第三章 0、巌鉄斉、采配! おぬしはあれでおことはこれじゃ!
令和から天文17年へとタイムスリップし、蜃気楼ではない三条城を拠点に、未曽有の危機に瀕した戦国時代の地元を救うために、それぞれの秘めたる力と5人の神様を探す旅に出た鍛冶ガール。
後の上杉謙信となる長尾影虎や、その家臣・山吉・柿崎・鬼の異名を持つ小島。そして足軽の助作に格兵衛。
個性豊かな天文の人々との出会いと、未知の妖怪が蔓延る世界を目の当たりにし、悪戦苦闘するも、咲良・まこと・姫子は自身の秘めたる力を手に入れ、炎神(影虎)・瑞神(白夜)・翠神(天狗)と神々の協力も取り付けた。
しかし怪我をしたことにより、過去のトラウマから、茜と咲良はこれまでにない大喧嘩を演じ、一時は解散寸前まで追い込まれてしまった鍛冶ガール。
だが影虎と軍司の活躍、そして他3人のメンバーの信頼という名の友情により、無事危機を脱し、絆を深めるに至る。
そして栞菜が謎の女性、千恵と作り上げたお揃いの作務衣を着込んで今、全ての筋書きを描いた張本人、初代・巌鉄斉に会うために再び三条城を後にしたのであった。
「よしよし、やっとワシも美少女を拝めたぞい! 咲良は元気でよいが色気が無さすぎじゃ。尻の形は申し分ないがのぉ…………そこいくとワシの好みで言わせてもらえば、茜はかなりのもんじゃ! 身体のしなやかさがたまらん! それに美人さんじゃしの! そして我が子孫まことは絶世の美女じゃ! たわわな乳房に釘付けじゃて! ハッハッハッ! いやいや栞菜も好きじゃよ! 知的な感じで眼鏡なんてかなりの高得点じゃし、姫子は唯一無二の猫かぶり(ぶりっ子の意)じゃからのぉ。これまたたまらんぞ! ハッハッハッ!!」
「こ、この方が初代・巌鉄斉様なの…………」
「ただのセクハラエロじじぃじゃない」
「私は美人だって、軍司! うれし!」
「ま、まぁ見る目はあるな! あの爺さん!」
「猫かぶり? もう! そんなんじゃないのにぃ」
「てかさ、あたしなんてお尻だけだよ!? なんでよっ」
鍛冶ガール一行は当然驚き、見た目はそっくりではあるが、威厳と優しさを併せ持つ十七代目・巌鉄斉(まことの祖父)とのあまりのギャップに半ば呆れていた。
「いやはや、大蛇・白夜殿の合力には感謝致しますぞ! これからも未熟なこの子らを支えてやって下され!」
「影虎殿、ワシらには何も挨拶はないようですな。相変わらずの助平(スケベの意)じじぃじゃ」
「ウム。助平糞じじぃじゃ。それに咲良は見た目だけではないわっ」
「なんだと!? こら、天狗! お前、まことを気に入っとるようじゃが、ワシの子孫じゃからな! それに影虎、ガキ臭い咲良はやはりお前とお似合いじゃよ! ホホホ」
『なんだとぉ!?』
影虎と天狗は同時に声を張り上げると、あからさまに不機嫌になり殺気だったか。
「ねぇじいちゃん、セクハラはもういーから話を進めようよ! このままじゃここでいさかいが起こっちゃうよ!」
「ホッホッ。はっきし言ってそなたらはまだまだ未熟じゃ! それにまだ自身の力も手に入れとらん者もおるし、神さんも引き連れちゃおらん。これじゃ無理無理」
巌鉄斉は一層軽い口調でダメ出しし、なおも続けた。
「懇懇と話したいことも聞きたいこともあろうが、まずはおぬし!」
巌鉄斉はそう言って栞菜を指差した。
「おぬしはこれより五十嵐川の妖艶美人の狐ちゃんと話をつけて参れ! あぁそうだ、光の力も忘れずにな!」
栞菜は最初驚いた顔をしたが、千恵が神様なのだと確信すると元気いっぱいに返事をした。
