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 第三章 6、叛乱党の曰くと、神々の対話

 鍛冶ガールらは現代での協力者を得るために一旦は令和へと戻って行った。

 それぞれがやらなければならないことが山積(さんせき)している。

 神々もまた大地が割れる勢いの天文にあって、鎮地盤(ちんじばん)を築き、未曾有(みぞうう)の危機にした三条地域を救うこととなったのだ。


 既に度重なる地震、それによる地盤沈下、幾日も続く日照りやらで三条地域一体が干上がり、家屋は軒並み倒壊し、田畑は枯れ果て、領民は見えない明日に不安な毎日を過ごしていた。



「あなたはもしや…………」

神龍族(しんりゅうぞく)の…………」


 そんな最中、今まさに気狐(きこ)・千恵と大蛇・白夜(びゃくや)が揃って初代・巌鉄斉(がんてつさい)の正体に迫ったその時だ。

 真の姿の片鱗(へんりん)を見せつつも、巌鉄斉は二人に向かって手を伸ばして制止した。



「むぉっほっほっ。そこまでじゃ! ワシの素性はどうでもよいことじゃ。まぁ()()()の一人と思ってくれればそれでよい」

「!? この巌()()がそんな最上級の神だったとは…………」


 影虎も驚いたが、他の神々に比べて、そこまで驚愕(きょうがく)はしていなかった。


(フン! ワシは龍に変化した時に薄々気付いておったわ。ワシと同類であると…………しかし神龍族とはいったい…………)


「では龍である影虎殿とも同族というわけか!?」


 巌鉄斉は天狗の質問に一度(うなず)くと、皆の意識を再度、鎮地盤に集中するようにと(うなが)した。


(かし)こくも、そなたら神々には今さらのこととは思うが、この五つを線で繋ぐと五芒星(ごぼうせい)となる。その中心に、この地域を奈落(ならく)の底に落とそうとする元凶がおる」


「元凶だと!?」


 天狗は鼻をヒクヒクさせて質問した。


「ウム。今から五年ほど前のことじゃ。突如()()は出現した。 瞬く間にこの地の霊脈(れいみゃく)を吸収し尽くし、現在はその蓄えた力を邪悪な妖気に変え、今まさに世界に向かって解き放とうとしておる」


「まるで仇敵(きゅうてき)みたいな(おっしゃ)りようですわね」

「まったくですね。そんな大それた存在が、この地を掌握(しょうあく)していたなんて…………」

「ワシにはまだわからぬことがあるぞ。巌じぃ答えぃ。なぜ()()()()なのじゃ?!」

「ウム。そこはこの影虎も気になるところだ」


  「あの娘らは()()な存在なのじゃ。神龍族たる、ワシの力を持ってしても解決出来ぬ今回の一件。ワシは全神通力を使い、この難題に立ち向かえる存在を探していたのじゃが、この時代に一人は見付かった。そして遥か未来、令和と呼ばれる時代に、なんと四人も存在していたのじゃ。そこはワシも驚いたがな」



 驚愕の表情となった神々を尻目に、少し間をおいて巌鉄斉はなおも語り始める。

 

「わかるか? 神々の(かなめ)たる神龍一族のワシでも解決できぬのだ。もちろんそなたらの五人の神の力を合わせたとて、到底それは変わらぬ。しかしあの娘らが加わることによって事態は変わるのじゃ。あの娘らはそれだけ絶大な力を秘めておる。ワシにはわかる」


「しかし、他の神龍族の力を結集されれば解決出来るのではありませんか? 神龍族でも最も力を持つといわれる八龍神(はちりゅうじん)が存在すると聞いたことがありますわ」


「流石に博識じゃの狐殿は。そうじゃ、神龍族を束ねているのが八龍神であり、かくいうワシもその一人じゃ。そしてその力を開花させたばかりの影虎もまた八龍神の一人ということになるがの」



