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第一章 12、再会part2

 いつもの聞き慣れたチャイムが鳴る。


 始業式が終わり、長い授業が終わると部活動に(おもむ)く者、連れ立って下校するグループ。

 教室に残り、夏休み中の思い出を語り合う仲良し組と千差万別であった。



 咲良と茜はまことと劇的な再会をとげ、放課後正門前で落ち合う約束をしていた。

 そう咲良達が通う学校の生徒会長が、なんと鍛冶道場で知り合った鍛冶町まことであったのだ。



「しっかしお前らがウチの生徒会長と知り合いだったとは驚いたぜ」

「私達もビックリよ。マルシェのボランティアで知り合ってそれっきりだったんだよ。ねぇ! 咲良」

「うん。どっかで見たことあるなぁってずっと思ってたけど、まさかウチの生徒会長だったとはねー」



「知り合った時は(まげ)をしてたし、雰囲気が全然違うしね、けどなんかスッキリしたよ。それに恥ずかしい思いをしちゃったわよ……んで軍司は今日は部活?」


「なるほどなー。確かに全校生徒の注目の的だったよな、お前ら! 今日は部活はねぇよ。明日っから地獄の稽古よ! けどちょいとした知り合いの、あの()()な会長がお前らになんの用事があんだろうなぁ?」



「わからないけど、私も咲良もまたゆっくり話してみたいって思ってたしちょうど良かったわ!」

「てか有名ってどうゆう意味? 軍ちゃん」


 軍司は半ば(あき)れぎみに咲良を見ると説明しだした。


 成績優秀、スポーツ万能。そして容姿端麗(ようしたんれい)才色兼備(さいしょくけんび)と非の打ち所がないのが生徒会長・鍛冶町まことだと語る。

 その人気は本校だけに留まらず他校の男子学生にまで人気があるらしく、ファンクラブなるものまで存在するのだそうな。

 そして最後にはまことの豊満なバストを思い描くと鼻の下を伸ばした。



「へぇーまぁ確かに綺麗だし絵になるって感じよね! ていうか軍司やらしい……」

「ほんとスケベー! だけど鍛冶やってる時なんかほんとカッコいいしね!」

「なっ、なんだよ! お前らが何も知らねーっていうから説明してやっただけだろうが!」



 慌てて取り(つくろ)った軍司は、そんな会長がいつも一緒にいる友達がまた個性的なのだと補足する。

 普段は物静かな大人しいメガネ女子なのだが、何かの拍子に性格が激変してしまう、まるで二重人格のような先輩なのだと言う。


「黙ってりゃそこそこ綺麗なんだよな、これが」

「二重人格ぅ!? おもろい友達がいるんだね、まことさん!」

「会長の友達までチェック済みだなんて本当にやらしいわね!」

「ぐっ……いや、それは…………」



 何も知らないと言う2人に親切に教えたつもりの軍司であったが、株はだだ下がりとなりガクッと落ち込んだか。


 3人はその後もこれから会う生徒会長・まことの話題で持ち切りとなる。

 そしてまるでこれから出会うことを察知しているかのように栞菜の話にまで及んでいた。



「あっ来た!」


 咲良が目敏(めざと)くも、まことを見つけた。

 まことは生徒玄関を出ると校門までの(わず)かな距離の間に何人もの生徒から挨拶されたり、話し掛けられたり、中には何か手渡して行く生徒の姿も見受けた。



「本当だ。人気者なんだねー」

「だろ? 人望もあるってわけよ。それに一緒に歩いてる()()がさっき話した二重人格の友達だぜ」


 まことはやっとの思いで咲良達のいる校門まで辿り着くと、喜びを隠せない表情で話かけてきた。



「お待たせ。咲良ちゃん茜ちゃん! 元気だった? ()()会いたかったわ!」

「お久しぶりです! まことさんもお元気そうで!」

「それは私達もですよ! なんだかまことさんのことはずっと前から見覚えがあるなぁって咲良と話してたんですけど、生徒会長って分かってスッキリしました!」


 久しぶりの再会を果たした両者は、初顔合わせの互いの連れ合いを紹介し始めた。



「紹介するわね、私の友達の五十嵐栞菜よ」

「あっこっちは小滝軍司っていって同じクラスの友達です」

「すこしスケベですけど軍ちゃんって呼んで下さい!」

「こらこらスケベは余計だろが! 軍ちゃんなんて呼んでるのはお前だけだろうが咲良」

「よろしくね、小滝君!」

「おっ押忍!」

 

 校内の有名人に笑顔を向けられた軍司は、少し赤面しながらも体育会系の返事をしたが、視線は胸元に釘付けだったことは言わずもがな。



「よろしくお願いします、五十嵐先輩!」


 と咲良と茜が栞菜に挨拶すると、コクンと頷いた栞菜はおもむろに鞄から大福帳を取り出し、まことはその動きに敏感に反応したか。


(いきなり出たわ栞菜メモ!)



