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第二章 21、炎神・恋した龍は滅法強いわけですな!

 視線の先にあったのは、刀掛けに置いてある竜口であった。


「この竜口を打ったのはワシでな。持ち主()()()()()の元へ飛ばしたのじゃ。影虎様はどこでこれを?」

「栃尾城の戦いの翌朝、刈谷田川で拾った。しかし持ち主とは異なことを言うではないか! ワシは拾ったのであって、買い求めた訳でもなく戦利品でもないぞ」


「ほっほ、言い方が悪ぅござった。厳密にはそなた様の()()(こしら)えたと言った方がよいですかな。そなた様の力を開放するためのきっかけと思うて下さればよい」



 そう言われても合点がいかない影虎は咲良を見やった。巌鉄斉の話に聞き入っていた咲良は影虎と目が合うとすぐに()らしドキドキモジモジした。それを押し隠すように流暢(りゅうちょう)に喋り出した。


雨生ヶ池(まごいがいけ)に向かう途中で茜と話してたんだけど、出発の時、その竜口とあたし達が持ってる黒鐵(くろがね)をかざした時に共鳴し合って光ったじゃない? あれって竜口と黒鐵がおんなじ()で出来てるんじゃないかって……そしたらまことさんがどっちも初代・巌鉄斉の爺ちゃんの作った物なんだぁ! ってワクワクしてたのよ。それに影虎だって何かを感じていたってことっしょ!?」

「うぅ~む……確かに何やら不思議な力を感じたが、まさかワシが龍に化けるじゃと? …………(にわか)には信じがたいが」


「まだ半信半疑ですかな? その竜口を帯刀(たいとう)していて何か()()のようなことはなかったですかな?」


 そう言われてやっと合点が言った風に影虎が勢いよく語り出した。


「おぉ! あったとも! そうじゃ叛乱党どもを押し返すおりに、不思議と力が(みなぎ)ってな、炎の竜巻のようなものを繰り出して追い払ったぞ! あれは不思議であった。味方の軍には一切危害を加えん奇っ怪な炎であったわ!」

「それが兆しであり、()()の片鱗ですじゃ」

「進化じゃと!? ワシの変化(へんげ)は進化したことになるのかっ」


 影虎は性急に聞き返すと、巌鉄斉はハッキリと言ってのけた。



「そうです、そうです。この多発する超常現象を打開する為に必要不可欠なのは()()と神々の力。そなた様はその神々の一人なのです」


 巌鉄斉はなおも続ける。


「実はワシは予知能力がありましてなぁ。様々な事柄の先々(さきざき)が見通せます。どうでもよいことなれば放っておくのじゃが、今回ばかりはそうも言うておられなんだ。先手先手と手を打って来ていたという訳ですじゃ」


「じゃあ黒鐵を作ったのも、姫ちゃんがしてた首飾りも。あとなんだっけ? なんか日記みたいなヤツも全部巌鉄爺ちゃんが準備してたってことぉ!?」


「ほっほっほっ、まぁの。この地に神さんは居るにはいるが、力の強い神さんがどうしても一人足らなんだ…………そこでワシが天地万物の力を借りて神鐵(しんてつ)を使い黒鐵(くろがね)を鍛える時に竜口も打っての、運命の()()()を探させたのじゃ」



 一連の話を聞いて影虎は驚嘆(きょうたん)した。


(凄いジジイじゃ! ワシが竜口を手にしたのは四年も前のこと…………そんな時からこの異変を鎮める為に働いておったというのか?)


「そうゆうことですな。ほっほっほっ」

「!? おぬし人の心も読めるのかっ」

「多少多少」


 と、巌鉄斉は磊落(らいらく)に笑った。

 咲良はその笑い方を見てまことの祖父である十七代目・巌鉄斉のことを思い出していた。


(ほんとに瓜二(うりふた)つ! だけどあっちの爺ちゃんは厳しそうでちょっと恐い感じだったけど、こっちの爺ちゃんは軽いなぁ…………)


「これこれ咲どの、ワシは初代じゃぞ! 偉いんじゃぞ! 十七代目とは比較になりゃせんぞ!」


 巌鉄斉は子供のようにムキになり、それは咲良の見立て通りに軽そうに見えたか。



「あー! また人の心を読んだんだね!? 趣味わるぅ! それやめたほうがいいよ絶対! てか天地万物ってことはあたしは火の精霊か何かの力を借りてるってこと? 違うか…………」


