072 炊き出しと柵作り
双子が帰省していた時期には既に迷宮の扉の周辺は森が切り開かれて、仮設住居の建設が始まっていた。この頃には街中の地震被害の後片付けも終わっており、崩れた建物に関しては建て直し作業が始まっていた。
「ね、リーネ。こんな感じで大丈夫かな?」
「んー……ん。大丈夫」
「よっし! じゃあ、うちの出番だ!」
そう言って、適度な距離を開けて双子が地面に突き刺した杭に向かって、レアーナは木槌を振り上げ打ち下ろしていく。
コーンッ! と綺麗な音が響く度に地面深くにしっかりと埋まる。
「じゃあ、ラーリが持ってるから、リーネは付けてくれる?」
「ん。任せて。世界を支える大樹の子よ、我の望む姿を与える………『木材変形』『接着』」
杭の間に渡した木板を、リアーネが魔法で組付けて行く。
三人がしている作業は迷宮周辺に新しく作られる街のために、管理区となる森の範囲を示した柵作りであった。柵の設置場所は別の班が下草や低木を事前に掃ってくれていたので、間違うことは無かったのだ。
「これって、狩人の仕事なのかなー?」
木槌を担いで次の杭に向かいながらレアーナがそんなことを言う。
「狩人が管理する場所だし、そうじゃないの?」
「ん。他の組合員も今は忙しいから、なかなか手が回らないだけ」
そりゃそうかと言いつつも、同じ槌を振るなら鍛冶がしたいと思っているレアーナである。
「この辺、最近魔獣見ないね? なんでだろ?」
「それは、あれだ。人がいっぱいで煩くしてるからじゃないのか?」
「ん。多分そう。後は狩りと罠の効果もある」
「リーネが言うんだったら、そうなんだろうね!」
「ラーリ……? うちの言うことだって信じたっていいじゃないの、よっ!」
言葉に合わせて思い切り木槌が振り下ろされて、本日最高の音を響かせた。
昼食時には少し早めに仮設住居の建設現場に戻って来た。
双子達の料理は好評であり、工事現場周辺の警戒を主な仕事に割り当てられた時などには皆の分を作っていた。
「今日は、何しよう?」
「ん。とりあえず、お米の準備は終わったから……兎肉と豆のカレーとか?」
「リーネ、それ三日前にも作ったよ?」
「ピリ辛にすれば良いんじゃない?」
「構わん構わん! 美味かったからな! ピリ辛も大いに結構! 今日も楽しみだ!」
そう言って作業員の一人が近くを通り、仮設のトイレへ入って行った。
「カレーでいっか。さぁ、やるぞー!」
大きな寸胴鍋三つに下処理の終わった素材を入れて火にかけている間に、食卓の準備も済ませて、火加減を見ているだけになれば、しばらくゆっくりできる時間ができた。
「んー……。トイレか……」
「どうしたの? リーネ? お腹痛い?」
「ん? 違うよ。セレーネ姉が迷宮でトイレに困ったって言ってたから」
仮設トイレを示して言った。
「あー、そうだね。トイレ。何が必要?」
「ん。目隠し……魔物に見つからない様なので、かさばらない物が要る」
「魔物……魔物も耳が良い? 目で見てるかな? 他は何だろ?」
「んー……匂いとか、振動? 魔力を見るのもいるかも」
「そっかー、何とかなりそ?」
「ん。多分」
そんな話をしているうちに、いい感じに火が通って来たので、火から遠ざけ香辛料を投入して味を整えたら完成だ。
「「「ごっそさーん!」」」
食事の終わった者達は、今日も美味かったと礼を言って、食休みを取りに離れて行く。
後日、色んな本を読みこんで、リアーネは簡易トイレの魔導具を完成させる。
読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。




