ある者の語り。この世界について。
昔、世界がある戦争によって3つに分断された。
ある戦争――『魔神大戦』と後に呼ばれるようになる世界規模の争いは、大きな二つの派閥のぶつかり合いによって起こっていた。
さて、大きな二つの派閥について話す前に、少しだけこの世界について説明しよう。まず、ここには多くの種族が過ごしている。
平均的な能力が特徴的なニンゲン。獣の姿でも二足で立ち、高い身体能力と感覚をもつ獣人。そのほかにも妖精、魚人、悪魔や天使など他にもいるが、とにかく様々な種族が存在している。
後は、これを説明しなければこの世界を紹介したことにはならないというほどに特徴的なものがある。「魔法」と「スキル」というものだ。
魔法というのは、例えば何もないところから火や水を発生させたり、植物を急激に成長させたり、他人の治癒に力を貸し即座に傷を癒やすことができる世界に存在するものを作り出すことのできる力のこと。
細かく言うと、何もないわけではなく魔素という特殊な物質が空気中や物体、生物の体内などに含まれていて、それを消費して魔法という力は発揮されている。
一方のスキルとは、簡単にいうと「魔法ではほぼ実現不可能な能力」のことだ。
さらにこのスキルというのは、同じ能力を持った人物は存在しない。スキルはその人特有の能力なのだ。
また、スキルは全員が持っているわけではない。スキルを持つ者はかなり稀。このスキルをもつ人物はこの世界で基本的は特別扱いされる。
つまり、スキルという力を持っている者はこの世界において強者でいられる可能性が高いと言えるだろう。
あまり説明が長いと飽きられるのは当然だが、もう少し私の語りに付き合ってくれ。
話を戻そう。
二つの派閥──1つ目は叡智と才を司る『神の樹』を中心とした、『勇者候補』と呼ばれる神の樹に選ばれた者たちによって構成された勇者軍。
2つ目は創生と破壊を司る『影の樹』とその影の樹が選んだ6人の魔王が中心とした魔王軍の二つ。その二軍は数十年もの間、休むことなく戦いを続けてきた。
争いは拮抗し、勝敗がつくことなく長い戦いは終わりを迎え、結果、世界を分断しお互いの領域をつくるということに落ち着いた。
そのため、闇の世界、光の世界、そしてその間に位置する中立の世界、合計3つの世界が誕生した。
それからもお互いは力を蓄えては戦争を繰り返して、今の時代――魔法とスキルという一個人が持っている特別な力を中心に使うようになっている時代に落ち着く。
この物語はこの時代に君臨するある1人の男とその仲間たちが紡ぐ伝説級の話。
いや、伝説は言い過ぎかもしれない。
しかし、必ず後に語り続けられるであろう物語。
魔王と勇者。相反するものであろうこの二つの職業。重なり合う、つまり兼業すると一体どうなるのだろうか。
これは、その答えを見つけ出せるお話。
なのかもしれない。




