肌ぬぎますか!」
副代表ゴッツの言葉に動き出したメンバーは、ズシズシと山を降りて行くのであった。
その背中には夢とも読めるような萬の一字が刻まれていたのたが。
次回 22、虫すだく頃、最高の思い出を!




