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ねこだん!  作者: 藤樹
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070 距離の壁と通信機

 ラウリーはルシアナ、オイヴィと巡回に出て、リアーネ、レアーナ、ロレットの三人は先日ウルマスが愚痴っていた街と迷宮の連絡方法に関して組長と話をしていた。


「……と言うことは、なんじゃ、通信の魔導具を魔力元にも設置できないかと? ありゃあ、真銀(ミスリル)で魔導具同士がつながってるから通信できる物じゃからな。組合(ギルド)本部が近くに集まってるのにもわけがあるんじゃよ」

「ここは離れてあるけど?」

「ここは支部に当たるからのぅ。じゃからここには通信の魔導具なんぞ置いてないわい」


 レアーナの疑問にも簡潔な答えが返って来た。


「そうかー。あんな遠くまで真銀(ミスリル)でつなごうと思ったらどれだけ必要になるか……」

「そんな理由があったの……、全部の組合(ギルド)で負担しても一体いくらかかるか想像もできないの」

「ん。だったら、別の方式を考えればいい。通信の魔導具、考えてても良い?」

「何かできるなら考えてくれ。ここにも置ける様になれば便利になるしの。それにどうせ、ごたごたしてて新人の面倒まで手が回らん状態だからな。ただし、報告はきちっとすることじゃ」

「「「はい!」」」



「リーネ、別の方式って何かあるの?」

「そうなだよねー。真銀(ミスリル)をすっごく細くしても切れやすくなるし、それが何とかなっても量が必要なことには変わんないでしょ? 魔力元までどれくらい距離あったっけ?」

「ん。十キロ近くある。仮に直径一ミリの真銀(ミスリル)線なら一メートル八グラムとして……八十キロ程必要になる?」

「そんなに要るの! えー? いつもどれぐらい使ってるの?」


 リアーネの言う真銀(ミスリル)の必要量に驚きの声をもってロレットは聞く。


「そうだよね。魔法陣一つに使う量って二百グラムも無いよね?」

「ん。それでも材料だけで小金貨と銀貨三枚はする。八十キロだと大金貨五枚を超えるから、頼める値段じゃない」

「もっと細くしたらどう? 金貨数枚に抑えられない?」

「それでも気軽には頼めないの……」

「ん。金貨数枚なら負担できなくはないけど、リーネの自費ですることでもない」

「リーネー……、いつの間にそんなに持ってるんだよー」

「ん? いつの間にか?」


 首を傾げながら不思議そうに答えたのだった。


「リーネはいつも何か作ってますの。仕方ないの」



「それで、別の方式って結局何?」

「ん。真銀(ミスリル)でつなぐのが難しいのなら、つながなくていい方法を考えればいい」

「え? えーと? どうやればそんなことができるの?」

「ん。例えば、感知系の魔法。対象とは何かでつながってるわけじゃない」

「「あっ!!」」

「ん。魔法や魔力を感知して、その状態を分析すれば意味のある情報を得ることができる」

「じゃあ、意図的に意味のある情報を魔力に乗せることができれば!?」

「離れた場所と情報のやり取りができますの!」

「ん。正解!」


 狩人(ハンター)組合(ギルド)から話しながら移動して、着いた場所は錬金組合(ギルド)


