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世界の半分をくれてやろう・・・!

作者: クロット

魔王の娘、バラリルカ。彼女の父は先日、寿命で死んだ。


「魔王がいなくなって、世界が平和になっては我等が配下の魔物数万体は食い扶持に困ってしまいますぞ!!別に魔王と言っても座ってるだけで良いのです。どうせ四天王を破りここまで到達した者などこれまで300年間一人もいないのですから。」

大臣はバラリルカに進言した。


まあ、それなら・・・と、大臣に言われるがまま父の跡を継いだ彼女にはまるっきり戦闘能力は無かった。




だが、数週間後・・・。


「我が名はビッツイーン!勇者の名の元に魔王を討伐しに参ったぞ!!」


呆気なく四天王は敗れ、勇者は魔王の城へ突入して来た。


「なっ・・・それじゃあ我が四天王は敗れ死んだと申すか?」

バラリルカは困惑しながら問い掛けた。


「無論・・・!だが勇者たるもの無駄な殺生はせん、彼等は無事だぞ。倒すのは諸悪の根源たる魔王だけで十分だからな。」


「そ、そうかっ・・・!」

頷きながら、バラリルカは大臣の耳元に口を近付けた。


(ちょっと!話が違うじゃない!!)

(まさかこんな事が・・・かくなる上はこの私めが・・・!)

(バカっ!四天王に勝てないのにアンタなんかにどうにかなるわけないでしょう!!)


「・・・どうした。もう戦いを始めても良いか?」

正々堂々とした勇者はじっと待っていた。


「・・・う。」

バラリルカは必死に思考を巡らせた。

このままでは殺されてしまう。


しかしここで、彼女は閃いた。

彼女の中を流れる魔王の血が・・・その考えを浮かばせたのだ。


「ふっふっふ・・・流石は勇者、やりおるよのぅ。して、どうかな?余の配下に降っては。勿論タダでとは言わん。・・・世界の半分をくれてやろう。」


(魔王様っ!!そのセリフは速攻断固拒否される奴ですぞっ!!)

大臣は惑った。


「・・・。」

勇者は何も答えず、黙り込んだ。


あまりの暴論に流石の勇者も呆れるほど怒っているのでは?

大臣は溢れる汗を抑えきれなかった。


ドキドキ・・・

バラリルカは張り裂けそうな緊張をひた隠し、荘厳な感じを出し続けた。




・・・そして。


「・・・良いだろう。その話、乗った!今日から私はお前の部下だっ!!」

勇者は満足そうに帰っていった。



「・・・何とかなったわね。」

「・・・なりましたな。」


二人はほっと胸を撫で下ろした。



だが、また数週間後。


「我が名は勇者エルティアン!!魔王!その命、貰い受けに参りました!!」


「・・・ほ、ほう。では四天王と邪悪勇者ビッツイーンをも打ち破ったと言うのか?」

バラリルカは恐る恐る尋ねた。


「勿論!皆僕の力を認めると道を開けてくれましたよ!!」


「そ、そうかっ・・・!」

バラリルカは大臣に耳打ちする。


(ちょっと!!おかしくない!?てゆーか四天王弱過ぎよ!!)

(むむう、こんなはずは・・・)


こうなれば・・・手は一つだ。


「あー・・・おほん、やるようだのう勇者。どうかな?(彼女の)世界の半分をくれてやるから余の配下にならんか?」

「・・・。」


ドキドキ・・・

バラリルカは目が泳ぐのを必死にこらえ勇者の返答を待った。


大臣は、流石に二回目はキツイだろうと顔を背けてしまった。




・・・だが。


「分かりました!その提案、受けましょう!これから僕は貴方の配下です!!」

勇者は、がめつかった。


「何とかなったわね・・・。」

「し、しかしこれで我が領土は4分の1になってしまいましたな。」


二人はほっと一息ついた。




それからも、週一位のペースで勇者は現れた。

その度に、バラリルカは世界を半分渡して乗り切った。

どうもこの世界の勇者は、勇者と呼ぶには正義感に乏しいらしい。



魔王バラリルカの領土はどんどん縮んでいき、遂にはほんの一軒家程度になってしまった。


二人はもう、魔王と大臣というよりは・・・少女と執事のような・・・。


もはやこうなれば、魔王といえど狙う価値もほぼないはずだ。勇者も流石に来ないだろう。




でも来るんだなあそれが・・・。


「俺の名は勇者アルバデイト。魔王サマよう、その命頂き受けるぜ!!」


「ほう、では四天王と326人の邪悪勇者を全て討ち滅ぼしたと?」

「ああ、でもどいつも気の良い野郎でよ、打ち解けちまったぜ。昨日の敵は今日の友って事だな。」


はあ・・・

とバラリルカは溜息をつきながら大臣に耳打ちをした。


(奴等揃って私から領地を奪おうとしてるんじゃないか?)

(滅相も無いとは・・・言いきれないかもしれませぬな。)


「さてと、それで勇者よ・・・貴様余の配下にならんか?代わりに世界の半分を・・・」


しかし、ここで大臣がバラリルカの袖を引っ張った。


(もう無いですぞ。)

(・・・へ?)

(分け与える領地が、もう無いですぞ。)


バラリルカはぽかんと一瞬口を開けていた。

そうだ、もうこの一軒家しかないのだった。


「・・・むむむ。」

「どうした?ぶった斬って良いのかよ?」

惑う魔王を勇者が急かす。


「ちょっと待っておれ!!」

魔王は逆ギレでそれを制した。



必死に彼女は思考を凝らした。

確かにもう与える領地は無い。

でも何か・・・まだ何か残っているような・・・。



はっ!と、彼女は閃いた。


「そうだな勇者よ・・・やはり貴様は余の配下になれ。勿論タダでとは言わん、代わりに・・・」


ふわっと、魔王の頬が赤くなる。



「余の人生を半分、くれてやるっ!」


「・・・。」

勇者は黙って考え込んだ。


(何とっ・・・!!)

大臣はあんぐりと口を開けた。




そして・・・!



「良いなそれ。よし、じゃあそうしよう!これで俺はお前の配下だっ!!その代わりてめえの人生半分貰うぜ。・・・結婚しよう、魔王サマ。」


勇者がニヤリと笑うと、魔王も頷いた。

そして二人はゆっくりと、唇を交わした。




こうして世界は魔王の名の元に勇者達によって支配された。

故に人間も魔物も、どちらもそれなりに良い感じの生活を与えられた。



そして当の・・・魔王バラリルカはというと・・・


「良いから俺にやらせとけよ、たまには寝てて良いっての。」

「いーや、掃除も洗濯も半分は余の仕事じゃ貴様には任せておけん!」

「私めにも何か仕事を・・・。」


最強の勇者(だんな)と一人の大臣(しつじ)と共に、小さな家で幸せに暮らしましたとさ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 軽快に読める天丼ネタはニヤッとさせられますね [一言] のじゃロリですか?
[良い点] このようなハッピーエンドもありですね [気になる点] 一番最初にたどり着いたビッツイーンが断トツ一番の領地を持っていて勇者達同士争わなかったのだろうか。『我が名は○○!!』とか言われながら…
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