 一同はまたぞろ驚きの表情で景虎を見詰めた。

 影虎が神龍族であることをそれぞれは何となく察してはいたが、まさかその中核をなす八龍神たる力を持っているとは誰も想像していなかったのだ。


「しかし、八龍神とは本来別々の時代を司る存在。ワシがこの時代であれば、他の時代には違う龍神が治めておるのだ」

「?! 既にこの時代には巌鉄斉殿と影虎殿がおられるではありませんか!」


「それはこの難題に立ち向かう為に元々強大な力を秘めていた影虎を、半ば無理矢理に覚醒させたのだ。少女らの力と土着の神々、そして影虎の力がどうしても必要でなぁ」


 巌鉄斉は神々にはきちんと理解してもらう必要があると思ったのか、質問にはとことん答える体勢で皆を見渡した。


「しかし、それほどまでに巨大な力を持ってこの時代を操ろうとする者とはいったい何者なのじゃ!?」


 天狗の質問に忌々(いまいま)しそうな表情となった巌鉄斉は吐き出すように言った。


「ヤツの名は黒龍・無縁(むえん)。昔からワシとは色々とな……因縁があるのじゃ。ヤツはどういうわけか、この時代に深く根を張り、全ての因果を覆そうとしておる!」


「おい、じじぃ! それではお前はナニ龍なんだっ!」

「黒と因縁があるといえば白に決まっておろうが! 白龍・巌鉄がワシの本当の名じゃ! …………とにかくヤツは今やその増幅した力を使い、叛乱党なる(ぞく)を操り、多方を荒らし回っておる。事は一刻の猶予もないぞ! 急ぎ鎮地盤を打たねばならん」


 難しい話が始まると、早々に千恵の膝で眠っていた天馬・天子がムクッと起きると口を開いた。


「茜のお姉ちゃんが帰って来る前に鎮地盤を打ってぇ、叛乱党とかって悪者は片付けておかないと大変だぉ!」


「そうそう! そうじゃな、天ちゃんは賢いのぉ。皆々、そういうことじゃ。鍛冶ガールが戻って来るまでに万端、整えておかねばならぬ! よいなっ」


『承知(だお、ですわ、です、じゃ、)!!』


 天子、お千恵、白夜、そして天狗が肝胆相照(かんたんあいて)らしたかの如く厳鉄斉の命に同時に応え、颯爽と立ち上がった景虎はまるで自身の部下にでも命令するかのように檄を飛ばし、厳鉄斉が出立の合図をとったか。


「よし、そうと決まれば早速じゃが、それぞれが記した箇所を巡るぞっ! ワシは城にも戻らねばならぬ、皆々ら、急ぐぞっ!」

「ならばまずは影虎の示した場所へ急行じゃ! 信濃川(しなのがわ)中ノ口川(なかのぐちがわ)が最も接近する場所じゃ、皆の者、着いて参れ!!」



 巌鉄斉はそう言うと、神聖にして純白の巨龍へと変化し、真っ先にその場所目掛けて空を飛んで行く。

 続いて炎龍となった影虎、天狗、それに天馬となった天子が空を駆け、白夜と千恵がそれぞれ大蛇と気狐に変身し、大地を閃光のように進んで行く。


 6つの光は刹那にして目的地へ着くと、影虎が早速に自身の持てる力を最大限に引き出し、夜空を真っ赤に染め上げた。


「じじぃ! 準備は出来たぞ、どこにこの力を打てばよいのだっ! 指し示せぃ」

「相変わらず生意気な小僧めっ。ゆくぞ! しっかと狙えよ、外すでないぞっ」

 

 白龍・巌鉄は己の聖なる霊気を雄叫びと共に発すると、鎮地盤となる場所へと全魂(ぜんこん)込めて打ち込んだ。


「いまじゃ! 小僧!!」

「小僧だとぉ! 行くぞっ、大地を鎮める糧となれぃ!!」


 影虎は巌鉄斉が示した場所へ、全身をぶつけるように体当たりした。その瞬間、純白と紅の霊気が混ざり合い、ピンク色へと大地が変色し、直径10メートルにもなる巨大で神秘的な金属で出来た地盤が出現した。


「よしよし、成功じゃ! よくやったぞ、小僧!」

「だ、だから小僧と呼ぶでないわ…………」


 影虎はそう言うと龍から人の姿へと突然変わり、空から真っ逆さまに落ちていったが、すぐに天狗が影虎をキャッチし、天子の背中に乗せた。


「どういうことじゃ!? 影虎殿が気を失ったぞ」


「全身全霊、渾身の一撃を打ったのじゃ。そうもなろうて。皆々も覚悟しておいてくれい!」


「…………先に言っておいてもらいたいものですね」

「そうよね…………」 


「ええいっ、蛇と狐はさっきから突っ込みが的確すぎるぞ! 一旦、影虎を三条城へ送り届け、我らは残りの鎮地盤を打ちに行くぞい」


 巌鉄斉はそう言うと、また真っ先に城を目指して飛んでいった。


「せっかちですね」

「まったくですわね」

「こら、蛇と狐、突っ込みはよい! 我等も急ごうぞ」


「天狗さんは優等生ですね」

「そうですわね」

「んじゃあ、じいちゃんを追い掛けるよー!」


 そう行って空を走り出した天馬に続いて、城を目指してそれぞれが、またぞろ光となりゆくであった。



 次回 7、悲しき侵略者と影虎思案




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