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ねこだん!  作者: 藤樹
99/218

094 野営料理と月光熊

 九層へと降り立ちルシアナが扉を調べた後に、リアーネが通路の様子を魔法で地図にしていく。

 一通り作業を終わらせれば本日の探索は終了として、野営(キャンプ)の準備に取り掛かるのだった。


「リーネ、警戒の魔導具どこに置けばいい?」

「んー……、扉の向こう側と階段を少し上がったところかな」


 階段と二つの扉の先に設置した魔導具が魔物の接近を知らせてくれるようにして、まずは食事の準備を進める。

 卓に食材、コンロなどを出して手早く調理を始めると、オスヴィンから声がかかった。


「なぁ、お前ら? 迷宮探索中なんだが?」

「うん……? ご飯食べないとお腹減るよ?」

「ん。野営(キャンプ)なら行動食じゃなくて、ちゃんとしたご飯を食べたい」

「だよねー。ボクももうお腹減って献立考える気も起きないよ」

「だからって、塩胡椒だけで肉を焼かないでよー。余計お腹減るー」

「そうなの! ルーナはみんなのことも考えるの!」


 グググゥゥーー………と、盛大にお腹を鳴らしながら五人は料理を続けるのだった。


「いや、俺が言いたいのはだ、こんなに匂いを立てたら魔物が寄ってくるってことだよ」

「それなら大丈夫だよ? 警戒の魔導具設置したんだから」

「いやいやいや。警戒の魔導具は魔物の接近を知らせてくれるだけだ。知らないのか?」

「それ、リーネの作ったやつだから大丈夫だよー。『消臭』に『防音』とかも付いてるって言ってたから」

「ハァッ!? そんな物があったら……くそーっ。迷宮探索の常識が変わっちまうじゃねーか!」

「ん。より安全に、より快適に、より早く。を目標に魔導具を開発したから、そうでないと困る」

「あーそうかー。これ造ったのも嬢ちゃんだったな……」


 オスヴィンは手元の地図作製機に目をやり、しみじみと呟いた。


「いや、それよりも、何やってんだ?」

「ん? さっきの粘菌、対処に問題があるからゴーグルの改良する」


 そう言うリアーネの前には別の卓に食材ではなく素材が並べられていた。

 光魔法で魔法陣を浮かべて修正する様に別の魔法陣を合成していき、ものの十分程の間に新しい魔法陣を作ってしまった。


「ん。できた」

「リーネ! ご飯もできたよ! 食べようー!」



「はぁー。ぅまいっ。なんで迷宮ん中でこんな飯が食えるんだろうなー……」

「料理したからだよね」

「ん。探索者こそ料理を蔑ろにしたらダメ。ちゃんと食べないと」

「美味しいもの食べたかったら、美味しく料理できるようにならなきゃね」

「それか、リーネのこれ。お湯で戻すだけなのに美味しいよ」

「お金を掛けるところはちゃんと考えないとダメなの」


 オスヴィンの持っていた今までの常識の壁を、五人がすごい勢いで打ち壊していくことを飯が美味ければ何でもいいかと、半ば投げ遣りになっていた。


「その保存食なー、なかなか手に入らないんだよ」

「これ作る魔導具の魔法陣も持って来たから、手に入り易くなるって」

「ん。まとめて錬金組合(ギルド)に預けて来た。色々あるから気になるなら聞きに行けば良い」


 食事を終えれば一画には簡易トイレを設置して、離れた場所に簀子に布団を敷いて寝る場所を作る。


「迷宮内って結構温かい? と言うか寒くはない?」

「ん。でも用意する」


 そう言ってストーブに炭を入れて火を点ける。

 リアーネは作業を再開して魔石の焼き込みからゴーグルの魔石交換に撮像札(Sカード)を納める場所などを作っていった。

 ラウリーが一緒に早番でリアーネのために弾倉に弾を詰めていく。


 他の面々は早々に体を休めて静かな時間が過ぎて行った。



「リーネ」

「ん?」

「みんな一緒で嬉しいね」

「ん。そうだね。そうだ、野営(キャンプ)用にこんなのも用意してたんだ」


 そう言って腰鞄(ウェストポーチ)から可可(チョコレート)を取り出し双子は一緒に口にして、その美味しさに笑顔になる。


「ふふー。みんな寝てて良かったね」

「ん。そうだねー」


 ◇


「おはよー! 朝ごはんできてるよ!」

「「おは……ぐぅ」」

「だから、寝るな!」


 バサリと布団を引っぺがして双子を起こすルシアナは、さっさと鞄に仕舞っていく。


「もう朝?」


 ラウリーはキョロキョロと周囲を見回して迷宮の内部であることをようやく思い出すのだった。


「んー、二刻……早くない?」

「大した違いはないでしょうに……ご飯食べたら目が覚めるって。はいはい」


 リアーネは腕輪の時計を確認して不満を声にするが、ルシアナは軽く流してしまう。


 ラスカィボッツはほぼ赤道上にあり、多少の揺らぎはあるが零刻頃には日が出ているのだった。テルトーネも赤道上では無いとはいえ近い地域であるために、日の出の時刻に半刻も違いがあるわけでは無かった。



