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第二章  4、三条城に越後の龍がおられます!

「あやつら大丈夫かいの? 毘沙門どん」

「さぁてのぉ……あれらが何とかしてくれんかったらこの世は終わりじゃからのぉ」


 呑気に話す仁王2人は、鍛冶ガールが歩いて行った方角をいつまでも見ていた。


 薄く黄色く(もや)が掛かったような空を見たこともない生き物がたゆたっている。

 人のような顔をしているが火の玉のような胴体でひょろりと長いモノノケがひゅるひゅると宙を舞っているかと思うと、大地には甲殻類のようではあるが、確かに二足歩行でそぞろ歩く珍妙な妖虫達がいたりした。


 首から下は人間で、鳥の(くちばし)を持つ妖獣の群れが背中から生えた翼をはためかせ超高速で西から東へ飛んでいった。


「クラクラしてきたわ……」


 茜は動悸(どうき)目眩(めまい)を引き起こしたが、ワクワクする咲良。


「すごーい! 気持ち悪っ!」

「なんでこんな風になってるんだろ?」


 と、疑問に思うまこと、そして言葉とは裏腹にしっかり錯乱状態の栞菜。


「こっこれが現実よ、落ち着きなさいよ! 過去の現実を見えているココは誰? 私はドコ?」

「なんか強そうな化け物がいまくりじゃねーか! いっちょバトルしてみたいぜ!」


 そして何故か軍司は張り切った。

 つまりは皆、混乱していたのだ。


 そんな一行を姫子と山吉は心配そうに見詰める。

 それはそうであろうと2人はそう思った。

 天文に住まう自分達でさえ慣れるまで時間がかかったのだ。

 だが鍛冶ガールの面々は実際に過去に来ているという奇跡と、歴史に記されていること以外に、このような現状を目の当たりにしようとは露ほども知らなかった訳であるのだ。


 姫子と山吉は徐々に慣れてくれるであろうということで早速三条城を目指して連れ立って歩き始めた。足軽の2名もそれに従う。



「さぁ皆の衆! これから我が三条城へ参るが物凄いお人がおられる。楽しみにされよ! 上手くいけば心強い味方となろう」


 気をつかってか、山吉の大袈裟にも生き生きとした言葉が響き渡ったが、一同はカラ返事をするばかりであった。

 まだ慣れないようだ。


「だけどさっき軍司君が言ったように行く行くは神様の力を借りるんだし、これくらいのことは覚悟して慣れなきゃね!」


 まことは両腕でそのたわわな胸を挟み込むとガッツポーズをしてみんなを鼓舞(こぶ)した。

 軍司と助作、格兵衛はまことの胸元を見ては視線をそらしもぞもぞした。


 しかしまことの言葉に一同は少し落ち着きを取り戻そうと努めた。いつもまことの言葉には重みと安心感を与えてくれる包み込むような温かさがあるのだ。

 そんな言葉に我に帰った栞菜は急に興奮し始める。



「そうよね……ついに、ついに我が地元に現存していた()()()とご対面なわけよね!」

「そっか! あたし達いっつも蜃気楼でしか見てなかったんだよね!」

「えぇ楽しみだわ! 橋からしか見えてなかったわけだし、どんな感じなのか興味あるわよね」


「俺は蜃気楼なんて見えやしなかったからなんとも言えねぇなぁ……けど誰なんすか? 物凄い人って?」

「ムッフッフッ。それは会ってからの楽しみになされ!」

「何気に姫もお会いするのは初めてで緊張します!」


 まことはみんなを見渡すと、少し元の調子に戻ったかなと安堵した。


 思い思いの一行は、本成寺から五十嵐川と信濃川の合流地点へ向けて歩いていく。

 大した距離はなく、砂利道を歩きつつ昔の家屋に見入ったり、時には村人たちの衆目の的になりながらも合流点へたどり着いた。

 やはり珍しい服装と生足とで人の目を引くのだ。

 それにこの時代の人々の平均身長よりもいくぶん高く、発育も良かったからか。



「そっかぁ橋がないんだ!」



 そう、この時代には令和のような立派な橋は架かってはいない。移動の手段はもっぱら川を船を使っての移動であった。

 城や城下町を作るときには(そび)える山に城を築き、その(ふもと)に城下町を建設する場合と、大きな川にそって外濠(そとぼり)とし、川を中心に町を形成する場合が多かった。


 川にそって肥沃(ひよく)な大地はでき、水田を開く。山の木々を伐採し、(いかだ)で下降へ運搬する。

 それがこの当時の営みであった。

 もっとも、この時代の越後は沼地はあれど肥沃な土地柄ではなく、稲作で国が保たれているわけではなかったのだが。



「うわぁ凄い! 蜃気楼で見るよりも全然立派に見えるわ!」

「本当ね! それに五十嵐川もそうだけど、信濃川がこんなに水位があるなんて驚きだわ!」


 茜とまことは率直な感想を言い合い、軍司は素朴な疑問やわ山吉にぶつけた。


「これどうやって城に行くんすか? 山さん!」

「あぁそんらばあそこにある小早(こはや)でいくんだがね」


 親切な助作は指差した方角にある船に急ぎ乗り、()を持つと一同を手招きした。どうやら助作と大吉は船を漕いで向こう岸の三条城側へ渡してくれるつもりらしい。やはりどこまでも親切だ。



 格兵衛の船に山吉、姫子、まことが乗り、助作の船に咲良、茜、軍司、栞菜が乗ると、2人の足軽は繋ぎ縄を外し漕ぎ始めた。

 うまい具合にバランスがとれた船体は速い川の流れにも関わらず、ほぼ一直線に三条城側へ進んでいく。


「へぇ~助さん上手だね!」

「す、助さん? いんやぁこれぐらい誰だって()()の操作なんて出来るすけ、あんまりおだてねぇでくれし!」


 あまり人に誉められたことのない助作は頬を赤らめて照れた。


「この船が小早(こはや)っていうんだね!」

「そうよ! この時代に使われた軍船のSサイズってところね。Mサイズが関船(せきぶね)、Lサイズが安宅船(あたけぶね)ってところかしら! 他にも何種類かあったとかなかったとか!」


  と、うんちくを語りながら栞菜スタイルが天文デビューを果たした。


「山吉さん、用事が済んだら初代巌鉄斉様の元へ急ぎましょうね?」


 心配し、念を押すように姫子が言う。


「もちろんじゃとも! 殿は察しのよいお方じゃ! 事情を話せば理解し、必ずや協力してくれるはずじゃ!」

「よーしっ助さん! 一気に格さんの船を追い越せー!!」


 咲良は舟先で舟べりに掴まりながら向こう岸を指すとそう言ってレースの開始を宣言。

 前のめりになった咲良のスカートがふわりとたなびき、形の良いお尻をチラッと拝見する助作と軍司はドキドキした。


「か、格さん!? むむん、助作になんぞ負けてたまるけ! 急ぐすけんみんなしっかり掴まってくれし!」


 張り切る助さん格さんは競い合って漕ぎに漕ぐ。


「だけどこんなに水位があるなんて…………」


 と、驚きを隠せないまことは、青々とうねりながら絶えず流れる信濃川の水面を揺れ揺れ眺めるのであった。



 次回 4、登場! 戦国の軍神・長尾影虎!!

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