終25、ブラックホール消滅! 対峙、無縁
「い、いきますよぉ! 瑞鏡止水波!!」
漆黒の大地に鮮やかな青い小波が起きた。
「よしっ! 続けて美人さん!」
かねてからの予定通り、気を高めていた乙女・茜は少し頬を赤らめると雷の弓をして技を繰り広げた。
「雷神矢」
一本の稲妻がブラックホールのど真ん中に命中。
「次は戦女神! 行けぃ」
「はいっ! 大地鳴動! 金剛五月雨突!」
四季彩の連続突きはブラックホールを目掛けて大地を迸る。
その瞬間、瑞鏡止水波も雷神矢も飲み込んだかと思われたブラックホールにピキピキッとヒビが入ったのを天狗は見逃さなかった。
「よしよし、思惑通りじゃ。ネオ栞菜ゆけーい」
「な……ネオ栞菜ってなによぉ! えぇーい、白銀閃光弾っ」
栞菜の放ったそれがブラックホールに命中した時、先に命中していたそれぞれの技のテーマカラーがバリバリっと音を立ててブラックホールの内側から漏れ輝いた。
ブラックホールは4つの聖なる力を受け、歪んだ空間を修正しようと形をもとに戻そうとしているようだったが、ひび割れた箇所が徐々に広がっていき、最後にはガラスが割れるかのようにバラバラに砕け散った。
「よし、そこで奥義じゃ」
天狗の喚き声に対し、準備よろしく鮮やかな緑色の高貴なオーラをまとったまことは、飛び上がると粉々になり中空を彷徨うブラックホールの残骸に向けて奥義と呼ばれる新たな技を繰り出した。
「消滅してちょうだい、真空切断!」
まことの手刀はトルネードを巻き起こし、一閃するとブラックホールの残骸を絡め取るように天高く舞い上がり大気圏まで昇ると浅緑の爆発を起こしてブラックホールを跡形もなく消し飛ばした。
「やったぁ! すっごい技ね」
「凄いですわ! まこと殿」
「流石まことですね」
「や、やるわねぇ。まことも……」
それぞれまことの奥義を目の当たりにして驚きと喝采を送った。何故かライバル心剥き出しの栞菜に寄り添うように疲れきったまことは微笑を含んだ汗だくの顔を近付けた。
「あとは無縁をなんとかするだけね……」
もたれ掛かったまことを介護しながら5人は、今もなおスパイラルを繰り返す方向へ視線を向けるのであった。
「巌鉄! 見ての通りブラックホールは消滅した。次はどうする!?」
無縁もついつい咲良+影虎+軍司の掛け合いに夢中になっていたことで虎の子のブラックホールを手離すはめになったことに今更ながら気付いた。
「我の力作、次元の狭間が消されるか……」
そしてスパイラルにて防御係りに徹していた巌鉄斉は息を切らしていた。攻撃と攻撃と口撃に対して守りは巌鉄斉のみだ。
「ぜはぁ……なんかワシだけ貧乏くじを引かされた気分じゃ」
しかし自由闊達に動き回った咲良と影虎、自由気ままに悪態を突き切った軍司は日頃の毒素をほどよいスポーツで汗と共にデトックスしたように晴れやかだった。
そして無縁もまたこの時ある感情を抱いていた。
(そうか、もっと早くにこうしてはいればよかったのか……)
おそらく今日ほど己の陰湿で暗い性格が鬱陶しいと感じたことはなかったに違いない。
「はぁ……ならばあとは総力戦! 皆の力を一つにし、無縁にぶつけるのみ! 力比べで勝った時こそが封印の時! そこのピンピンしとるバカ娘に力を注ぎこめい!」
鍛冶ガールは今1つとなりて宿敵無縁にその思いをぶつける時がきた。
「咲良さん、お頼み申します!」
ぶりっと両手を合わせる姫子。
「やっぱり最後はあんたよね!」
友達を信じる茜。
「頼みます!」
今や、なくてはならない存在、四季彩。
「ちゃっちゃっと終わらせてよね」
言葉とは裏腹に、固い信頼をよせる栞菜。
「今わたし達の思いを1つに!」
咲良の底知れぬ力を見抜き、信じ続けたまこと。
それぞれの思いが強く、そして数多の光を通して咲良に届く。
咲良が携えていた神器・黒鐵は、鬼が振り回す金棒のように形を変えた。
「なんだぁ? 咲良の金槌が変わったぜ!?」
「和釘だわ! 三条の鍛冶の象徴よ!」
「だけどなんで!?」
「おそらく皆々の霊気を受け取ったことで己の出力が臨界を突破。その片鱗じゃろう……」
咲良のオーラは真っ赤に燃える炎の中にそれぞれの魂ともいえる能力を携え無縁と対峙する。
「よし、乗れ! 行くぞ咲良!」
「うん! みんなの思いを受け取ってよねぇ!」
未曾有の危機に瀕した天文と令和間の決着をつけるべく、両雄は全ての力を持ってぶつかり合っていくのであった。
次回 終25、決着! 本当はわかってただろうに……