1-7 「お前を試す」
「ち、違う! 僕はただ、ザウルさんに憧れて……!」
ユーマは自信があるはずなのにも関わらず、自分に言い聞かせるように言葉を放っていた。家を囲んでいる木々の揺れる音が段々と大きくなる。
「そうか」
テオはそう言うと、手に持っていたジョッキを置いて少しひらけた広場のようなところまで歩いていった。そして彼は言い放つ。
「じゃあ、お前がただ恨みに凝り固まっていないか、その証明をしてもらおう」
「は?」
「今からお前の強さを試す。俺と一騎打ちだ、ユーマ」
ユーマは口を開けたままポカンとしていた。何か核心を突くような言葉でも言い放たれるのかと思ったのだろうか、安堵が混じったような、しかしあくまでも険しい顔つきに変わりテオに問いかける。
「いや待って、待って父さん。全く話が読めないんだけど……。父さんと僕が戦う?」
「なんだ、読めてるじゃねえか。旅に出るためのテストだ、俺と一騎打ちでお前の実力と強さをはかる」
テオは肩をぐるぐる回しながら準備運動をしていた。しかしユーマの方はそのまま座り込んだままだ。
「待て待て待て、仮に父さんと戦うとして、あんた酔ってるだろ!? それに僕は魔王になるために元魔王にまで修行つけてもらってる! 父さんにケガさせたら母さんが何て言うか──」
「大丈夫だ」
テオはまたもやユーマの言葉に対して食い気味に自信たっぷりの言葉を放つ。ニヤっとどや顔をし、これから遊ぶのかというほどの雰囲気の緩みっぷりだ。
「酔ってても俺はお前の10倍は強い、安心しろ」
自分との一騎打ちだというのに、自身の父親の緩みきった雰囲気と今までの言動で、ユーマはなんだか全てを馬鹿にされたような気分になった。
さすがに彼の堪忍袋の緒が切れたのか、ユーマは自身の親に対して親の仇かのように表情を強張らせていた。
「わかったよ」
そう言ってユーマはタキシードの上着を脱ぎ、勢いよく立ち上がった。
「動けなくなるぐらいの怪我しても知らねえからな! 自信過剰親父!」
「ハッ、自信過剰なのはお前の方だユーマ! 傷1つ受けないで勝ってやる、バカ息子」