 能天気に誰にでもハッキリ物を言い、理解に苦しみそうな難しい話までも簡単に理解した咲良。

 そんな咲良に言い知れぬ力を感じた巌鉄斉は黙りこくった。

 それは影虎も感じたことのある、神秘に満ちた不思議なものであった。


「なかなか呑み込みが早いじゃないか。そう、ワシは生きとし生けるもの、全ての生命の力と契約し、黒鐵それぞれに属性を持たせた。その上でそなたらに授けた。そなたは元々の属性が()であったのだろう、だから炎神(えんしん)たる影虎様と(つい)となり、存分に力を発揮してもらわねばならぬ! どれどれ、秘めたる力を見せなせぇ!」



 巌鉄斉はそう言うと全身から霊気を放出し始め、右手を影虎に、そしてもう一方を咲良に向け、意識を集中させた。

 次の瞬間、咲良と影虎は互いに真っ赤な炎を身に宿し、双眸(そうぼう)はメラメラと真紅に燃え出した。

 黒鐵もイヤリングも同調したし、竜口も同様であった。


「なっ……? これがワシの力か? 煌々(こうこう)と内側から力が(あふ)れ出るようじゃ! あの時と同じじゃ」

「ほんとだぁ! あの時とおんなじだ! なんだか温かくって……モリモリ力が湧いてくる!」

「なに!? 咲どのも既に力を使ったてか?」


 巌鉄斉は驚いた。自力で火の力を引き出した咲良をいよいよ只者ではないと感じた。


「むむむぅぅぅ」


 影虎は(うな)りを上げ、立ち上がった。


「火の力が臨界に達した! 変化するぞい! 咲どの、下がって下がって」


 興奮した巌鉄斉と共に部屋の隅に逃げた咲良を見た影虎は言った。


「咲良、おことが見たはこの姿かっ!」


 影虎はそう言うと紅蓮(ぐれん)の炎を身にまとい、突如として屋外へ飛び出した。


「ちょっ、ど、どこ行くのよぉ!」


 咲良が(わめ)いた瞬間、閃光が降り注ぎオレンジ色の異色の空を真っ赤に染め上げるような猛々(たけだけ)しい巨大な龍が出現していた。

 それを見た咲良は目を丸くしたか。


「ひぇぇぇ~こ、これが影虎なわけぇ!? 影虎だけに、見る影もない…………! なんつって…………エヘッ」


 影虎の荘厳なる変化(へんげ)はまさかのダジャレで片付けられた。巌鉄斉はズッコケたし、龍・影虎は即座に切り返した。


「このたわけでうつけで能天気な阿呆(あほう)娘がっ! もう我慢ならん! これでも食らえ!」


 見せ場を台無しにされた影虎は咲良を狙って口から火球を繰り出した。

 仰天したのは巌鉄斉だ。


「なっ何をさっしゃる影虎様! 咲どの危ない! 逃げさっしゃい!!」


 だが咲良は一歩も引かず(とど)まると受け身の体勢をとった。


「そんなん食らいませぇ~ん!!」


 大声を張り上げると自身も真紅の炎を巻き上げて巨大な盾を作り出し、火球を相殺(そうさい)して見せた。

 爆風が辺りを立ち込め、スカートが激しくなびくと、真後ろにいた巌鉄斉は咲良のパンツをアリーナ席で見た格好となった。

 またまた巌鉄斉は驚いた。驚きと興奮のあまりワナワナして鼻血を出した。

 そして鼻を押さえながら巌鉄斉は思った。



(この二人は規格外じゃ! ここまで力を引き出し合うとは思いもしなかった! しかも喧嘩しながらお互いの力を高め合っとる! そ、それになんたる幸運かっ! なはなはは)


  と、半ば感心し半ば呆れぎみに2人の遣り取りを見詰めて心の中で呟いた。



「フッ、力を発揮してもやることは同じてか! つくづく面白い二人じゃ。しかしこの真っ赤に燃え盛る二人の力はいったい…………」


 しばらく物思いに(ふけ)ったエロ爺はポンッと1つ手を打つと急に合点がいったように盛大に笑い出した。


(なる程なる程のぉ! これはまさに()の力か! それも見ていて恥ずかしくなる程の稚拙(ちせつ)な! じゃがそれが何よりの結果というがまた面白い!)


 そう心の中で1人納得すると今度は笑い転げた。

 それまで(いが)み合うように、だがお互いを認め合い、お互いを求め合って不器用な愛情表現をし合っていた2人は、転げて笑う巌鉄斉を見ると急に恥ずかしくなったか。


「なに笑ってんのエロジジイ!」

「なにが可笑しいクソジジイ!」

「な、なんじゃとぉ優しくしておれば付け上がりくさって! この若造どもがっ!!」



 と、巌鉄斉までをも巻き込んで、その日は日が暮れるまで騒ぎが収まることはなかったのだった。



 次回 22、茜ちゃんどうしちゃったの?



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