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 第三章 3、五柱神、集結したる! 鎮地盤を打つのじゃ!

「栞菜、行きましょう」

「ハイ! お千恵さん!」


 頷き合うと、お千恵は白銀の光に包まれ、妖艶な狐に変身した。


「これがお千恵さんの本当の姿なのね!」

「えぇそうよ。さぁ行きましょう!」

「あっでも助さんと格さんがいるんだわ」


「おら逹のことは気にしねぇで行ってくれし!」

「んだ! 俺逹は舟で川を降って一旦、三条城に戻ってみるすけん! もしかすっと山吉様方がお戻りかもしれねぇ、影虎様との()()()になるすけん!」


 助作と格兵衛はそう言ってそそくさと舟に乗り込んだ。おそらく長尾の軍はそのように調練され、各々が考え行動が出来るようでなんとも手際のよいことだ。


「わかったわ! 2人ともありがとう! また落合いましょ! じゃお千恵さん、行きましょう!」

「えぇ。私の背中に乗って」


 栞菜は白銀の狐の背に股がると深呼吸した。


「じゃあ行きましょう!」


 2人は閃光のように飛び立ち、瞬間移動でもするかのように、巌鉄斉屋敷の方面へと進んで行くのであった。



 ―――――――――――――




「ちかれたぁ~」


 カポカポ音を鳴らしながら歩いていた天子は急に駄々(だだ)をこねた。

 道中様々な話をしての歩行であった。天子は理解しているのかいないのか、とにかくその姿のまま精神年齢も子供に思えたが、茜は自分のパートナーであると共に、底知れぬ力を秘めていると確信してもいた。

 それに可愛い妹が出来たようで甲斐甲斐しく世話を焼きながらの歩きであった。



「はぁ~? なんなんだよ、このガキ! 本当に神様なんだろうなぁ?」


 軍司は疑惑の目を幼女に向けながらもしゃがみこんでおんぶの体勢をとった。何だかんだで軍司もまた世話好きのようだ。


「ほら、天ちゃん! 軍司の()()()()がおんぶしてくれるってぇ! よかったねぇ」

「コラコラ、オジサンはねぇだろうよ」

「おんぶ?」


 指をくわえて好奇心をそそられた天子だったが、夜空を見上げた。


「オジサンのおんぶは今度にしてぇ。今は急いだ方がいーから空を駆けてこうよ」


 そう言うと同時に首飾りがピカッと光り、天子は白い天馬に変身していた。例の大小様々な稲光(いなびかり)をまとい、翼をはためかせて少し地面から浮いていた。

 金色のたてがみが夜空に輝き、天馬は茜と軍司を見るとテレパシーを送った。



(さぁ乗って! 一気に夜空を駆けてこうよ!)


 茜と軍司は目をパチクリさせると頷き合った。


(やっぱり俺達の考えが及ぶ存在じゃあねんだなぁ)