「わかりました! 必ず能力と助力を得てみせます!」
「ウム。よい返事じゃ!! 次におこと! おことは早急に天馬の祠を訪ね、幼女で可愛い天馬ちゃんを連れて参るように!」
「分かってます! 絶対連れて来ます」
茜はそのつもりでいたので即答すると張り切った。それは姫子の治癒能力で足もかなり良くなってきている証拠でもあった。
「しっかしネタバレ感ハンパねぇなぁこのじいさん! それに軽すぎね!?」
軍司は率直な思いを吐露した。それを聞いた影虎は笑みを溢すと軍司に言った。
「フフン、それがあのじじぃの計よ! 小難しい話を延々とするよりも、より効率的に物事を進めようと、わざと軽く振る舞っておるのよ!」
「はぁそんなもんなんすかねぇ…………俺にはただのエロじじぃにしか見えねんだよなぁ」
「影虎さんの仰る通りですね。内に隠したる厳然たる強い力はひしひしと感じます。」
「まぁ口だけではないぞ、あの爺は。腹は立つが信じてよいぞ」
影虎、それに白夜に天狗と神様逹の言はそこにいる鍛冶ガールの面々と軍司を説得するのに充分だった。
「そんじゃあ、じいちゃんの言う通りに行動開始ね!」
「よし、栞菜には助作、それに格兵衛が従え! 川を遡行して行けば早かろう! それに茜には馬を準備させるぞ! 軍司、そなたも一緒に祠に行け! よいなっ」
咲良の一言で影虎が采配を振るう。なんとも小気味良い一連の流れだ。まことと姫子は今にでも出発しそうな栞菜と茜のためにある提案をした。
「だったら私、栞菜と一緒に行きます! 私の風の力を使えばひとっ飛びですから!」
「姫子も! 水の絨毯なら茜さんと軍司さんも乗せて行けますし、足の治療も行く先々で出来ますもん!」
2人は身を乗り出してそう言ったが影虎に留められた。
「ワシが何故そなたらに助力するよう申さなかったかわからぬか? 残された者にはそれなりのやることがあるのじゃ」
それを聞いてまことは天狗を、姫子は白夜を見た。天狗も白夜も影虎に同調するように深く頷いた。
少しがっかりした2人をフォローするかのように巌鉄斉が口を開いた。
「ホッホッ。まぁそんなところじゃ! そなたらも自分で力を得て、神様を連れて来たのじゃ。茜と栞菜もそうすべきじゃ。それが経験となり、成長の糧となる!」
まことも姫子も納得すると、逆に質問した。
自分逹は何をするのかと。
「なかなかせっかちじゃのう! 結構結構。ではまずは茜と栞菜よ、準備が出来たら早々に出発致せ!」
巌鉄斉はそう言うと、そそくさと2人を旅立たせた。
茜と軍司は馬に乗り、栞菜は助さん格さんと連れ立って川を目指して歩いて行った。双方ともに姿が見えなくなるまで咲良達は手を振り続けて見送りを終えると、厳鉄斉はさっそく口を開いたか。
「よしよし、あの二人が無事帰るまでにそなたらにはある重要な役目を担ってもらう」
見送り終えた一同を自宅の広い一室に招き入れると、ガラッと口調を変えた巌鉄斉がそう言って一人ひとりを順番に見た。
そんなピリッと緊張感が漂った中で、咲良は素っ頓狂な声で捲し立てた。
「なになにー!? 早く教えてよぉじいちゃん!!」
シリアスモードに入ったはずの巌鉄斉はポカンとして咲良を見詰め、言葉に詰まった。
(こやつ、ワシの圧力がやはり効かぬ。不思議な娘じゃ)
気を取り直した巌鉄斉は囲炉裏に掛けていた鉄瓶を取り、それぞれに茶を差し出すと、一枚の紙を取り出し、一同に見えるように広げていくのであった。
次回 第三章 1、星を集める少女 ~いつか一緒に油揚げを食べましょう!~