「そんな他人行儀な挨拶はやめてちょうだい!」


 と、突然声を張り上げると大福帳を左手に持ち、右手の人差し指を高らかと突き上げ、通称|()()()()を読み始めた。



「一ノ門咲良、本成寺中学校出身。成績は中の下、運動神経はそれなり。少々鈍感ではあるが、明るい性格で物怖(ものお)じしない。猪突猛進(ちょとつもうしん)で、いつも周りを振り回すタイプではあるが、誰とでも分け隔てなく接する姿にクラスメートは勿論、他のクラスの子も好意を持って接している……と。その天真爛漫(てんしんらんまん)さは結構モテるとかモテないとか! 趣味はバスケ。三条市初の三人制プロバスケットボールチーム・ビーターズの熱狂的ファンとして日々応援している。特技は早寝、早食い。と、こんなところかしら?」



 どうやら2人のことをまことから事前に聞かされていた栞菜は、好奇心からか彼女達のことを調べ上げたようだ。

 そして唐突に人物評されてしまった咲良は目が点になってしまっていた。



「スゴい! 全部あたってますね! そうなんですよ、鈍感なんですよ! それにいつも振り回されてるんです」

「ナハハッ! 特技が早寝、早食いってなんだよ!」


 何故か水を得た魚のように茜と軍司は栞菜の人物評に大いに賛同し、何度も頷いていた。



「鈍感は茜じゃん! 早寝はなんとかの得っしょ!?」


 咲良が唯一反論したのはそこだけであった。


「それに成績だって軍司よりかはマシだし!」


 聞き捨てならないといった表情で軍司は咲良に詰め寄る。


「こらこら、お前は下の上くらいだろ!いっつも俺より下だろうが!」


 聞き捨てならないといった表情で茜も軍司に詰め寄る。


「こらこら、あんたらは下の中くらいでしょ! いっつも私が教えてるにも関わらず赤点ギリギリでしょうが! それに私が鈍感だなんて聞き捨てならないのは私よ、咲良!」


 茜に突っ込まれた2人は、笑いを(こら)えるまことを見ると頭をかきながら黙り込んで恥ずかしそうに赤面した。

 そしてそんなやり取りは一切お構いなしにメガネをギラつかせた栞菜は続ける。




「大町茜、同じく本成寺中学校出身。成績優秀、運動神経も上々、責任感が強くまとめ役的ポジションでクラスメートからの信頼も厚い。中学時代は陸上部に所属、高跳びの選手としてかなりの成績を残していたようだが、中2の秋の大会で足首を負傷。復活を期待されたが、その後何故か復帰はしなかった。理由は定かではなく、高校では幼馴染と共に帰宅部を決め込んでいる。スタイル抜群で(うるわ)しい容貌(ようぼう)からか、校内での人気はウナギ登りであるとか、ないとか」



 そこまで一気に語り終えると、どこでしったか茜のモテエピソードとして、夏休み前にサッカー部のエースでキャプテンから告白されている事実を述べ、さらにはその場で断っていると披露した。


 自分のことを言われた茜はやっぱり黙り込んで赤面してしまった。

 しかしそれを聞いて狼狽(ろうばい)したのは軍司で、慌てて茜の肩を揺さぶった。


「おいおい、なんだよ! 誰だよソイツ?! 聞いてねぇよ俺は! キッチリ断ったんだろうな? 茜ッ」

「ちょっちょっとぉ! よく知らない人だったし、咲良を待たせてたからソッコーで丁重にお断りしたわよ。ていうかなんで軍司にそんなこと言われなきゃなんないのよ!」



「バッカお前、どこの馬の骨かもわからねぇ野郎に茜が言い寄られてたなんて許せるか! ソイツにきっちり落とし前着けさせてもらわなくちゃなぁ」


 と、例え上級生であろうとお構い成しに軍司は凄んだ。

 咲良は軍司が茜に想いを寄せていることを知っていたのでクスクスっと笑った。


(まったく茜は……鈍感なんだから)


 と心の中で溜め息をついた。



「サッカー部のキャプテンって下級生に人気よね? 栞菜」

「えぇ、でも女ったらしで有名よ。自信満々でコクってフラれた(あわ)れな男さね」


「咲良ちゃんを待たせてたから断るだなんて茜ちゃんも面白い子ね。それに3人揃うと面白さも倍増ね」

「そんなことより続きを読むわよ! 次は小滝軍司!」



 争っていた3人は身を(すく)めて縮こまった。

 栞菜はちゃっかりとついでに調べ上げた軍司についても大福帳を左手に持ち、右手の人差し指を突き立ててウンチクし始める。


(栞菜スタイル再起動!)


 またしてもまことは心の中で(つぶや)くのだった。



 

 次回 13、激白は冒険の始まりですね?

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