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終29、ラスボスって最後に時限爆弾的な物を残しがちだよな

 大勢の視線を受ける三条城はゆっくりと浮上し、地上30メートルほど上昇したところでピタッと止まり発光を続けていた。


「なんだろ? なんか胸騒ぎがする……」


 城を見上げていた咲良は不意に、隣にいた影虎の手をギュッと握った。


 平時であれば皆一様にそのアツアツ振りを茶化す場面ではあるのだが、異常事態であることをひしひしと感じてか黙り込んで城を見上げていた。


 まとまらない考えを頭を振って結論を出そうと咲良は努めるが、急に浮上を始めた城をなおも見詰めるばかりだったか。



「何か起こるぞ、皆心しておくように!」


 やっと掴んだかに思われた平和は、何かを訴えるかのような城と、それぞれが抱えはじめた不安とで揺らぎだした。

 城から出る光がメラメラと真っ赤に変色した時、咲良のあっという声と同時に三条城は爛々と燃えるような光線を今や中天にまで昇った太陽目掛けて放った。


 眩しく直視出来ないはずの太陽をそれでも手をかざしながら見た咲良ははっきりとした声で言った。


「何か来る! 見て! た、太陽と地球の間に真っ黒な()()があるよ!」


 そう、太陽を覆い隠さんばかりの超ド級の隕石が地球目掛けて降下を開始していたのだ。

 開口一番に口火を切ったのは伴峰だ。


「そうか、俺らが止めていた()()な隕石はアレの破片だったってことだな!?」

「あ、あんな巨大な隕石をどうやって止めればいいの……」


 閃は諦めたかのように弱気な発言で姉である煌に問うが、煌さえも言葉を出せずにすぅーっと首筋に汗を流して立ち尽くしていた。



「むぅ無縁め最後の最後にあんなモノまで呼び寄せていたのか!?」

「巌鉄様、あの巨大な隕石を知ってるの?」


 一帆のすがり付くような声にコクリと頷きをくれた老爺は淡々と語り出す。


「あれは(いにしえ)の時代より伝わる魔の星! 漆黒星(しっこくせい)じゃ」

「!? 聞いたことあるぞ……あれが伝説の漆黒星ってヤツなのかよ」


 龍神らは放心したままそれから一切言葉を発しなかった。

 神々の司令塔たる真羅八龍神らが言葉をつぐみ息を飲むしかない状況下で、他の神族や魔族らはさらに深い絶望にうちひしがれた。

 そしてそれは五柱神も同様であった。


 ところが咲良を中心に集まった鍛冶ガールらは至極当然のように言葉を交わし始めた。


「一難去ってまた一難ってことろね」

「嬉しそうね栞菜!」


 栞菜の顔を覗き込むように茜が笑顔で言うと、姫子もまた笑いながら、


「それは茜さんも同じですよ」


 と、ぶりっ子特有の内股にポージングした。


「あら、姫子こそいつもの可愛らしい猫かぶりそのままじゃない!」


 四季彩に指摘された姫子は顔を少し赤らめ、そのやり取りを見ていたまことは咲良に言った。


「どうする?」

「決まってる、あの黒い星を追い払う!」


 クスクスっと笑い合った鍛冶ガールらを、その他大勢が珍奇なものでも見るかのように、そして食い入るように熱視線を送る。


「じゃ、じゃがおぬしらの力を持ってしてもあの星の勢いを止めれるかどうか……」


 さしもの巌鉄斉でさえも諦めともとれる言葉を吐いた。

 それもそのはず、神々や悪魔、妖怪にとってそれだけ絶大であり、絶望の象徴として語り継がれてきたのが現在降下中の漆黒星なのだ。


 だが、咲良をはじめ麗しの美少女軍団は全くといっていいほど欠片も諦める素振りは見せず、むしろ愉しげでさえある。


 そして一歩前に出た咲良は予想もしていなかったことを呟いた。


「あたしわかっちゃった。天文に来てからずぅーっと胸の奥がむず痒かったんだよね。あたしは太陽なのよ」


 一瞬全体の空気が固まった。


「はぁ!? おい咲良、気は確かか!?」


 今世紀最大の呆れ顔で咲良に詰め寄った軍司だったが、キリッとした咲良に押し戻される。


「だからぁ、あたし達って()()()()()なんだよねぇ? だったらあたしは太陽だなって!」


 鍛冶ガールらはそれぞれが星を守護する天使なのだと巌鉄斉から話を聞いていた軍司は胸を撫で下ろし、


「な、なるほどな! そうゆうことな! よしっ咲良、太陽を使ってあのどす黒い隕石を返り討ちにしてやれ!」


 軍司に言われるまでもないといった顔の咲良は、チラッと影虎を見ると、ニコッと笑った。


「三条城の隕石はきっと太陽の破片だよ! たぶん、たぶんきっと!」


 断言したいのかそうでないのか分からずじまいの台詞を最後に、咲良は城目掛けて大きく跳躍し、真ん前で止まった。


 すると城から燃え盛る熱気が咲良を取り巻き、太陽の破片部分がマグマのように紅に染まり、また光を放つ。


「よし、三条城に乗ってレッツゴー!!」


 どこかで以前聞いたことのあるような抑揚の付いた言葉で高らかに宣言すると、天守閣屋根にガチッと片膝ついて体制を整えると、和釘で漆黒星を指し、


「いっくよぉー!!」


 と、最後の最後の戦いを1人開始していくのであった。


「ラスボスって最後に時限爆弾的な物を残しがちだよな……」


 軍司のボヤツキにもはや誰も答える者はなく、真っ赤に染まった咲良と城は太陽と地球の狭間で、絶賛落下中の漆黒星へと突撃していくのであった。



 次回 終30、ワシも私も! 俺もあたしも!


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