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ねこだん!  作者: 藤樹
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080 準備不足と不満声

 暦の上では冬に入り朝晩は特に寒くなって来た。


「ラーリもリーネも、さすがに着過ぎじゃないか?」

「そんなこと無いよ」

「ん。適正」


 レアーナが言う通りに若干と言うのも控えめな程に着膨れている双子である。


「いや、懐炉も持ってるんだろ? 大丈夫なんじゃなかったの?」

「リーネ、もう少し強力にして!」

「ん。じゃあ、今日の狩りは中止で」


 狩人(ハンター)組合(ギルド)を今にも出ようとしていたところで、行き先の変更を宣言した。


「いやいやいや! 今日の狩場、もううちらに割り当てられてるから! 今から変更なんてダメだって!」

「「えーー………」」


 そんなことを話しながらも足の向くのは街の外だった。



 今ではノイェトゥアにも宿泊所などが建てられて、そちらで数日活動をする狩人(ハンター)もいた。

 また、探索者の数も増えており、ゆっくりとではあるが順調に攻略が進められていた。


 そんな状況でも通常の狩りの仕事もあるわけで、双子達三人は南東の森を中心に獲物の影を探すのだった。下草もほとんどが枯れて見通しがいくらか良くなった森で、二人は双眼鏡を覗いて獲物を探す。


「虫は少なくなったねー。蚊とか見なくなっただけでも嬉しいかも」

「ん。あれは危険。狩りの間は虫除けもあんまり使えない」

「そういう意味じゃ、冬こそ狩りの季節なんじゃないの?」

「温かかったらそれでいいよ」

「ん。寒い時にすることじゃない」

「あれー? 寒いから冬なんじゃ……」


 やる気の出ないままに歩みを進め、遠目に見つけた藍鎧兎(ランガイト)を三頭仕留めたところで、休憩を取ることにした。


「「「はぁーー………あったまるー」」」


 携帯ストーブで沸かしたお湯を注いだ凍結乾燥(フリーズドライ)スープをコップで頂きながら、可可(チョコレート)たっぷりの行動食を食べていた。


「今日はもう良くない? 満足できるだけ狩ったよねー」

「ん。もう満足。帰ろう」


 ストーブで暖を取り寒いのはもう嫌だと双子は帰ることを主張する。


「まだ午前中だよ? 予定のコース半分も行ってないじゃない」

「リーネー、猪寄って来たみたい」


 遠くに視線を向けたラウリーがコップを持った手で示した。

 コップを置いて行動食は咥えたままに狙撃銃の準備を始めて照準器を覗く。


「ん? ほんとだ。あれなら、ここから行けるねー」

「なんか掘ってるねー。仕留めたら探してみようよ」


 レアーナの言葉を聞き流しながら狙い過たずこめかみを撃ち抜き一撃で仕留めた。


「「行ってらっしゃーい」」

「えぇー。仕方ないなー」


 双子に送り出されてレアーナが回収に行き、スコップ片手に穴を掘り始めた。

 何やら見つけた様で随分と喜んでいるが、危険は無いかと周囲に目を向ける以外はのんびりと暖を取るだけだった。


「ラーリ! リーネ! 見てこれ松露茸(トリュフ)見つけた!」

「「おめでとー。じゃあ、帰ろう」」


 その前に血抜きだけはやってくれと、魔法鞄(マジックバッグ)から取り出した。



 休憩を終えて帰ろうとする双子を何とか宥めて巡回の続きを始める。

 やる気のない中では狩りの成功率など望めるものでは無く、追い払っているだけの様な状態だった。


「ほらほら、これだけ歩いてたら体もあったまってるでしょ」

「それは違うんだよー」

「ん。寒いものは寒い」


 息を弾ませ斜面を登り、周囲よりも小高い場所へとやって来た。


「お! いたいた! ほらリーネ! ここからなら狙い放題だって」


 レアーナの指す先には、丸々とした体形に短い脚を生やし枝分かれした角の先端も丸いまるでぬいぐるみの様な姿の丸鹿の群れが木の幹に噛り付いている姿があった。


「んー……、あんなに木が食べられたら困るねー」

「よーし、やるかー。でも今日はこれで終わりだからね!」

「仕方ないかー。それでいいよ」


 じゃあ行ってくるとラウリーは『飛行』の魔法で接近して行く。十分に近づいたのを確認してからリアーネは発砲し、さらに続けて二発射撃した。


 一発目の銃弾が一頭の丸鹿を仕留めると、異変を感じた丸鹿が周囲への警戒を高めたのだ。しかし、十分に距離を取っているリアーネ達に気付くことなく二発目の銃弾にもう一頭が倒れたら、危険を感じて逃げ始めた。そこに三発目が着弾し足を引きずる三頭目。それを見届けてから、逃げる先に剣鉈と短剣を振り落とす様に降り立つラウリー。


「ハァーーッ!」


 首を切り裂き、次の丸鹿へと剣鉈を走らせる。逃げ惑う丸鹿は深追いせずに手近な丸鹿に狙いを付ける。そうして三頭仕留めた後に足を引きずる丸鹿にも止めを刺した。


「さすがラウリー。うちじゃあんなに仕留められないや」

「ん。リーネもあれは無理」


 ラウリーの健闘を讃えて、血抜きの後に回収した。


「流石にこんなに入れると魔法鞄(マジックバッグ)でも重いよね」

「ん。重さも少なくなるけど無くなるわけじゃないから仕方ない」

「もっと重くなったらどうするつもり?」

「ん? 台車でも用意するしかないかな?」

「うーん。小さくて軽かったら鞄に入れておけるのかな。よっし、うちも何か用意してみる」

「レーアが燃えてる……まぁいいや、ラーリはその間お休みにする」

「リーネは寒さ対策、やっておけばいいよ!」

「ん………仕方ない。やっておく」



 これから先の一段と寒くなるのを前に防寒対策を考えることになるリアーネも、冬はずっとお休みでいいやと、のんきに構えているのだった。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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