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第二章 24、決裂! 茜×咲良 分裂!? 鍛冶ガール

「よっこらせっと!」


 ワカメのように引き千切れたスカートを押さえながら真っ赤な龍から降り立った咲良は満面の笑みで全員を見渡した。

 それぞれが待ちに待った咲良の帰還を嬉々として出迎え、山吉は一同を代表して言葉を掛けた。


「咲良殿、よくぞご無事で! してその豪壮(ごうそう)なる、り、龍はいったい…………」


 ニコッと笑った咲良は振り返って龍を見ると言った。


「あんた誰? だってさ! ぷぷっ」

「このたわけがっ!」


 その聞き慣れた激しい口調に山吉・柿崎・小島の三将は驚き、すぐに片膝ついて頭を下げた。

 真っ赤な龍は強い光に包まれ凝縮していくと、咲良の(かたわ)らにゆっくりと下降し、影虎の姿へと変化していった。


「なっなんと!? 殿が、殿が物怪(もののけ)に…………」

「なんということじゃ……これで我らが長尾家も終わりか………」


 勝手に怪物扱いし、勝手にお家断絶と決め込んだ柿崎と小島を見ると、性急な影虎は走るように近寄って頭をポカポカッと殴った。


「馬鹿者! なぜ妖怪なのじゃ! ここは殿は龍神じゃったのか! とか越後の軍神じゃ! とか言って崇拝し、敬う場面じゃろうがっ!」


 山吉もまた驚いてはいたが、以前より明るく溌剌(はつらつ)とした影虎を見ると何となく安心した。

 驚きの事実と待ちに待った指揮官の帰還に慌てたり喜んだりとなんとも大忙しの長尾の軍勢であった。


 咲良はいつにも増して笑顔が冴え渡り、太陽のように皆を照らす存在と進化したかのようにそれぞれには見受けた。

 そんな咲良はそれぞれと一言ずつ言葉を交わすと最後に茜の元へ。

 やはりお互い一番心配していたのだろう。しかし茜の怪我を知った咲良は笑顔を曇らせ、急に心配顔になった。

 その表情を見て茜もまた突然言い表せぬ怒気(どき)を含んだ顔になったか。



「あ、茜。足を怪我したの? そこって中学の大会ん時とおんなじところじゃ…………」

「…………えぇそうよ! だからあの時も言ったじゃない、そんな顔で私を見ないでっ! って」


 急な茜のきつい言葉に、2人の口論は徐々にエスカレートしていく。


「そんな顔って…………あたしはただ、心配してるだけじゃん!」

「それが迷惑だって言ってるのよ! どうせ私は同じことを繰り返すダメな女よ」

「だっ、誰もそんなこと言ってないっしょ!? 早く治さないと! あたし達にはやらなきゃなんないことがたくさんあるんだよ!?」

「さ、咲良……俺達も何回もそう言ってんだよ。姫子ちゃんの治癒の能力を受けろってさ」


 軍司がやっとの思いで間に入って事情を話した。するとなおさら咲良は激怒して茜を責める。しかしそれは無二の親友への願いでもあった。


「なにモタモタしてんのよっ! みんなそれぞれ大変な思いをしてるんじゃん! いつまでも過去のトラウマなんて気にしてないで…………もっと前を見て、自分の道を進んでよ!!」



「ねぇ、まこと、咲良ってなんの話をしてんの?」


 事情を知らない栞菜はまことに耳打ちして問う。


「えっ? 何を聞いてるのよ。早く怪我を治して能力を得て、神様を集めようって話でしょ?」

「そうなの? なんか違う気がするんだけど…………」

「どっちにしても、とりあえず止めなきゃですよぉ!」


 2人の激しい口喧嘩にさしもの影虎は面食らったし、三将も固唾(かたず)を飲んで見守っていた。なんとかしようと間に姫子とまことが間に入り(いさ)めたが収まらない。


「なによっいつもいつも偉そうにっ!」

「どっちがよぉ! いっつも茜が偉そうにあたしを注意してばっかじゃん!」


 思わず泣き出してしまった茜を見て、眉を吊り上げた栞菜が割って入る。


「ちょっと言い過ぎよっ咲良! 誰だって落ち込む時くらいあるでしょ。親友なら温かく見守るとか他に慰める方法くらいあるってものよ!」


 茜を(かば)う栞菜に怒りの矛先を変えた咲良はなおも感情をぶちまける。


「うるっさいなっ! 栞菜は黙っててよ! これはあたしと茜の問題なんだからっ」

「なんですってぇ…………」

「栞菜さんも少し落ち着いて! だけど言い方はともかく、咲良さんが言ってることは正しいです! 落ち込む気持ちも分かりますが、早く怪我の手当てをしていかないと…………」


 咲良を立てた姫子に今度は栞菜が噛み付く。


「はんっ! 白夜さんと上手くいったからって急にしゃしゃり出るようになったじゃない! あんたはこの時代が助かれば未来から来た私らがどんなに傷付こうがいいってわけ!? 怪我だけじゃないわよ! 心のことを私は言ってんのよ?!」

「そんなこと……そんなことありません! 姫子は……姫子は未来だって守りたいもん」


 栞菜に言われて姫子も口をヘの字にして反論し始めてしまった。

 そして栞菜と姫子は胸を突き合わせて睨み合ったか。

 そんな2人を脇から見ると軍司は不埒(ふらち)にも場違いな思いを抱いていた。


(姫子ちゃん、意外とおっぱいデケェのな。カンナムは平胸かよ、ぷっ)


 だが何故かそれを察したかのように2人が突っ込む。


「こんなときに人の胸元を見てる場合ですか!」


 と、姫子が軽蔑しきった眼差しで怒りの矛先を軍司に向けた。


「フン! 無駄にデカイだけの乳なんざ私ゃいらないわ! エロチャンバラにセクハラされることもないしね!」


 栞菜は姫子もけなし、軍司に新たなあだ名を付けて嘲笑(あざわら)った。


「ぐっ…………有り難くもねぇあだ名ばっか付けやがって…………」


 軍司は歯軋(はぎし)りして悔しがると、栞菜と姫子の喧嘩に混ざり、軍司のセクハラまで発覚した今、ますます収拾がつかくなった。


 それでも唯一中立を保っていたまことは咲良と茜の間に入って両手を左右に広げ静止するように声を張り上げて仲裁した。


「ちょっとみんな一旦ストップ! 私達が揉めてどうするのよっ! 一回頭を冷やして冷静になってから話し合いましょ! ねっ?」


 双方を見て同意を求める度にたわわな胸が揺れたが、軍司は非難されるのを恐れて目を反らした。

 しかしまことの切実なその言葉に顔を(そむ)け、冷静さを完全に見失った茜には届いてはいなかった。


「もういい……私、令和に帰る。これ以上みんなに迷惑かけられないし…………」


 と言って去ろうとする茜を、その場に居合わせた者は、驚きと失望を(あらわ)にした。

 そしてそれを聞いた軍司が身を乗り出して引き留めようとしたその時だ。

 まことをはね除け、咲良が茜に詰め寄るとパンッと大きな音がした。

 頬を押さえ意気消沈(いきしょうちん)した茜は力尽きるように崩れた。茜の頬をひっぱたいた咲良は悔しそうに顔を(ゆが)めて言った。



「勝手にしなよ…………」



 美少女からなる鍛冶ガールはこの日この時、決裂し、分裂したのだった。



 次回 25、想い人よ、大空を羽ばたきたまえよ!



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