第三章 2、空を駆ける少女は幼女と出会うってか!?
茜は馬に股がりつつも考え事をしていた。
(確か巌鉄斉さんは幼女っていってたなぁ。けど最初に祠に行った時に聞こえた声は大人の女の人の声だった気がしたんだけど……)
「なぁ茜、今度こそペガサスに会えっかなぁ?」
軍司は不安を隠せない表情で茜に問い掛ける。
「きっと会えるわよ! 私も自分の力を引き出せたんだし!」
「そ、そうだよな! すげぇ雷みたいな光の柱だったよなぁしかし」
そんなことを話しながら天馬の祠目指してグングン進んで行った。
栞菜と同様に徐々に日が暮れ始め、街灯のない細道を足早に踏破していく。
「なんとか日が暮れる前に着いたな! こっからは歩きだな」
軍司に促され、茜は馬を降りて驚いた。足の痛みが想像以上に和らいでいたからだ。
姫子の治療と、何より茜が秘めたる力を得たことも大きいのだろうか。
ゆっくりとではあるが祠に到着した2人は、迷わず裏側の天馬の絵を覗き見た。
「あれ!? ペガサスの絵がなくなってるじゃん! どういうこった?」
「わからない。けど天馬の力をヒシヒシと感じるわ! きっと近くにいるわよ」
そう言うと茜はキョロキョロと辺りを見渡した。軍司もつられて同様にその辺を探し回ったか。
不意に茜の脳裏に呼び掛けるテレパシーのようなものが伝わってきた。
(やっとお会いできるってわけね! 上を見て! うえ!)
(あなたは天馬!? 私も会いたかったわ! とっても!)
茜は心の中で呟くと天高く空を見上げてみた。
鈍色となった空にポチポチと星が光り出しているが、しかし天馬はどこにもいない。
(どこにもいないじゃない! どこ!?)
(慌てないでー! ちゃんと集中してー)
(……な、なんか軽いなぁ)
茜はボヤきつつも雷の力を発揮し意識を集中させた。
すると星しか見えなかった空に突如として黄金に輝く天馬が現れ、天高く嘶いた。
「天馬だわ! 凄い! 綺麗!」
「うぉぉ! いきなりかよっ。ペガサスの周りにバチバチっと細けぇ雷が無数にあるぜ!」
「やっとあたいを具現化出来るようになったんだねー! それだけ能力を自分のモノにしたってことかぁ!」
天馬は見た目とは裏腹に酷く子供っぽい喋り口調でそう言ったが、依然として荘厳な見た目はかわらず、絶えず駆けるように空をカポカポさせていた。
それは日が暮れた世界に一際目立つ存在であった。
「あのね、天馬さん! 話したいことがあるの、降りてきてもらえる??」
「会話できんのかよ!?」
「そこの筋肉バカ、当たり前でしょうが」
「えっ? 今のあのペガサスかよ?」
「そうよ、まずは私逹の目的を話さなきゃ」
(なんかカンナム先輩と同じ匂いを感じたぞ。俺は…………)
一瞬にして天馬は消え、残像がチカチカし、その姿はどこにも見えなくなってしまった。
「あ、あれ?! 消えたじゃねーかよ!」
「黙って! いるわ、近くに」
「ここだよ」
空ばかり見上げていた2人は、ゆっくりと視線を下げていった。そしてその声の主の容貌にビックリした。
「ちっ小っさぁ…………」
「けど可愛い!」
「エヘヘ、お初に御目にかかりまーす」
そこには金髪の幼女がちょこんと立っていた。
全身を白い羽で編んだワンピースのような服を着て、背中には羽が生えている。両脇に一本ずつ羽があしらわれたカチューシャをしていた。
靴だけは酷く硬そうな、黒っぽいエンジニアブーツのような物を履いていて、そこだけ違和感を覚えたが、明るく元気そうな笑顔を振り撒いている。
「あ、あなたが天馬なのね!?」
「そだよー」
「ちっさ! 岬より大分小せーぞ」
「岬って妹さん? 今何歳なの?」
「えーと…………小学5年生だったかな?」
「誰だれー? お友達ー??」
茜と軍司は一頻り天馬の容姿に呟き合った後で、本題に入る。
「あ、あのね天馬さん。お願いがあるの! 一緒にこの世界を救ってほしいの!」
「んーー…………いよ!」
「ホントにお前みたいな小っせーのがあのペガサスなのかよ!?」
「うっさい! 筋肉! ペガサスってなんならぁ?」
「あっ天馬の別名みたいなものかな。それでね、」
「アタイ天馬よりペガサスの方がいい! カッコいいもんねぇ!」
「あ、えぇじゃあペガサスさんって呼ぶわね! それでね、」
「ちがーよ! アタイは天子って名前があるんだよ!」
「あっそうなの!? じゃ、じゃあ天子ちゃんって呼ぶわね! それでね、」
「んもぉ! 天ちゃんって呼んでよぉ! 他人行儀はよしてぇ」
「は、話が進まねぇ…………」
「それに最初はもっと大人っぽい声で語り掛けてきた気がしたのよね…………」
「そだよ! 最初は大人っぽい感じでいこうと思ったんだけど、やっぱりやめたの! 茜はお姉さんぽいから! アタイは妹ってことにしようねー」
「なんだそりゃ! 手の掛かるのは咲良だけで充分なのによぉ……まぁいっか。じゃあ話は歩きながらってことにすっか! 天ちゃん」
「ちがーよ! 筋肉はちゃんとペガサスさんと呼びましょうね!」
「ぐっ…………な、なんなんだよ? この扱いの差はぁ!! ガキカンナム!」
「まぁいいじゃない! 天ちゃん、行きましょ! 色々話したいことは道中でゆっくりとお話ししようね!」
「うん!」
天馬・天子は元気に返事をすると茜の手を握り、満面の笑みを浮かべた。
それは小さい子供をあやすかのように見えたが、天子が歩く度にカッポカッポと音がすることに、茜と軍司は間違いなく神様なのだと確信していくのであった。
「ワシはここじゃな!」
「フム。龍どのがそこであれば、ワシはここじゃろなぁ」
「天狗さんがそこであれば、やはり私はここでしょうか」
「ウムウム。なるほどなるほど。やはりそのような形になるてか!」
茜と軍司が天馬・天子と出会いしばらくした頃、巌鉄斉の屋敷では依然として不明な会話がなされていた。
(フフン、いいことを思いついたぞ。叛乱党の殲滅もこの方法が効率的じゃ)
一人ほくそ笑む影虎を見て、謎の会話に飽き飽きしていた咲良は、
「一人で笑ってる…………気持ちワル!」
と、発するのであった。
次回 第三章 3、五柱神、集結したる!鎮地盤を打て!




