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第一章 14、美少女 集結!

人は何か大きな壁に直面した時にこそ、その人物の真価が問われるものである。

直向(ひたむ)きな咲良と生真面目な茜はどう決断し、どう行動するのであろうか。

そしてこの一件に片足を突っ込んだ形となった軍司は、このまま関わってよいものかどうか考えあぐねていた。



火花のイヤリングの真の意味。


過去の災いを切っ掛けに現れた使者、山吉の存在。

先に発覚していたまこと・栞菜・姫子の選ばれし巫女達。


秘伝乃書をして予見していた巌鉄斉と重要なアイテムである神器・黒鐵。


まことの兄・柊一と権爺、それに萬屋が絡んだ三条伝記に記された内容。


そしてあの謎の蜃気楼の正体が三条城であったとゆう事実。

それらが紡ぎ合い最後に咲良と茜に辿り着いた。



「ねぇまこと、お祖父さんにはこれから3人を連れて行くの話してあるの?」

「えぇ、柊兄に連絡してあるわ。主だったメンバーは集めておくと、返事が来たわ」


5人はぞろぞろと歩きながらも、ついにまことの自宅へ到着した。

いつもと違いこの日のまことは玄関を横切り枝折戸(しおりど)から小降りな庭へと皆を引き連れて行った。

庭に面した縁側から室内が(うかが)えたか。



今日は部屋の真ん中に大きい座卓があり、最奥に巌鉄斉、その右側に権爺・萬屋()()()()、左側に柊一・山吉・姫子の順で座っていた。



「皆さんお待たせしました。最後の巫女2人を連れて参りました!」


まことは揚々と皆に向かって言った。

3人組は各々(それぞれ)挨拶すると部屋に招き入れられ、なおも弾む声でまことは咲良と茜、そして軍司を紹介した。

室内にいた面々は各々(おのおの)が笑顔を作り、頼もしげに3人組を見詰めている。



「ようこそ参られたの。ことの次第は聞いておるかの?」

「道すがら話しはしてあります!」


その言葉にまことが端的に答え、巌鉄斉はまことと栞菜と同じ様に、まずは本人達の胸中を語らせようとした。


最初に茜を促した。

だが茜は(うつむ)き、(しばら)く黙り込んだことにより、いっきに場に緊張が張り詰めたが、意を決したかのように顔を上げた茜は口を開いていく。



「突然のことでまだ少し混乱しています。支離滅裂になるかもしれませんが…………」


と、前置きした上で話し出した。


何の取り柄のない、自分のようなただの高校生が何を出来るのか。話を聞いてからずっと考え、驚きと不安がいっぱいで正直困惑していると語り、親友である咲良とずっと見続けてきたあの蜃気楼が、もう何年も前から見えていた三条城が自分達に危急を訴えていのだと知りさらに驚いていると言う。



「初めて蜃気楼が見えたあの日、スゴくワクワクして、2人で友達や家族なんかに幾度となく見てもらったりして…………」


茜はうつむきながらも続ける。



だが蜃気楼が見える人は2人を除いて一人もいなかったらしく、逆に2人は()()()()扱いされるようになったという。

誰も信じてはくれず、話も真面目に聞いてはくれなかった。

いつからか咲良と2人だけの秘密として心の奥に仕舞い込んでいくようになったのだ吐露(とろ)した。



「だけどここには私達と同じようにあの蜃気楼が見える人や、それを信じてくれる人がいる! ただそれだけで嬉しくって…………私のような人間がどこまで何が出来るのかわかりませんが、協力します! 過去へ行きたいと思います!」


最後には決然と言い切った。



「ずっとそんな思いをしてきたんだね。大町さんは」

「ワシは信じるし、協力は惜しまんぞい!」 

「そなたの決意に深く感謝する。ここにいる者は全員味方じゃ!」


柊一と権爺、そして厳鉄斉の温かな言葉と柔らかな笑顔が茜に安心を与え、視線は咲良へと移っていく。


茜はついさっき知り合ったばかりの人々がこんなにも心強い存在になるとは思わず、勇気が湧く思いだったに違いない。

そして巌鉄斉に視線を向けられた咲良は、ここでもまたキリッとした顔になり普段とは違う雰囲気で思いを語りだした。



「茜がいった通り、あたしもワクワクドキドキしてました! だけどそれがどうしてなのかはわからないままだった…………」


自分こそ平凡な高校生であり、1人では何も出来ないことを自覚していると話す咲良は、マルシェにボランティアで行ったあの日。自分の好きなものや、大切な事を大勢の人に伝え、頑張ってマルシェを盛り上げている人々。

そしてそこで楽しんでる人達を見た時に、自分も何か出来ればと感じたと述べた。



咲良は途中で言葉を詰まらせながらも、また語り出す。


「焦ってばっかりで、考えてはみたけどバカだからやっぱり答えがでなくて。だけどここへ来る途中、まことさんから話を聞いて気づいたんです。あぁ何も自分1人で何かをしよう! って無理に悩む必要はなかったんだなって。この町の中で自分なりに出来ること、やりたいことを見つけて、それを諦めずに()()と一緒に成し遂げてみせることが自分の役割なんだってそう感じたんです」



珍しく潮らしくなった咲良は、そのきっかけをくれた軍司には何気に感謝してるのだと述べ、最後には拳を握って宣言した。



「あたしは過去のこの三条を救いたい! ()()三条を守るためにも、5人で力を合わせて困っている過去のこの町を救いたい!」



「よう言うてくれた! 何とも頼もしい限りじゃ! しかし我らが世界を救う要の巫女達が揃いも揃ってこれほどど見目麗しいとは思わなかった!」


一同は山吉のその言葉に全会一致で賛同したことは言うまでもない。



とにかく咲良の心の叫びは、真っ直ぐ少女らの胸に響いた。

危険が伴わない保証はどこにもない。

だが咲良の言葉は、10代の多感な時期に厳しくも過酷な運命を背負わされた少女達を勇気付けるに値する言葉であっただろう。



いくら言葉ではワクワクドキドキしていると言ってみても、戦国時代を早く見たいと言ってはしゃいでみせても心の奥底では絶えず不安は付きまとっていた。

咲良の言葉は見事にその不安を払拭し、不安と迷いを希望と熱意に変え得た。



(そうだ、私達は一人じゃないんだもん!)



咲良の燃え盛る叫びに呼応した少女達はゆっくりと立ち上がり、澄んだ瞳に静かに、だがしかし熱い闘志を燃やしていくのであった。




次回 15、誕生!越後の国の鍛冶ガール!

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