表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこだん!  作者: 藤樹
82/218

078 迷宮開封と力押し

 今年の武闘大会は多くの探索者の参加によりいつにも増して見応えのある物となった。

 龍神祭が終われば、ついに封印を解き迷宮攻略が始まるからだ。


 ほぼすべての魔物が受肉しているということは、それだけ多くの素材を得られるということでもあるため、探索者は上級の迷宮のさらに最深部を目指していた。

 それが封印を解かれたばかりの迷宮では、入り口からすでに攻略の最前線であるのだから、我先に探索を始めようと、百に届こうとする集団がこの地に集まっていたのだ。


 迷宮の扉の周囲に作られた未だ開発の始まったばかりの街にはノイェトゥアと言う名が付けられた。

 出入り口を兼ねた狩人(ハンター)組合(ギルド)探索組の砦の様な建物と併設された大きな解体場に倉庫も完成しており、早く扉を開けろと騒めいていた。


 扉の脇で後ろの者にも見える様にと踏み台に乗り、深い茶色の髪と翼を持つ梟人族の壮年の男性がわざとらしい咳払いと共に口を開いた。


「んおっほん! あー、この度開設された探索組の組長を任されたギジェルモだ。みな待ちかねているようだな。実際の入り口までの距離や竪穴のことについては既に聞いているだろう。防御通路の人員の配置も完了したと報告を受けた。これより迷宮の封印を解きに向かおうか」

「「「オォーーッ!!」」」


 怒号の様な叫び声が上がり、武闘大会優勝者を含む班から扉を抜けて行く。

 狩人(ハンター)組合(ギルド)は街の南東側にあり、ぐるりと右回りに壁沿いに通路が作られ、上部通路に設けられた縦長の細い銃眼には多数の狩人(ハンター)が控えていた。双子もその中に含まれていて、ラウリーは通り過ぎる探索者に手を振っていた。



 魔法陣の施された扉の様にも見える壁面の前に到着し燕人族の男が前に出て、射撃の準備をする様に指示を出す。

 探索者達は壁面からある程度の距離を取り囲む様に配置に着き、広間に陣取れない普段は近接武器を主に使っている者達も階段の途中で狙撃銃の準備を進めていく。


 準備が整ったところで燕人族の男が魔法陣に魔力を流し込めば、淡い光がだんだんと強くなり壁全体が脈動し積み上げた煉瓦の様な亀裂が走る。その光とは別の色の光が壁の奥から溢れ出し人々が苦労して掘り抜いた竪穴にも広がって行く。

 竪穴の上では集まった光の下に柱に挿まれた迷宮核の複製が形作られていき、驚きの声が上がっていた。


 その間に翼をはためかせて地上へと避難していく燕人族の男を見送り、探索者達は壁の様子を注視する。

 光が静まったところで壁にドゴンッ! っと、衝撃が走り煉瓦状の石壁にズレができ、何度もぶつかる様に響きだす。その度毎にズズ、ズズズと音を立てゆっくりと壁が崩れ始めた。



「リーネ! 暇だねー!」

「ん。仕方ない。今日の仕事はここでの待機」


 沢山の探索者が向かったとは言え、魔物が多すぎて逃れて来ることも考えられていた。

 万一そのようなことが起こって街に被害が及ぶ事態になってはと、対処のために控えているのだった。


 とはいえ、待機中の者は皆が暇を持て余しているのも確かなことだった。

 遠くからドドドドドゥンッ!! と途切れる様子の無い銃声の低音が響いて来て、ついに迷宮の口が開かれたかと気を引き締めた。



 一刻程の後、数人の探索者と狩人(ハンター)が戻ってくるのが見えて来た。


「見張り以外は撤収! 入り口は制圧完了だ!」

「「「うおぉーーっ!!」」」

「おー! やったねー、リーネ!」

「ん。良かった」


 摘んでいた焼き菓子を食べきり銃を片付け組合(ギルド)の建物へと戻ってみれば、既に話が始まっていた。


「………魔物どもが体当たりで壁を崩して来たんだよ。しょっぱなに飛び出してきたのはバカでかい猪の魔物だ。一発二発銃弾食らったくらいじゃ倒れる様な柔な相手じゃないんだが、そこはそれ大勢待ち構えてたんだから、たまったもんじゃ無かろうな」

「そうそう。俺の一発が止めを刺したんだ!」

「ハンッ! んなもん、誰にも判らんよ! なんせ雨あられと銃弾にさらされたんだ。軽く百発は叩き込んだんじゃねえか?」

「そうだぜ、兄弟! 空言を吐いてる暇があったら酒でも飲め!」


 酒と共に語られる室内は、既に宴会か祝勝会の様な賑やかな喧騒に包まれていた。


 聞こえてくる話をまとめると、出てきた魔物は通常ならば十五層以降で見られるような魔物ばかりで、皆、強力な個体であったが、扉の前には実力のある沢山の探索者が陣取り狙撃銃を向け、魔法の準備をして待ち構えていたために押し切られることも無く、接近を許し囲みを超えようとした魔物に対しては近接武器を持った者達が対処して、数人の負傷者は出たが既に治療も終わらせているということだった。


 ひとまず魔物が出てこなくなったのを確認し魔法鞄(マジックバッグ)に素材を詰め込んで帰って来たのだと、満面の笑顔で話してくれた。


「おー。じゃあ、解体始まってる?」

「ん。見に行く」



 併設された大きな解体場では、天井からのクレーンに吊るされた沢山の魔物を見ることができた。


「ん。血抜きは必要?」

「おっ。良い所に来た! 血抜き頼めるんなら、こっちもありがたい!」


 次々に『脱血』を掛けていく。気が付くと隣でロレットが同じく血抜きを手伝っていた。


「リーネもお疲れ様なの!」

「ん。ロットもね」

「リーネ、この魔物何かわかる?」


 そこには、金華猪(キンカジシ)の三倍程もある巨大な猪の魔物が吊るされていた。


「ん? なんだろ?」

「娘っ子は迷宮の魔物についちゃ知らねぇか? 迷宮はその土地の生き物を取り込んで魔物に変えちまうって言われてんだろ」

「ん。それは知ってる。じゃあこれは」

「そうだな。元は金華猪(キンカジシ)だったものだろう」

「へぇーーっ! 魔物になるとこんなになるんだーっ!」

「探索者さんこんなの倒したって凄いの」

「迷宮内で出会えば、もっと苦労することになるんじゃねぇかな」


 解体については手伝えそうな魔物も見当たらず、血抜きのみを手伝った。それでも助かったと礼を言われ、お互いに笑顔になるのだった。



 数日のうちに一層の探索を終わらせられたのは、ゴーレムが領域の拡張を行っている姿を見たという報告が上がっており、思ったほどの広さが無かったためだろうと思われた。

 それに加えて探索者の人数に、新型魔法鞄(マジックバッグ)と心置きなく銃を使えたおかげであろう。階層が深くなるにしたがって残弾の心配のない近接武器が主流になるらしく、一層のような速度で探索が終わることは無くなるのだそうだ。


 新しく発見されたこの迷宮は、未攻略の上級迷宮として登録されることになる。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