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 終26、決着! 本当はわかってただろうに

「おい! どうなったんだ!? 急に隕石が降ってこなくなったぞ」

「こちらもです。姉さんそちらは?」


「こっちも火山活動が停止したようですわ。海鏡、一帆そちらは?」

「こちらもです!」

「……こっちも同じ……」


「どうする? 煌。他の神族と魔族を集めて五芒星に戻ってみるか?」


 少し考えた後、煌は巌鉄斉と交信が途絶えたことに一抹の不安を覚えながらも手際よく指示を飛ばした。


「それぞれ協力してくれた者達と共に世界を回り被災地を視察! 困っている者があれば助力すること。それが終わり次第、五芒星を目指す!」


『了解!!!!』




「いっくよぉーーーー!」

「来い! 小娘と影虎っ」


 遂に始まったラストバトル、遠大な計画をして蓄積した膨大なエネルギー。その全てをぶつけるように黒龍・無縁はその残った力すべてを懸けて対峙する。


 かたや鍛冶ガールの力を1つに、咲良に託された希望の光は闇を照らすライトのように明るく天地を照らし出した。

 そして咲良と影虎は1つとなり真っ赤な球体となって無縁に衝突していく。


 暗黒球と火炎の球の激突の衝撃は凄まじく、激しく衝突し合う度に吹き荒れる爆風と、時折みせる激しい落雷と氷雨と大地を揺るがす大地震とを一気に巻き起こした。


 そのうち2つの球体は1つとなり、何人(なんぴと)たりとも近付くことを許さない超高速回転を続けた。

 固唾(かたず)を飲んで見守る一行は手に汗を握り、目を細めて戦いの行方を見守るばかりだった。


 そうこうしているうちに白夜は神族と共に馳せ参じ、千恵は妖怪やらと、天子は小悪魔やら小物達を従えて戻って来た。

 最後に各所の手配を終えた山吉が小隊を率いて集った。



「こ、これは……」


 山吉は軍司に駆け寄るとゴクリと唾を飲んで言った。


「いよいよ決着か……殿、ご無事の帰還を……」


 皆静かに、そして無言で両者の戦いに注視していくばかりであった。



 月は空に溶け込んでいくように見えなくなり、昇る朝日の眩しさに目を細めると、永遠に続くかと思われた最終決戦は終わりを迎えることとなる。


「これで最後だ! 咲良いくぞっ」

「わかってる! いけぇー」


 2人は様々な色が混ざり合う球体の中で、大きな和釘に全ての力を集中するように握り合うと、その一命を賭して渾身の一撃を放った。


 対する無縁もまた限界を遥かに越える力を出しつつ、最後の一撃を繰り広げた。


「勝負がつくぞ! 皆吹っ飛ばされぬように気をつけろっ」


「咲良、負けないで!」


「咲良さん」


「咲良……」


「やっちゃいなさい!」


「咲良、影虎様……」


 黄、青、緑、銀、金、そして赤い光が球体を内側から破くように大地に空にその光を放出しだした。


 黒い光がないことを確認した巌鉄斉は再び巨龍に変化すると、球体目掛けて飛んだ。


 巌鉄の鋭い爪が球体を割き、内部にて放心したように清らかな顔を浮かべる無縁と対峙した。


「無縁、気は済んだか」

「…………」


「本当はわかってただろうに……」

「……そうだな。お前達と戯れている時に気がついた。私も自分の気持ちに正直に、友であるお前にこの思いをぶつけていればよかったのだと……」



 巌鉄斉は霞みゆく旧友の肩を強く抱き締めると、


「今度は気の済むまで……解決の道が見つかるまで喧嘩じゃ! 無縁よ」

「あぁ……さて、ワシは姜月に会うことができるか……」


 その問いに巌鉄斉は答えなかった。


 いかなることがあろうと、例え大罪を犯そうとも消滅することなど許されない存在。それが真羅八龍神なのだ。


 天に召された姜月と永遠に会うことは叶わぬものと知っているだけに黙ってしまう巌鉄斉。

 いや、例え大きな過ちを犯したとてそれは叶わぬものと無縁も知っていたのだろう。


 両手を広げた無縁は巌鉄斉の封印の儀に素直に従い、消え行く時に空を見上げ、


「久方ぶりの太陽か……」



 巌鉄斉の心の奥底に残る残光は若かりし頃の思い出。



 心地よい風の中、大地から鬱蒼と茂る草むら。

 開けた草原は何処までも続いているように思えた。


 神族の青年二人と魔族の少女は互いに笑い合い、いついつまでも他愛ない話と理想を語ることをやめなかった。



 青い星、地球が涼風と真っ白な光に覆われ、黒龍・無縁はここに封印されたのであった。



 

 次回終27、姜月、昇天

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