プロローグ
「ここが、アストライアCo.」
そこには地面から空に向かって、そびえ建つ、一つの山のような大きさと形をした建物があった。
「デカイなぁ」
その外見に見惚れ、しばらく眺めていると、横から男性が声をかけてきた。
「お前、ハルトって奴か」
その男性は、キツネの様な顔をしていた。
「そうだけど」
「あの記事に載っていたことは本当か」
「あの記事ってなんのこと」
「お前、ウーティスの国出身だったな」
「そうだけど」
「あの国は好きじゃない。外の情報は入れず、中の情報は外に漏らさず。自己中心的な考えで行動する奴らしかいない」
「それは過剰な捉え方をしてるよ。1人2人が自己中な行動を取ったからって、みんながそうだとは限らないだろ」
「そんなのはどうでもいい。アドゥcorp.を1人で潰したって言うのは本当かと聞いている」
『外の記事にもルイスって名前は出てないんだ…』
「あの記事は誇張されてる。ボク1人でそんな事は出来ないよ」
「やっぱりか!お前みたいな弱そうな奴がそんな事出来イッダーー」
「あれお取り込み中だった?」
颯爽と現れた美少年はキツネの顔した男性を機械馬で踏み付けていた。
「いや、どうせ2秒後には同じ様になっていたと思いますから」
「同じ様とは?」
「あなたが今その機械馬でしていることをです」
ボクがゆっくり視線を下げ、相手の視線を誘導するとその人は慌てて機械馬を降り詫びた。
「大変申し訳ない。決して悪意があった訳ではない。だからこの馬を許してやってくれ」
180センチぐらいの身長でサラサラの金髪と金色の瞳が印象的なその美少年は、馬が本能で踏み付けてしまったと思っている様だ。
「機械に、理性なんてある訳ないだろ」
「君は、理性がある機械を見た事があるのか」
「ない、あるわけない」
「この世界のすべての機械を見た事はあるのか」
「見れるわけないだろ、新しく造られる機械だけでどれだけいると思ってるだ」
「それでは証明が出来ていない。見た事がないから存在しないでは証明になっていない。それは君が知らないだけと言う可能性が出てくる。それにーー」
「なんなんだよお前は!ここの入社試験はこんなイカれた奴ばっかりなのかよ。お前らが受かるわけない!とっと帰れ」
キツネ顔の男はそう言い捨てて、何処かへ行ってしまった。
「君はどっちだと思う?」
「う〜ん。これから出てくる、かな」
「なるほど。ちなみ“この入社試験はイカレタ奴ばかり”と言う質問だったんだけど、その答えであってるかな」
「…すでに目の前にいるっていう答えに変えるかな」
「わたしも同じ答えだったよ」
「あなたの目の前にいるイカれたヤツはハルトって名前だ。よろしく」
「なるほど。ハルトの前にいる美少年はレナン・オルダヴィンだ。よろしく」
ボクとレナンは握手を交わした後、共にアストライアCo.に入っていった。