「軍司、せっかくだから乗せてもらいましょ! ひとっ飛びなら咲良逹にもすぐ合流できるし!」

「そうだな! 天、じゃなかった、ペガサスさんお願いしゃす!」

「ウム。よろしい!」


 2人は天馬に乗るとたてがみを軽く握って首の辺りを撫でた。


「天ちゃん、準備オッケーよ! 行きましょ」


 天馬は瞳を光らせ、ゆっくりと上昇すると、まるで目的地がわかっているかのように巌鉄斉屋敷へ向かって空を駆け出したのだった。


「気持ちいい〜!」

「ひゃ~こりゃすげぇぜ!」


 ヒヒィィィーンと乾いた空に甲高い(いなな)きが響き渡っていくのであった。




 ―――――――――――――――




「んっ!?」

「いよいよ参ったか」

「そのようですね」


 巌鉄斉屋敷にいる神族3名は気狐と天馬の気配に気付くとそれぞれそう口走った。


 眠気に襲われていた咲良は目を擦りながら問う。


「なにー? 降参?」


 ポカッ。


「ばっかもん! 残りの神々が参られるっちゅーことじゃ! 茜も栞菜も上手くいったようじゃ! それ、全員外に出るぞい」


 咲良を一発小突いた巌鉄斉に促され一同は暗がりの外へ出てみた。漆黒の闇と初秋の虫が(すだ)く音が大音に聞こえてくる。


「そっかぁもうすぐ夏も終わって秋がくるのよね」


 ポツンと呟いたまことに、咲良も姫子も、コクンと頷いて答えた。


「来ます。まずは狐さんですね」


 白夜はそう言うと、自身も大蛇に変身した。

 一瞬の閃光の後、漆黒の間道に眩しい光に包まれた狐が姿を現した。


「なんとも美しい狐じゃ!」

「まことー!」

「栞菜! 無事でよかったわぁ!」


 親友2人は息災を一言でまとめた。

 それだけで充分なのだ。


「続いて天馬の()()のお出ましだな」


 影虎はそう言うと自身も竜口(たつくち)を握り、燃え盛る龍に変化した。


「やっほー! 咲良ぁ!」

「天馬を連れて来たぜぃ!」

「茜、軍司ぃー! やったねぇ!!」


 学友にして悪友3人もまた、短い言葉で互いの胸中を理解し合った。

 そして空を疾駆する金色の天馬が悠然と現れた。



 空に天馬に龍、地に気狐と大蛇、その間の空間に天狗が飛ぶと、今まさに五柱神が揃った瞬間だった。


 見上げた鍛冶ガール5人もまた勢揃いすると各々が黒鐵(くろがね)を握り締め、火花のイヤリングを5色の輝きに変え、昔話のような光景に感無量の表情をするのであった。




 ――――――――――――




「殿は! 影虎様は何処(いずこ)へ行かれたぁ!? 誰かおらぬかぁ!」


 わめき散らすように叫んだのは叛乱党(はんらんとう)の探索に出ていた三将軍の一人、柿崎だった。鬼・小島も山吉もまた探索から戻っていた。


「これこれ柿崎殿! ちとこっちへ来て落ち着かれよ。今しばらく待たれよ」

「山吉殿は相変わらずですなぁ」


 そう言って小島がどっかと山吉の脇に座った。


「首尾はどうでしたな? 小島殿」

「こちらは彼奴(きゃつ)らの分隊を見つけましたぞ。柿崎殿も同様に発見されたと申しておりましたぞ」

「左様か、こちらも上々吉と言ったところか。あとは殿の采配次第ですな」



 そう話し合っているところへ柿崎も加わった。三将は行方知れずの主君を心配したが、同盟者たる鍛冶ガール一行も同様に姿が見えないことに何事か(いわ)くがあることを何となく察していた。


 そこへ長らく密命を受けて行動していた姫小百合(ひめさゆり)軒猿衆(のきざるしゅう)の棟梁であり、姫子の父親でもある嵐蔵(らんぞう)も合流し、続いて栞菜と別れた助作と格兵衛が城に戻った。



「おぉ助作、格兵衛! お前逹どこへ行っていたっ。殿はどこへ行ったのだ」


 山吉の詰問(きつもん)に助・格は交互にこれまでの経緯を話し、影虎は現在、巌鉄斉屋敷に居ることを伝えた。


「そうか。では戻ったばかりで悪いが、そなたら殿の元へ参ってな、首尾は上々とお伝えせよ! 殿なればそれだけ申せば分かろうほどに!」

『へへぇ! わかりました』


 戻ってすぐに命令を受けた2人は馬を与えられ、一目散に巌鉄斉屋敷へと向かって馬を走らせていくのであった。




 ――――――――――――




「私はここね」

「なるほどなるほど。既に形はわかったが、天馬ちゃんにも一応は聞いておこうかのぉ」


 新たに気狐・天馬を迎えた一応は屋敷内に戻り、額を寄せ合って

 例の絵図面を睨んでいた。


「アタイはここだなぁ!」

「じゃろうな。よしっ! これで鎮地盤を打つ場所はわかった! 早速神々には働いてもらわねばならん、よしなに!」


「ねぇ、これなんなの? さっきっからこんなことばっかりやってんだよねぇ」


 飽き飽きしている咲良は、うだるように茜と栞菜を見て言った。


「簡単じゃない! これ、秘伝乃書(ひでんのしょ)に書かれていた鎮地盤のことじゃないの?」

「正確には三条伝記(さんじょうでんき)だけどね!」

「あ、そうだったっけ? なんか頭がこんがらがってたわ! わかった? 咲良」

 

 明晰(めいせき)な茜と栞菜の答えにより、さすがの咲良も理解できた。まことは5人の神様に質問した時にピンときていた。

 姫子もようやく理解できたようにスッキリした表情をした。



「さてさて、ここからは別々に別れて行動してもらうぞい!」


 やっと何事か()使()()を言われるのかと咲良は四つん這いになり、巌鉄斉ににじり寄るとお尻を振って意気込んだ。


「んでんで! あたしは何すればいいの!? じいちゃん!」

「ほっほっほっ、そなたら鍛冶ガールは一旦、未来に帰ってもらうぞい!」


『……………………』


 鍛冶ガールの面々は驚いた。やっと秘めたる力を得て、それぞれがパートナーたる神様を迎え入れたというのに、ここへきて令和の時代へ帰れとは。


 咲良は放心状態のままゆらゆらと立ち上がると、天井を見上げて叫んだ。



「なんでぇぇぇーーーー!?!?!?」



 次回 4、書!書!ふたたび。いったんバイバイ!令和へ帰る

 

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