「あら! いらっしゃい。今日はどうしたの? 本格的にこっちに所属する気になってくれたのかしら? 歓迎するわよ!」


 受付に居た狐人族の女性が笑顔で声を掛けて来た。


「いえ。うちら、リーネの手伝いで、通信の魔導具を研究? だっけ?」

「そうなの! 新型の通信魔導具を考えるの!」

「ん。今使ってる魔導具とか資料があれば見せてほしい」

「新型……何? 小さくなるとかかしら? だったら嬉しいわね。あれって大きくて場所取るのよねー。案内するわよ」


 他の受付嬢に断って、三人を魔導具のある部屋へと案内した。


「ちょっとこの娘達お願いね。私は資料取ってくるから」


 案内された部屋は五メートル四方はありそうな大きさがあるが、その半分近くを大きな物体が占めており、他には本棚に沢山の本が詰め込まれていた。


「お邪魔しまーす」

「これが……通信の魔導具、なの?」

「ん。大っきい。大きすぎない?」

「あはははー。そうよねー。大きすぎるわよねー」


 その部屋には、身長百十四センチのレアーナよりも小柄な青く艶めく黒髪の燕人族の女性が膝に開いた本を乗せており、首を傾げる三人の感想に同意を示した。


「ん。これ。調べても?」

「え? ちょっとそれは、どうかなぁ? いつ通信が来てもいい様に控えてるんだけど」

「リーネ、さすがに許可が出てからだってー」


 しばらくして魔導具組の組長がやって来て、狩人(ハンター)組合(ギルド)でもした話を伝え、調査の許可がもらえたのだった。


「んー……無駄が多い……これが……」

「ね? 大丈夫なの?」


 調べ始めたリアーネを指して燕人族の女性、エルミニアが不安そうな顔をし声を潜めてロレットに聞いた。


「リーネだったら大丈夫なの!」

「魔導具だって壊したりしないって。お姉さんリーネのこと知らない?」

「いやー。聞いた覚えがあるような、無いような?」


 そんな感じで半刻余り経った頃、ようやく案内してくれた受付嬢がやって来た。


「調子はどうかしら? 組長には話しておいたからもう調べたわよね? 工作室に資料を用意しておいたから、移動しましょうか」

「ん? 大体わかった。今のままの構造でも一割以下の大きさに改造可能」

「えっ! それってすごいじゃない!」

「流石ね! ほんと、こっちの割合増やしてほしいわー」


 その後は、工作室へ移動して、各種魔法陣の確認と仕様書などを読み込んでいき、昼食時には確認作業を終わらせてしまった。



「ん。お腹減った……」

「買って来たから早速食べよう! うちもお腹減ったよー」

「手伝えることがあれば、何でも言ってほしいの!」


 昼食後は資材の確保をお願いし、リアーネは魔法陣の最適化を始めた。


「んーと。まずは、探査の魔法は『魔力感知』『魔法感知』『魔力収集』それから『魔力回復』を利用して増幅させれば、探査範囲が広がるはず………」


 リアーネの掌の上に浮かべた光の魔法で描かれた複数の魔法陣が一つに合わさり姿を変えて行く。共通部分を統合し、目的の魔法に改変し、できる限り無駄を排した簡素な形状を目指していく。疑似的に魔法として実行し、使用魔力量に対する感知範囲の広さや解像感、情報量の多さにクラリとふらつき慌てて停止し、レアーナに声を掛けた。


「レーア、真銀(ミスリル)取って」

「これで足りる?」

「ん、十分。光輝放つ尊き金属よ、我の望む姿を与える………『金属変形』」


 レアーナの用意した砂粒状の真銀(ミスリル)の袋からザラリと掴み出して目的の形状を作って行く。ある程度終わったところで『不純物除去』で純度を上げて、更に形状の補正を行う。

 出来上がった魔法陣は予想通り随分と小さく、用意されていた木材を変形させて保持用の枠に収められた。


「まったく……、これだけの物をこの短時間で仕上げるんだから」

「ほんとなの。それで、この魔法陣は何ですの?」

「ん。名前を付けるなら……『魔力探査』かな? ごく微かな魔力の変化も捉えることができる。『魔力感知』なんかに比べても、感知範囲を広げることもできた」

「じゃあ、これを使うようになったら、今までの『魔力感知』要らなくならない?」

「ん。それは無い。反応が敏感過ぎるから、何を捉えたのか判断するのは難しい」

「それじゃ、使えないんじゃないの?」

「ん。そこは、他の魔法陣で処理するから大丈夫」


 そう言って、同じ様に五つの魔法陣が追加され、純度を高め形状を整えた魔石に魔法陣を焼き付けた。


 その間にレアーナが作り始めていたものは、横三十×奥行き十センチの底板の上に、横三十×縦二十センチの板を斜めに立てかけ、奥側は直角に板が覆い隠していた。手前は高さと奥行きが三センチばかりの出っ張りが作られ、算盤(ソロバン)の珠を付ける様に数字の描かれた円筒を四個三組の十二個が取り付けられた。


 各部の形状の調整に、真銀(ミスリル)の魔法陣に魔石の取り付けなど、ひとしきり終わらせれば、二台目に取り掛かる。



 既に終業時間も近づいて日暮れの近い時刻となっていた。


「おい、いつまでやってんだ? そいつのことは明日にでも聞くから、お前らもう帰れ」

「「「終わったー!」」」


 組長が呆れた様に声を掛けたことにも気付かずに、今日一日の成果に歓声を上げた四人であった。付き添いのように一緒に居た受付のお姉さんも、いつの間にやら手伝っていたのだ。


「あー……聞くが、そりゃ何だ?」

「あ! 組長! これはですね……」

「リーネが言いなよ」

「そうですの」

「ん。これは、魔導通信機の端末」

「………それが? えらくちっちぇーが、それが、か?」


 胸を張って盛大に尻尾を振って言うリアーネに、困惑顔の錬金組の組長が聞く。


「ん。試してみればいい」


 そして、リアーネは別の部屋に一台の端末を運んで円筒の数字を回していく。


「その数字は何なんでぃ?」

「ん。相手側の端末の識別番号。個別に番号を振れば通話先が選べる」

「おぅ、そうか。今の通信機はどうなってた?」

「ん? 通信先を登録した魔石が通信先の数だけ付けられてた。通信先を増やそうと思ったら、それぞれの通信機に魔石を追加しなくちゃいけないから利便性が低い」


 そう言っているうちに、番号をそろえて起動すれば相手側への呼び出し中であることが、前面にある大型の表示板に示されて、すぐさま相手が通話に出て来た。


『あっ! リーネが映った! これって聞こえてるのかな?』

「ん。聞こえてる。問題は無さそうだね、レーア」

「なっ! ………これは!? 真銀(ミスリル)でつないでも無いのになぜ通信ができている! なぜ映像まで見えるんだ! いったい何をしたんだーーっ!? お嬢ちゃんっ!?」


 組長はリアーネの肩を掴んでガクガクと揺さぶり叫びをあげた。



 後日、支部を含む各組合(ギルド)向けの端末や中継器の作成を請け負い、一台は魔力元の警戒陣地に置かれることになった。その作業と資料をまとめるために、リアーネは数日を拘束されることになったのだった。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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