 野営(キャンプ)で使った道具の回収と装備の確認も終わらせて探索行を再開する。


「この扉の先だったよね」

「ん。魔法の準備もできてる」



 前衛後衛に別れて足を進め何度かの戦闘の末、十層への階段に到達した。


「やっとここまで来たね!」

「ん。あと一息、気を入れる……前に休憩しよう」

「そうだねー。とりあえずは下に降りてから?」

「確認はしておかなくちゃねー」

「言ってる間に降りるの」


 十層へと降りると扉が一つ付けられただけの小さな部屋になっていた。


「なんか、この扉いつものより大きいよね? 何かあるのかな」

「それ含めて調べないと」


 ルシアナが扉を調べてリアーネが少しだけ開けてその先の地図を作成する。


「んー……、この先少し行けば今までにないくらい広い部屋。魔物もいる」


 それだけ確認すれば休憩に茶菓子で一息入れる。



「さぁ、行こうか!」

「「「おぉー!」」」


 レアーナは広い空間であることから戦槌に持ち替えることにした。

 事前に、筋力、器用、敏捷、体力、生命、活力の強化魔法を掛けてから進み始める。


 小部屋の様になった通路を進むと、その先に広い空間が見えて来る。

 視界に魔物を捉えることはできていないが、ゴーグルには捉えられ場所が示されていた。


「ん。熊にはやっぱりこれ」

「リーネ? さすがにラーリ達が接近戦するのにそれは危険だよ」


 と言ってリアーネが腰鞄から取り出した熊挟みは、すぐに片付けられるのだった。

 気を取り直して後衛三人が足を止め銃と弓を構えて狙いを付ける。


 パパシュッ! カンッ!


 狙い過たず魔物に中り、ようやく侵入に気が付いたようだった。


 グガァァァァーーッ!!


 咆哮を上げ前肢を振り上げ立ち上がったのは熊型の魔物、月光熊であった。

 まだ距離のある状態にもかかわらず、巨体であることが感じ取れる程に大きかった。


 月光熊は暗い光を発したかと思うと、周囲一帯が暗くなっていく。しかしゴーグルの補助もあり双子達は支障なく姿を捉えることができていた。


 次弾装填、すかさず射撃。月光熊が近付くまでに更にもう一度射撃を浴びせ、走り込んで来た月光熊をラウリー達前衛が迎え撃つ。


「セイッ!」

「ヨイッショーッ!」


 突進してくる月光熊に対しラウリーは躱しざまに切り付けて、右に抜けていく。

 そこにレアーナが振り上げた戦槌を鼻先めがけて振り落とした。


 ギャウンッ!


 つんのめる様に転がった月光熊を避けて身を屈め左に場所を移すレアーナ。

 開いた正面から射撃がなされ、後衛も位置取りを変えるのだった。


 苛立つ様に唸りを上げて、手近なラウリーに前肢を振るが右左右と軽快に躱していくラウリーを追いかける様に着いて行き、光を発した右の手が振り抜いた勢いが強すぎて月光熊は体勢を崩して転がった。しかし振り抜いた勢いに合わせて闇色の刃がラウリーを襲う。


「うわぁっ!」


 と、声を上げながらも二本の短剣で受け止めて、勢いに押されて弾かれた。


 月光熊が転がったのを見逃さずに発砲された銃弾が突き刺さり、ビクリと硬直して体重を掛けようとした右後ろ脚をレアーナの戦槌が払う様に打ち付ければ、月光熊はまた転げるのだった。


 五人の連携になすすべもなく月光熊は一方的に打ち据えられ、ついには一撃さえも与えずにその身を横たえ形を崩していったのだった。


「「「狩ったー!」」」

「ん。魔石も大き目。大っきい毛皮も残ってる」

「お疲れさん。新人にしちゃあ、大したもんだよお嬢ちゃん方。さ、進もうや」


 続く通路の先の扉を調べて開けて入ってみれば、直径二十メートル程の円形の部屋の中央に迷宮入り口で見た物よりも大きな迷宮核が柱に挿まれる様にして鎮座していた。


「おぉー! やっと着いた!」

「ん。登録すればいい?」

「おぅ、登録すれば、ここから入り口まで転移できるようになる」


 扉を閉めて確認をしてから皆で一斉に認証札(カード)を宛がって登録を澄ませていく。


「それで、どうやれば転移できるの?」

「まずは認証札(カード)に登録する。で、認証札(カード)を身に着けたまま迷宮核に触れて、『転移』と考えながら魔力を流せば移動先の候補が頭に浮かぶんだが、この迷宮は入り口とここの二ヶ所しかないから候補は一つしかない。あと、この部屋に入ってる者全員一度に転移されるから、別の階層へ移動する者は……ありゃ? お前ら気が早いな」

「ん。最後まで聞く前に転移の指示をした」

「しちゃった!」


 ラウリーがキラキラした目をして光り輝く魔石に手を当てたまま転移の余韻に浸っているうちに、戻って来た迷宮入り口の部屋の床と天井いっぱいに広がった魔法陣の光が薄れて消えていく。

 オスヴィンが、ちゃんと聞いていたかと確認をしながら組合(ギルド)へと移動するのだった。



 指導迷宮の攻略を終え、ようやく迷宮探索者として自由に迷宮に入る許可が出された。


「とはいえ、下級、中級、上級と格付けされておる。まずは下級迷宮からだな」

「はーい。テルトーネの迷宮に行けないの残念ー」

「ん。仕方ない」


 そう言いながらも正式に探索者としての活動が始められることに嬉しくなって、双子の尻尾は嬉しそうに振られていたのだった。


「お嬢ちゃん達なら、すぐにでも行けるようになるだろ? そう急ぐ必要は無いよ」

「そうだそうだ。他の者が自信を無くしかねん。もちっとゆっくり攻略すればええ。怪我なんぞしてもつまらんしな! 中級、上級へ行くなら装備だってもっと強化した方が良いだろう」



 その後は、レアーナが爺様に鍛冶の手解きを受けたり、新規で作ったゴーグルの魔導具の魔法陣と仕様書をこの先で登録する分を含めて作成するのに数日の時間を要することになる。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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